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亮介の秘密
亮介の秘密④
しおりを挟む「口づけがよいのですが」
「えっ? くっ……口づけ!?」
「はい」
すごい積極的な執事だな。もしかしてコントロールできないってのは嘘なんじゃないか? 未央はそう思ったが、酔いもあってこのままそうしても、いいような気がした。
「うん……じゃあしてみようか」
亮介はじりっと未央に近づくと、あごをクイッとあげて、そっと唇を重ねた。
「……どう? 戻れた?」
「まだ、戻ってない」
亮介はいじわるそうに笑うと、どさっと未央を後ろに倒す。考える時間もなく、もう一度口づけてきた。それはさっきとは違って息もくるしいほどのキスだった。
「んっ……ふぅ、……んっ」
クラクラするほど激しく舌が絡まる。ときどき息継ぎさせてくれるが、うまくできない。つないだ手に、ギュッと力が入る。
やっと離してくれたときには、もうとろける寸前だった。「はぁ……はぁ……どう? 戻れた?」
「はい、もう元通りです。ありがとうございます」
体を起こして座り直す。未央はまともに亮介の顔を見るのは難しくて、うつむいたまま話し始めた。
「良かったね、でもこのやり方じゃちょっと効率悪くない? もっと簡単に戻れる方法さがしたほうが──」
言いかけたところでぎゅっと抱きしめられる。
「ぐっ……郡司くん?」
「未央さん、あしたも練習してくれますか?」
「えっあっ……と、練習はいいんだけど、違う方法一緒に探そうよ。こんなんじゃ……」
「なに?」
好きになりすぎちゃう……とはとても言えなかった。からかわれてるのかもしれない、先走って告白して傷つくのもいやだ。
未央が何も言わないせいか、亮介は「おやすみなさい」と小さな声でささやいて、フェンスを越え、部屋へ戻っていった。
はぁーーーーーーーーっ。一生ぶんのため息をついたくらい、すごく長く息を吐いた。
なになになに? いまのは? めっちゃキス上手だったんですけど?? こりゃめっちゃ遊んでるな郡司くん。それか年上のお姉さまに教えられた経験ありか。そうでもなきゃあんなキス……できっこない。
未央はそっと自分の唇にふれる。さっきの感覚が体のすみからすみまで走ってびりびりする。
あしたも練習するのかな。毎日あんなキスされてたら、あたまおかしくなりそうだ。
『未央さんのこと、大切にしたいと思ってます』
この前駅で言われたのを思い出す。あれはいったいどういう意味だったんだろう。
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