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亮介の秘密
亮介の秘密②
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サクラをなでながら、月を眺める。きょうは疲れたな。郡司くん、もう寝たのかな?そう思いながら亮介の部屋を覗きこむと、電気がまだついていた。
まだ起きてるんだ。ちょっと声かけてみようかな。すると、縁側の窓があいて、亮介が出てきた。
「郡司くん、ごめんねきょう約束してたのに……」
何もこたえず、亮介は外用サンダルをはいて、フェンスを飛び越え、未央の前までやってくると、ひざまづいて頭を下げた。
「未央さま、きょうはお疲れでした。本日、シュークリームのデザートをご用意しておりますが、いかがいたしますか?」
ビシッと丁寧な言葉遣い。きょうはなんだ? 執事か? 極道のマンガはどした?
「はっ、……あ、デザートね。うん。いただこうかな」
「御意」
ぎょ……御意。いったいいつの時代の本を読んでこうなったんだ? とんでもないイケメンが、風呂上りの気だるい雰囲気の執事になるのはついていけないような、至極どきっとするような……。
亮介は、サッと家に戻るとコンビニのシュークリームの袋を持って戻ってきた。
さっきと同様ひざまづいて、シュークリームを差し出す。ありがとう、と受け取ると少し下がって止まった。
控えている……って感じかな?
「郡司くん、こっちきて座りなよ。ビールまだあるから持ってくるね」
「明日も早いゆえ、酒は控えとうございます。となり、よろしいですか?」
「う……うん。どうぞ」
亮介は深く息を吐いて未央の隣に座った。「きょうはごめんね、連絡できなくて。連絡先教えてくれる?」
「至極感激です」
そう言って連絡先の交換をした。郡司くんの透明で綺麗な声は、いつもより低め。お風呂あがりの少し濡れた髪が色っぽい。
「きょうは、執事かなんかの本でも読んでたの?」
「はい、大正時代の貴族と執事の恋愛小説を読んでおりました。いかがでしょうか」
なるほど。本はジャンル構わず読み、かなり入れ込むタイプなんだな。体の奥から笑いがこみ上げてくる。
「郡司くん、面白いよ! まだ慣れてないけど、私が慣れたら多分もっと面白い。郡司くんも楽しい?」
「少しでも別人になって遊ぶのは格別です」
「これからも、こうやってお話しようよ」
「感謝いたします」
「そうだ……、ひとつ謝らなきゃいけないことがあるんだ。例のコラボ企画、別の人が担当になったんだ。私もサポートするけど……ごめんね」
「……、残念です」
「その先生、仕事もできるし、かわいいし、メニュー開発楽しめると思うよ」
ふるふると執事は首を振る。
「未央さまが良かったのに。未央さまでなければやる気が起きませぬ」
まだ起きてるんだ。ちょっと声かけてみようかな。すると、縁側の窓があいて、亮介が出てきた。
「郡司くん、ごめんねきょう約束してたのに……」
何もこたえず、亮介は外用サンダルをはいて、フェンスを飛び越え、未央の前までやってくると、ひざまづいて頭を下げた。
「未央さま、きょうはお疲れでした。本日、シュークリームのデザートをご用意しておりますが、いかがいたしますか?」
ビシッと丁寧な言葉遣い。きょうはなんだ? 執事か? 極道のマンガはどした?
「はっ、……あ、デザートね。うん。いただこうかな」
「御意」
ぎょ……御意。いったいいつの時代の本を読んでこうなったんだ? とんでもないイケメンが、風呂上りの気だるい雰囲気の執事になるのはついていけないような、至極どきっとするような……。
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さっきと同様ひざまづいて、シュークリームを差し出す。ありがとう、と受け取ると少し下がって止まった。
控えている……って感じかな?
「郡司くん、こっちきて座りなよ。ビールまだあるから持ってくるね」
「明日も早いゆえ、酒は控えとうございます。となり、よろしいですか?」
「う……うん。どうぞ」
亮介は深く息を吐いて未央の隣に座った。「きょうはごめんね、連絡できなくて。連絡先教えてくれる?」
「至極感激です」
そう言って連絡先の交換をした。郡司くんの透明で綺麗な声は、いつもより低め。お風呂あがりの少し濡れた髪が色っぽい。
「きょうは、執事かなんかの本でも読んでたの?」
「はい、大正時代の貴族と執事の恋愛小説を読んでおりました。いかがでしょうか」
なるほど。本はジャンル構わず読み、かなり入れ込むタイプなんだな。体の奥から笑いがこみ上げてくる。
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「そうだ……、ひとつ謝らなきゃいけないことがあるんだ。例のコラボ企画、別の人が担当になったんだ。私もサポートするけど……ごめんね」
「……、残念です」
「その先生、仕事もできるし、かわいいし、メニュー開発楽しめると思うよ」
ふるふると執事は首を振る。
「未央さまが良かったのに。未央さまでなければやる気が起きませぬ」
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