16 / 23
DREAM EATER 15
しおりを挟む
螺旋階段の下にはインスタントダンジョンの出入りを管理するNPCがいた。話しかけることでプレイヤーをインスタントダンジョンの中に送ってくれる。
一緒に入ることが出来るのは個人と個人の傭兵のみでパーティーでは入ることは出来ない。
難易度も選ぶことが出来るので傭兵がいなくても中に入って遊ぶことが出来るのは町の中にいることしかできなかった者達にとっては好材料だった。
中に入ると四方を壁で囲まれている部屋に飛ばされる。四方向にはそれぞれ扉があり、部屋の中にいる敵を倒すことで扉は開き次の部屋に進むことが出来る。開けた扉はそのままになるので次の部屋に進んで戻ることも可能だ。ただ、その場合、戻った部屋の先で敵が現れるのでピンチになって逃げるとさらにピンチになるといったことも大いに有り得る。部屋の中の敵を全て倒すと管理NPCが現れる。
四角い部屋の中での戦闘なので退屈なのかと思えば、天井は高く様々な障害物が存在するので塔や物陰に隠れて弓を撃ってくる敵や物陰で前衛の敵を回復させる者などもいる。
一生懸命一人で敵を追い回して追い詰めて倒すもよし、傭兵を駆使して指示を与えて敵を倒してもよし、亀のように隅に固まって敵を待ち伏せして倒すなどプレイヤーのスタイルに合わせた戦い方をしていける。
このインスタントダンジョンの発見によって「The Vark」の世界に大きな変化が起こった。すべての町の中でインスタントダンジョンの捜索が始まり、現時点で六つの町の内三つの町でインスタントダンジョンが発見された。町の中で無気力になっていたプレイヤーたちがインスタントダンジョンに殺到し、戦闘を重ね情報交換を始めると外にいた強盗プレイヤーたちも誰も出てこない町の外にいるよりもインスタントダンジョンに入っていくようになった。そうなると一般プレイヤーも集団で町から町へと移動する者も増えた。
ハッキングを仕掛けたテロリストたちにとってもこのことは予想外の痛手になった。
誰も賢者の塔に行こうとしなくなったのだ。接続を回復させる勢力にしろ、それを妨害する勢力にしろどちらも少数になってしまった。ほとんどがゲームをすることを目的にして集まった者達である。
「テスト期間が終わっても俺たちが帰ってこれなきゃ、それが問題になって外からなんとかしてくれるだろう」
それが大方の予想だった。自分の生命を危険にさらしてまでこの件を解決する義理はない。そうとなればゲームに集中するだけだ。
いつもの様に管理NPCに話しかけ、インスタントダンジョン内の部屋に飛ばされる。
広さは20マス*20マス。戦闘可能な範囲はこちらはプレイヤーキャラクターから9マス*9マス。この中に敵がいれば傭兵たちを使って追いかけ攻撃が可能になる。この外にいても遠距離攻撃であれば狙うことも可能だ。また敵に察知されている場合、こちらに敵からの遠距離攻撃が来ることもある。
既にインスタントダンジョンを何度も攻略して、自分の傭兵は二十人。戦士系十二人、魔術師系八人で構成している。二十人それぞれが一応遠距離武器も装備している。敵が近接武器の範囲内によってくると自動的に持ち替えて側の敵を迎え撃ってくれる。
物陰に隠れ分散してやってくる敵を集中攻撃する。そうやって敵の数を減らしこちらの損害を軽微にする。そういう戦いかたのために時間はかかるが、メリットもある。傭兵の装備などの損害やそれ自体の損害がないことだ。無理に戦いを仕掛けたり総力戦になると装備の修理費などですぐに懐面で破綻する。
敵が人間と同サイズの中型や中型犬くらいまでの大きさの小型モンスターであれば、基本的にこの戦いかたになる。
部屋に入った瞬間に大型モンスターがいたら、すぐに部屋を切り替えることにしている。前に一度戦った時にひどい目にあったのだ。
その時の戦い方は、壁面と障害物の間に隠れ、防御力の高い前衛二人で大型モンスターの全身を防ぎ、残りの十九人(自分を含め)で遠距離攻撃をしていたのだが、大型モンスターの突然の突進によって前衛の二人は弾き飛ばされ、大型モンスターは我が傭兵団の内側で大暴れをして、あわや全滅になるところだったのだ。
そのため、大型モンスターは敬遠することにしている。しかし、戻った先でも大型モンスターが出現することもよくある。その場合は何度も空いている扉をくぐることになる。
今日も部屋を変えるたびに大型モンスターばかりで嫌になっていた。
今度こそと飛び込んだ部屋は、真っ暗で障害物は何もなく真ん中にNPCらしき男が一人立っている。初老の魔術師風の男だった。
インスタントダンジョンにボスがいたのだろうか。そうだとするなら、自分が初かも知れない。これは大きなチャンスだと期待した。傭兵たちに防御態勢を指示する。
察知されないようにゆっくりと戦闘可能範囲に取り込もうと近づいていく。
男は急にこちらに顔を向けた。その索敵範囲は以上に広い。まるで人間の感覚だ。
「珍しいな。ここに踏み込んでくるものがいるとは」
男の頭上には名前がない。ということはプレイヤーではない。NPCなのかさえもも怪しい気がした。
男がこちらに向かって手招きをする。
「傭兵を防御態勢にしているということは、戦闘が望みではないのかな?」
急に話しかけられドキッとする。考えがまとまらない。
「ここのボスか?」
男の問いにこちらも問いで返す。男は笑った。
「そうだな。社長というわけでもないし、責任者でもない。ただ、ここで世界をつないでいるだけの男じゃよ」
男は人間のようだった。
「立ち話もなんじゃな」
男はそう言いながら、左手を横に降った。その先に小屋が現れる。驚いているとさっさとその中に入っていく。
「話がしたければ中にはいれ。傭兵は階段で引っかかるからそこで止めておけよ」
もう考えてもしかたがないので、傭兵たちに待機を指示し小屋の中に入っていった。
一緒に入ることが出来るのは個人と個人の傭兵のみでパーティーでは入ることは出来ない。
難易度も選ぶことが出来るので傭兵がいなくても中に入って遊ぶことが出来るのは町の中にいることしかできなかった者達にとっては好材料だった。
中に入ると四方を壁で囲まれている部屋に飛ばされる。四方向にはそれぞれ扉があり、部屋の中にいる敵を倒すことで扉は開き次の部屋に進むことが出来る。開けた扉はそのままになるので次の部屋に進んで戻ることも可能だ。ただ、その場合、戻った部屋の先で敵が現れるのでピンチになって逃げるとさらにピンチになるといったことも大いに有り得る。部屋の中の敵を全て倒すと管理NPCが現れる。
四角い部屋の中での戦闘なので退屈なのかと思えば、天井は高く様々な障害物が存在するので塔や物陰に隠れて弓を撃ってくる敵や物陰で前衛の敵を回復させる者などもいる。
一生懸命一人で敵を追い回して追い詰めて倒すもよし、傭兵を駆使して指示を与えて敵を倒してもよし、亀のように隅に固まって敵を待ち伏せして倒すなどプレイヤーのスタイルに合わせた戦い方をしていける。
このインスタントダンジョンの発見によって「The Vark」の世界に大きな変化が起こった。すべての町の中でインスタントダンジョンの捜索が始まり、現時点で六つの町の内三つの町でインスタントダンジョンが発見された。町の中で無気力になっていたプレイヤーたちがインスタントダンジョンに殺到し、戦闘を重ね情報交換を始めると外にいた強盗プレイヤーたちも誰も出てこない町の外にいるよりもインスタントダンジョンに入っていくようになった。そうなると一般プレイヤーも集団で町から町へと移動する者も増えた。
ハッキングを仕掛けたテロリストたちにとってもこのことは予想外の痛手になった。
誰も賢者の塔に行こうとしなくなったのだ。接続を回復させる勢力にしろ、それを妨害する勢力にしろどちらも少数になってしまった。ほとんどがゲームをすることを目的にして集まった者達である。
「テスト期間が終わっても俺たちが帰ってこれなきゃ、それが問題になって外からなんとかしてくれるだろう」
それが大方の予想だった。自分の生命を危険にさらしてまでこの件を解決する義理はない。そうとなればゲームに集中するだけだ。
いつもの様に管理NPCに話しかけ、インスタントダンジョン内の部屋に飛ばされる。
広さは20マス*20マス。戦闘可能な範囲はこちらはプレイヤーキャラクターから9マス*9マス。この中に敵がいれば傭兵たちを使って追いかけ攻撃が可能になる。この外にいても遠距離攻撃であれば狙うことも可能だ。また敵に察知されている場合、こちらに敵からの遠距離攻撃が来ることもある。
既にインスタントダンジョンを何度も攻略して、自分の傭兵は二十人。戦士系十二人、魔術師系八人で構成している。二十人それぞれが一応遠距離武器も装備している。敵が近接武器の範囲内によってくると自動的に持ち替えて側の敵を迎え撃ってくれる。
物陰に隠れ分散してやってくる敵を集中攻撃する。そうやって敵の数を減らしこちらの損害を軽微にする。そういう戦いかたのために時間はかかるが、メリットもある。傭兵の装備などの損害やそれ自体の損害がないことだ。無理に戦いを仕掛けたり総力戦になると装備の修理費などですぐに懐面で破綻する。
敵が人間と同サイズの中型や中型犬くらいまでの大きさの小型モンスターであれば、基本的にこの戦いかたになる。
部屋に入った瞬間に大型モンスターがいたら、すぐに部屋を切り替えることにしている。前に一度戦った時にひどい目にあったのだ。
その時の戦い方は、壁面と障害物の間に隠れ、防御力の高い前衛二人で大型モンスターの全身を防ぎ、残りの十九人(自分を含め)で遠距離攻撃をしていたのだが、大型モンスターの突然の突進によって前衛の二人は弾き飛ばされ、大型モンスターは我が傭兵団の内側で大暴れをして、あわや全滅になるところだったのだ。
そのため、大型モンスターは敬遠することにしている。しかし、戻った先でも大型モンスターが出現することもよくある。その場合は何度も空いている扉をくぐることになる。
今日も部屋を変えるたびに大型モンスターばかりで嫌になっていた。
今度こそと飛び込んだ部屋は、真っ暗で障害物は何もなく真ん中にNPCらしき男が一人立っている。初老の魔術師風の男だった。
インスタントダンジョンにボスがいたのだろうか。そうだとするなら、自分が初かも知れない。これは大きなチャンスだと期待した。傭兵たちに防御態勢を指示する。
察知されないようにゆっくりと戦闘可能範囲に取り込もうと近づいていく。
男は急にこちらに顔を向けた。その索敵範囲は以上に広い。まるで人間の感覚だ。
「珍しいな。ここに踏み込んでくるものがいるとは」
男の頭上には名前がない。ということはプレイヤーではない。NPCなのかさえもも怪しい気がした。
男がこちらに向かって手招きをする。
「傭兵を防御態勢にしているということは、戦闘が望みではないのかな?」
急に話しかけられドキッとする。考えがまとまらない。
「ここのボスか?」
男の問いにこちらも問いで返す。男は笑った。
「そうだな。社長というわけでもないし、責任者でもない。ただ、ここで世界をつないでいるだけの男じゃよ」
男は人間のようだった。
「立ち話もなんじゃな」
男はそう言いながら、左手を横に降った。その先に小屋が現れる。驚いているとさっさとその中に入っていく。
「話がしたければ中にはいれ。傭兵は階段で引っかかるからそこで止めておけよ」
もう考えてもしかたがないので、傭兵たちに待機を指示し小屋の中に入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる