DREAM EATER

大秦頼太

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DREAM EATER 4

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 訓練場は背の高い木柵で囲まれている。地面は砂地だが固く石ころばかりが目立つ荒れ地のようだった。この施設には訓練を延々と続けるNPCとそれを監督するNPCがいて、彼らは昼夜休むことなく武器を振り続けている。この辺りはリアリティに欠ける。
 そう。夜が来る。時計がないので現実の時間はわからないのだが、本当の時間よりはかなり早いだろう。
 訓練場では施設内の練習場を使えば負けても罰則を受けることもなくレベル5まで上がることがわかった。ズカルと模擬戦闘を何度かした。戦闘が始まると互いに9×9マスのフィールドが表示される。そのマス内であれば攻撃が可能だということだった。戦士だからといって接近戦しか出来ないわけではなく、地面に落ちている石を拾って投げることも可能だった。接近戦に飽きた後、何気なく始めた追いかけっこでわかったことは僕の81マスとズカルの81マスのどこかが触れていれば戦闘は継続される。
「スキルはまだ取らないのか?」
 スキルを持たない僕は戦闘のたびにズカルに見下される。
「まだどうしようかわからないんだ。簡単にキャラを作り変えられないことがわかったからなおさら迷うよ」
「まだ初期なんだからあんまり考えすぎるな」
「そうだね」
 と言いつつももうしばらく取らないでおくつもりだ。誰かが派生スキルを取り、その使用感が聞こえてきてからでも悪く無いと思う。報奨という響きは魅力だが、どうせならいろいろ有利な条件を見つけ出して正式スタート後にスタートダッシュを決めたい。
 レベルも上がらなくなり、訓練にも飽きた頃、また入り口が騒がしくなった。
「またか」
 SPが戻ってくるたびに不満の声を上げる者がいる。しかし、今度は違ったようだ。
「初心者同士が戦闘状態を続けることで町まで安全に行けるらしい」
 そんな話が聞こえてきた。
「なんでだ?」
「嘘くさいな」
「なんでも初心者同士の1:1戦闘には誰も参加できないらしいんだ。SPもそれをしながら町まで行ってるらしい」
「俺達もそれをしながら行けばいいじゃねえか!」
「おお!」
 湧き上がる歓喜の声。
「待てよ。戦闘が終わったらPVの場合罰則があるじゃないか。訓練所でも言ってただろ」
「まじか」
「SPはどうしてるんだ?」
「SPだったら勝っても負けてもペナルティがないんじゃないか?」
「ひどwww」
「ずるいなwwwww」
「罰則ってどんなん?」
「賠償金の請求だろ」
「何だそんなもんか」
「レベル1の方いませんかー? こっちも1です」
「俺、5だよwwwwww」
「SP待てwwwwww」
「決まりましたー。行ってきまーす!」
「誰か戦闘~。俺、負けるからー」
 怒涛の勢いで会話が進み訓練場からどんどん人が外へと流れていく。
「どうする?」
 ズカルがこっちを見る。僕たちは戦闘開始と終了の手順ならば飽きるほどこなしてきた。やってやれないことはないだろう。
「ズカルが勝つじゃん」
 ニヤッと笑うズカル。
「まあな。アンヴィーはスキル覚えてないからな」
「何だよアンヴィーって」
「アンヴィドルフって言いにくいんだよ」
「他に手が無いもんか」
 途方に暮れる僕を見てズカルがニヤニヤを繰り返す。
「なんだよ」
「ヘルプでPVPの項目にある賠償から放棄って言う項目があるだろ」
 ヘルプは両の手のひらを合わせ本のように開くことで呼び出すことが出来る。その後はタブレットのような使い方になる。
 ズカルの言っている賠償の放棄は、勝者が特定の敗者の賠償の放棄を選択することでその請求権を放棄し、特定敗者の倍賞をなくすことが出来る。というものだった。
「おお! これで解決じゃん」
「俺が、お前を騙してるとしたらどうする?」
「ズカルはそんな器用なこと出来ないはずだ」
「なに? お前、」
「本当にそうならわざわざ言わないだろ」
 ズカルはその言葉を受けてきょとんとする。直後に大笑いだった。
「だっはっは。そうだな。よし、一応武器は外して素手の攻撃で行くぞ」
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