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DREAM EATER 3
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「やあ! やあ!」
威勢のよい掛け声と金属や物のぶつかり合う音。目を開けると同時に飛び込んでくるのは世界の匂いだった。燃えた木材の匂い。金属の匂い。人の汗の匂い。いろんな匂いを吸い込んでしまい一瞬でむせ返ってしまった。
「大丈夫かい? アンヴィドルフ」
振り返ると屈強そうな壮年の戦士がこっちを見て笑っていた。頭上に「ズカル」という文字が浮かんでいる。どうして僕の名前をと思ったが、すぐに枯れがズカルという名前だということが分かり納得した。
「サポートプレイヤーが足りないみたいでなかなか進めないんだ。まあ、順番が来るまでウロウロしているがいいさ。ただし、柵の外には出るなよ」
サポートプレイヤーと言う初心者プレイヤーの案内役のようなものがいるらしく、晴海さんもきっとそのサポートプレイヤーだったのだろう。キャラクターの作りこみに時間をかけていたりして。と笑うと不意に背中の感触を思い出して顔が熱くなった。
「どうもトラブルが起きているらしい」
ズカルは柵の外を見て言った。
「訓練場の外に強盗プレイヤーがいるらしい」
「強盗プレイヤー? アイテムはトレードできないって」
「ああ。だから捕虜にするんだよ。捕虜になると身代金を払うか払えない場合はそいつの奴隷になって一定期間働くしか無い。それが嫌ならロストだ」
「ロスト」
ロストとは、この世界から消えることを意味する。
「だったら別のキャラクターを作成しなおして……」
ズカルは首を振る。
「ない。聞いてなかったのか? ロストするとこのテストが終わるまで真っ暗な世界に置き去りにされるんだぞ。守秘義務ってやつで必要な処置とされてるらしい。初日でのロストなんてただの地獄だろうが」
そんな説明聞いてなかった。
「注意事項を読まずに応募したのか? 無鉄砲なやつだな」
「もっとちゃんとキャラを作ればよかった」
「ははは。俺もだ。もっと若くてイケメンにすれば良かったと思ってる」
「ズカルは昔、イケメンだった感じだね」
「違いない」
やがて訓練場の入口付近にいきなり人が現れる。金髪の痩せた魔法使い風の男だ。頭上の名前はSPエイモストだった。あっという間にSPエイモストは頭上に文字を乗せた集団に取り囲まれる。集団は口々に彼に話しかける。
「支援魔法をくれ!」とか「次は俺の番だ」とか「強盗をどうにかしろ!」とか「もう辞めたい」とかそんなようなものばかりだった。そこにいるだけでも50人はいるだろう。それを遠目に見ている僕らみたいな人たちが20人くらいだろうか、ことの成り行きを見守っている。
SPエイモストが片手を上げる。皆がそれを見る。
「ログアウトは出来ません。どうしてもゲームを辞めたい方は死亡後ロストを選択してください。また強盗プレイヤーもプレイヤーの一人ですので対処はしません。安全な街までお一人ずつ案内いたします。それから私、支援魔法などは覚えておりません」
極めて事務的な対応に憤慨するプレイヤーたちにSPエイモストは言い放つ。彼も相当熱くなっているようだ。
「先に進みたいならどうぞ進んでください。強盗に襲われて奴隷にでもなんでもされればいいじゃないですか。私は安全に進みたい人のためにいるのですから」
この言葉は周囲のプレイヤーの怒りに更に火をつけるのだった。
「あのSP面白いな」
ズカルがつぶやく。
「ああやってプレイヤーを選別しているようにも見える。何をしたいのかがいまいち分からないが」
「逆ギレしてるだけだったり」
「いや、奴隷制とロストというルールが存在し、クリアしたものには報奨が出る。となれば短気を起こさせて自滅させれば運営は損をしない。そんなところだろう」
「え? 報奨が出るの?」
ズカルは驚いたといった幼な顔でこっちを見る。
「お前、なんの為に参加したんだ?」
「あ、だから口座番号が必要だったんだ」
「だっはっはっは!」
ズカルが大きな声で笑った。
「気に入ったよお前。フレンド登録しよう」
ズカルが言い終わる前にシステムの声がかぶさってきた。
「ズカルがあなたをフレンドリストに招待しました。許可しますか?」
この人は頼りになる人なのかもしれない。知らない新しい世界でズカルのような人に会えるのは幸運なことなんだと思う。
「はい」
この世界で初めての友達はおっさんだった。
威勢のよい掛け声と金属や物のぶつかり合う音。目を開けると同時に飛び込んでくるのは世界の匂いだった。燃えた木材の匂い。金属の匂い。人の汗の匂い。いろんな匂いを吸い込んでしまい一瞬でむせ返ってしまった。
「大丈夫かい? アンヴィドルフ」
振り返ると屈強そうな壮年の戦士がこっちを見て笑っていた。頭上に「ズカル」という文字が浮かんでいる。どうして僕の名前をと思ったが、すぐに枯れがズカルという名前だということが分かり納得した。
「サポートプレイヤーが足りないみたいでなかなか進めないんだ。まあ、順番が来るまでウロウロしているがいいさ。ただし、柵の外には出るなよ」
サポートプレイヤーと言う初心者プレイヤーの案内役のようなものがいるらしく、晴海さんもきっとそのサポートプレイヤーだったのだろう。キャラクターの作りこみに時間をかけていたりして。と笑うと不意に背中の感触を思い出して顔が熱くなった。
「どうもトラブルが起きているらしい」
ズカルは柵の外を見て言った。
「訓練場の外に強盗プレイヤーがいるらしい」
「強盗プレイヤー? アイテムはトレードできないって」
「ああ。だから捕虜にするんだよ。捕虜になると身代金を払うか払えない場合はそいつの奴隷になって一定期間働くしか無い。それが嫌ならロストだ」
「ロスト」
ロストとは、この世界から消えることを意味する。
「だったら別のキャラクターを作成しなおして……」
ズカルは首を振る。
「ない。聞いてなかったのか? ロストするとこのテストが終わるまで真っ暗な世界に置き去りにされるんだぞ。守秘義務ってやつで必要な処置とされてるらしい。初日でのロストなんてただの地獄だろうが」
そんな説明聞いてなかった。
「注意事項を読まずに応募したのか? 無鉄砲なやつだな」
「もっとちゃんとキャラを作ればよかった」
「ははは。俺もだ。もっと若くてイケメンにすれば良かったと思ってる」
「ズカルは昔、イケメンだった感じだね」
「違いない」
やがて訓練場の入口付近にいきなり人が現れる。金髪の痩せた魔法使い風の男だ。頭上の名前はSPエイモストだった。あっという間にSPエイモストは頭上に文字を乗せた集団に取り囲まれる。集団は口々に彼に話しかける。
「支援魔法をくれ!」とか「次は俺の番だ」とか「強盗をどうにかしろ!」とか「もう辞めたい」とかそんなようなものばかりだった。そこにいるだけでも50人はいるだろう。それを遠目に見ている僕らみたいな人たちが20人くらいだろうか、ことの成り行きを見守っている。
SPエイモストが片手を上げる。皆がそれを見る。
「ログアウトは出来ません。どうしてもゲームを辞めたい方は死亡後ロストを選択してください。また強盗プレイヤーもプレイヤーの一人ですので対処はしません。安全な街までお一人ずつ案内いたします。それから私、支援魔法などは覚えておりません」
極めて事務的な対応に憤慨するプレイヤーたちにSPエイモストは言い放つ。彼も相当熱くなっているようだ。
「先に進みたいならどうぞ進んでください。強盗に襲われて奴隷にでもなんでもされればいいじゃないですか。私は安全に進みたい人のためにいるのですから」
この言葉は周囲のプレイヤーの怒りに更に火をつけるのだった。
「あのSP面白いな」
ズカルがつぶやく。
「ああやってプレイヤーを選別しているようにも見える。何をしたいのかがいまいち分からないが」
「逆ギレしてるだけだったり」
「いや、奴隷制とロストというルールが存在し、クリアしたものには報奨が出る。となれば短気を起こさせて自滅させれば運営は損をしない。そんなところだろう」
「え? 報奨が出るの?」
ズカルは驚いたといった幼な顔でこっちを見る。
「お前、なんの為に参加したんだ?」
「あ、だから口座番号が必要だったんだ」
「だっはっはっは!」
ズカルが大きな声で笑った。
「気に入ったよお前。フレンド登録しよう」
ズカルが言い終わる前にシステムの声がかぶさってきた。
「ズカルがあなたをフレンドリストに招待しました。許可しますか?」
この人は頼りになる人なのかもしれない。知らない新しい世界でズカルのような人に会えるのは幸運なことなんだと思う。
「はい」
この世界で初めての友達はおっさんだった。
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