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亮介の誕生日
亮介の誕生日③
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「姫さまキャラでお祝いしようと思ったんだけど……」
「あっ、あぁ……そういうことね」
亮介は驚きながら、残っていたチューハイをいっきに飲み干した。
しゃなりしゃなりと、ちゃぶ台に近づき、亮介にお酌をする。
「殿、夜はまだ長うございます。たくさんお酒、めしあがってくださいませ」
わざとらしく、目くばせ。亮介とキャラ変であそぶようになり、ずいぶん演技力もついた……ような気がする。
夕方のあまった時間で、駅前の本屋に走り、歴史ものの恋愛小説を買ってきて会話の言い回しを頭に叩きこんだ。亮介が喜んでくれればいいんだけど……。未央が顔を上げると、亮介は顔を真っ赤にして口をぱくぱくしていた。
「未央、めっちゃいい……」
「喜んでくれてよかった。ケーキ切って食べよっか。って……あぁ、ごめん。えっと、殿。ケーキを、ぜひお召し上がりくださいませ」
ケーキを食べさせ合ったり、ほっぺについたクリームを舐めたり。こんな甘い恋人の誕生日は、はじめてだと未央は思った。
「未央、あのさ……」
「どした?」
「僕もその……着替えてきていい?」
「着替え? うん。いいけど……」
「急いで着てくるから、待ってて!!」
亮介はバタバタとあわてて出ていった。なんで着替えるんだろ? 汗でもかいたのかな。
20分経っても戻ってこないので心配していると、ちょっと部屋に来てほしいと亮介から未央のスマホに連絡が入った。ちゃんと戸締りしてきてねと念を押されて。
まさか……。いつかのことが未央の頭をよぎる。ちょっと面白がってもらえればそれでよかったんだけど……。未央はなんとなく次の展開を予想して、亮介の部屋のドアを開けた。
亮介は薄墨色の浴衣を着て、ひざまづいて頭を下げていた。足元が少しはだけていて、見えそうで見えない。
「姫、このようなむさ苦しいところへおいでくださり、ありがとうございます」
やっぱり。やっとブームが去ったと思っていたのに……。
それでも亮介の誕生日だからと、未央はそれに乗っかることにした。
ひざまづいているということは、亮介は殿じゃなくて家臣かなにかだろう。だいぶ前に、誕生日は未央にしてもらうと亮介が言ってたのを思い出す。
ちょっと強気なお姫さまでいってみようか。できる……かな。
「こんなところに呼びつけて、いったい何の用じゃ」
酔いも十分。頭の中に会話の言い回しも叩き込んである。きょうは亮介の誕生日。やれるとこまでやってみよう!!
「申し訳ございません、どうしても私の想い、姫に受けとっていただきたく……」
亮介が続けてるってことは、世界観は一致したはず。よし! 任せて!!
「想いじゃと……。そなたの身分でずうずうしいのぉ。だがせっかくじゃ、楽しませてもらうとしようか」
流し目で、亮介を見つめる。この蔑んだ目、どう? 萌える?
「姫さま……」
いいよね亮介? このままいくからね!
未央は亮介の手をつかんで、ベッドに押し倒した。
「あっ、あぁ……そういうことね」
亮介は驚きながら、残っていたチューハイをいっきに飲み干した。
しゃなりしゃなりと、ちゃぶ台に近づき、亮介にお酌をする。
「殿、夜はまだ長うございます。たくさんお酒、めしあがってくださいませ」
わざとらしく、目くばせ。亮介とキャラ変であそぶようになり、ずいぶん演技力もついた……ような気がする。
夕方のあまった時間で、駅前の本屋に走り、歴史ものの恋愛小説を買ってきて会話の言い回しを頭に叩きこんだ。亮介が喜んでくれればいいんだけど……。未央が顔を上げると、亮介は顔を真っ赤にして口をぱくぱくしていた。
「未央、めっちゃいい……」
「喜んでくれてよかった。ケーキ切って食べよっか。って……あぁ、ごめん。えっと、殿。ケーキを、ぜひお召し上がりくださいませ」
ケーキを食べさせ合ったり、ほっぺについたクリームを舐めたり。こんな甘い恋人の誕生日は、はじめてだと未央は思った。
「未央、あのさ……」
「どした?」
「僕もその……着替えてきていい?」
「着替え? うん。いいけど……」
「急いで着てくるから、待ってて!!」
亮介はバタバタとあわてて出ていった。なんで着替えるんだろ? 汗でもかいたのかな。
20分経っても戻ってこないので心配していると、ちょっと部屋に来てほしいと亮介から未央のスマホに連絡が入った。ちゃんと戸締りしてきてねと念を押されて。
まさか……。いつかのことが未央の頭をよぎる。ちょっと面白がってもらえればそれでよかったんだけど……。未央はなんとなく次の展開を予想して、亮介の部屋のドアを開けた。
亮介は薄墨色の浴衣を着て、ひざまづいて頭を下げていた。足元が少しはだけていて、見えそうで見えない。
「姫、このようなむさ苦しいところへおいでくださり、ありがとうございます」
やっぱり。やっとブームが去ったと思っていたのに……。
それでも亮介の誕生日だからと、未央はそれに乗っかることにした。
ひざまづいているということは、亮介は殿じゃなくて家臣かなにかだろう。だいぶ前に、誕生日は未央にしてもらうと亮介が言ってたのを思い出す。
ちょっと強気なお姫さまでいってみようか。できる……かな。
「こんなところに呼びつけて、いったい何の用じゃ」
酔いも十分。頭の中に会話の言い回しも叩き込んである。きょうは亮介の誕生日。やれるとこまでやってみよう!!
「申し訳ございません、どうしても私の想い、姫に受けとっていただきたく……」
亮介が続けてるってことは、世界観は一致したはず。よし! 任せて!!
「想いじゃと……。そなたの身分でずうずうしいのぉ。だがせっかくじゃ、楽しませてもらうとしようか」
流し目で、亮介を見つめる。この蔑んだ目、どう? 萌える?
「姫さま……」
いいよね亮介? このままいくからね!
未央は亮介の手をつかんで、ベッドに押し倒した。
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