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王子様のプロポーズ
王子様のプロポーズ③
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顔が真っ赤になって、手がカタカタと震える。亮介はそのままひざまづいた。
「結婚してください、お姫さま」
まっすぐな目でそう言われる。未央は涙を浮かべながら、しゃがみ込んで亮介と目線を合わせた。
「ありがとうございます、ひとつだけお願いがあります」
亮介はなに? と笑顔でこたえる。
「いつも笑顔じゃなくてもいい。悲しいときは悲しんで、辛いときはつらいと言ってください。そのままのあなたが、ぜんぶ好きだから」
「……はい。承知しましたお姫さま」
図ったように、スマホから流れる曲がサビを迎えていた。すっと立ち上がってキスをしてぎゅっと抱きしめあった。
「亮介、ありがとう」
「ずっと一緒にいようね……。さあ姫、もう我慢の限界です。きょうは寝かせませんよ」
何度も聞いたそのセリフ。心臓がばくんと跳ねる。確かに、きょう寝るのはもったいなさすぎる。
「ベッドへ行きましょう。一晩中かわいがってさしあげますよ」
手をひかれて、寝室へ向かう。何度このシチュエーションを経験してもまったく慣れない。心臓が飛び出しそうだ。「姫、服を脱ぎましょう。レンタルなんで汚れるといけませんから」
えーっ、もう脱ぐの? もうちょっと着ていたかったのに……。ちょっと残念だったけど、亮介のファスナーを下ろす手がぎこちないのがかわいいくて、まあいいかと思った。
ドレスとマントをそっと片付けて、お互い下着だけになってベッドになだれこむ。
布団のなかで、何度も名前を呼び合いながらキスをする。上になったり下になったり、猫みたいにじゃれあった。
一回戦目が終わって、休憩中に、ふと気になったことを聞いてみる。
「亮介、ちょっと聞いてもいい?」
「はい、なんでも? お姫さま」
「あの……、サプライズいつから用意してくれてたの? ここ……すぐ予約できるような部屋じゃないよね?」
亮介は、ん? と笑って未央の髪を撫でた。
「さぁ? 魔法でも使ったんじゃないですか」
なにそれ? ナイショってことなのかな。もっと聞きたかったけど、塞ぐようにキスされてそれ以上は聞けなかった。
──ハッと目が覚めると、窓の外が少し明るくなってきていた。コートを羽織ってバルコニーへ出てみる。
さすがにキーンと寒い空気にぶるぶるっと体が震えた。朝もやから少しだけ見えているお城は幻想的だ。
毎日亮介と一緒ということは、毎日幸せがアップデートされてくってことだよね。こんなに幸せになれるなんて、夢みたい。
おばあちゃんが死んだときは、ひとりになってしまった悲しみで、何も考えられなかった。自分の境遇を恨み、生きる気力すら無くしていた。それでも、サクラがいたから、なんとかしなくちゃって必死になってペット可物件をさがして、あの借家に引っ越した。
バタバタと手続きを終えて、久しぶりにmuseに行ったとき、亮介は心配して声をかけてくれた。
『久しぶりですね。どうしたのかなって心配してました。未央さんにまた会えてうれしいです』
営業スマイルというのは分かりきっていたが、まんまとその笑顔にやられた。あの笑顔は罪だ。
あの穏やかですてきな笑顔に救われたのは間違いない。亮介と付き合いたいとか、どうにかなりたいなんて思えるような関係じゃないのは知ってたけど、毎日お店に寄って、少ししゃべるだけでも心は満たされた。
それがいまや、こうして亮介の奥さんになろうとしている。そういわれれば昨日は結婚前夜だったんだ。独身最後の夜。
きょうはこのあと婚姻届を出しに行く。紙ペラ1枚で結婚できるのだからふしぎ。
結婚生活がうまくいくかなんて、わからないけど、なんでもやってみる。亮介がいたから、そう思えるようになった。
自分ひとりだったら、無難に、目立たないように、他人の目におびえた人生だったのかもしれない。お互いを大切にするとか、尊重するとか、よくわかんないけど、話し合うことはできる。
いままでみたいに、なんでも話し合えたり、辛いときは甘えられたり、そんなふたりでいれたらいいな。
そう考えているうちに夜が明けてきた。
きょうが結婚初夜。初夜か……。
未央はいかがわしい妄想を首を振ってすっ飛ばし、部屋へ戻った。
亮介はかわいい寝息をたてていた。あれだけしたら、疲れるわね。未央は亮介の頬をそっと撫でた。
むにゃむにゃっとする亮介のきれいな顔に悶える。幸せすぎだ。
ゆっくりホテルで過ごしてチェックアウトし、役所で婚姻届を提出する。
天気は快晴。すごくきれいな青空だった。
遅めの昼食を済ませると、誕生日プレゼントがあると言われて、電車に乗った。
あれ、この景色……。
「結婚してください、お姫さま」
まっすぐな目でそう言われる。未央は涙を浮かべながら、しゃがみ込んで亮介と目線を合わせた。
「ありがとうございます、ひとつだけお願いがあります」
亮介はなに? と笑顔でこたえる。
「いつも笑顔じゃなくてもいい。悲しいときは悲しんで、辛いときはつらいと言ってください。そのままのあなたが、ぜんぶ好きだから」
「……はい。承知しましたお姫さま」
図ったように、スマホから流れる曲がサビを迎えていた。すっと立ち上がってキスをしてぎゅっと抱きしめあった。
「亮介、ありがとう」
「ずっと一緒にいようね……。さあ姫、もう我慢の限界です。きょうは寝かせませんよ」
何度も聞いたそのセリフ。心臓がばくんと跳ねる。確かに、きょう寝るのはもったいなさすぎる。
「ベッドへ行きましょう。一晩中かわいがってさしあげますよ」
手をひかれて、寝室へ向かう。何度このシチュエーションを経験してもまったく慣れない。心臓が飛び出しそうだ。「姫、服を脱ぎましょう。レンタルなんで汚れるといけませんから」
えーっ、もう脱ぐの? もうちょっと着ていたかったのに……。ちょっと残念だったけど、亮介のファスナーを下ろす手がぎこちないのがかわいいくて、まあいいかと思った。
ドレスとマントをそっと片付けて、お互い下着だけになってベッドになだれこむ。
布団のなかで、何度も名前を呼び合いながらキスをする。上になったり下になったり、猫みたいにじゃれあった。
一回戦目が終わって、休憩中に、ふと気になったことを聞いてみる。
「亮介、ちょっと聞いてもいい?」
「はい、なんでも? お姫さま」
「あの……、サプライズいつから用意してくれてたの? ここ……すぐ予約できるような部屋じゃないよね?」
亮介は、ん? と笑って未央の髪を撫でた。
「さぁ? 魔法でも使ったんじゃないですか」
なにそれ? ナイショってことなのかな。もっと聞きたかったけど、塞ぐようにキスされてそれ以上は聞けなかった。
──ハッと目が覚めると、窓の外が少し明るくなってきていた。コートを羽織ってバルコニーへ出てみる。
さすがにキーンと寒い空気にぶるぶるっと体が震えた。朝もやから少しだけ見えているお城は幻想的だ。
毎日亮介と一緒ということは、毎日幸せがアップデートされてくってことだよね。こんなに幸せになれるなんて、夢みたい。
おばあちゃんが死んだときは、ひとりになってしまった悲しみで、何も考えられなかった。自分の境遇を恨み、生きる気力すら無くしていた。それでも、サクラがいたから、なんとかしなくちゃって必死になってペット可物件をさがして、あの借家に引っ越した。
バタバタと手続きを終えて、久しぶりにmuseに行ったとき、亮介は心配して声をかけてくれた。
『久しぶりですね。どうしたのかなって心配してました。未央さんにまた会えてうれしいです』
営業スマイルというのは分かりきっていたが、まんまとその笑顔にやられた。あの笑顔は罪だ。
あの穏やかですてきな笑顔に救われたのは間違いない。亮介と付き合いたいとか、どうにかなりたいなんて思えるような関係じゃないのは知ってたけど、毎日お店に寄って、少ししゃべるだけでも心は満たされた。
それがいまや、こうして亮介の奥さんになろうとしている。そういわれれば昨日は結婚前夜だったんだ。独身最後の夜。
きょうはこのあと婚姻届を出しに行く。紙ペラ1枚で結婚できるのだからふしぎ。
結婚生活がうまくいくかなんて、わからないけど、なんでもやってみる。亮介がいたから、そう思えるようになった。
自分ひとりだったら、無難に、目立たないように、他人の目におびえた人生だったのかもしれない。お互いを大切にするとか、尊重するとか、よくわかんないけど、話し合うことはできる。
いままでみたいに、なんでも話し合えたり、辛いときは甘えられたり、そんなふたりでいれたらいいな。
そう考えているうちに夜が明けてきた。
きょうが結婚初夜。初夜か……。
未央はいかがわしい妄想を首を振ってすっ飛ばし、部屋へ戻った。
亮介はかわいい寝息をたてていた。あれだけしたら、疲れるわね。未央は亮介の頬をそっと撫でた。
むにゃむにゃっとする亮介のきれいな顔に悶える。幸せすぎだ。
ゆっくりホテルで過ごしてチェックアウトし、役所で婚姻届を提出する。
天気は快晴。すごくきれいな青空だった。
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あれ、この景色……。
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