賢者様が大好きだからお役に立ちたい〜俺の探査スキルが割と便利だった〜

柴花李

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第六十六話 改まる決意

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 オリンドが、暗黒の混沌より生まれ出し叢雲に潜む紫雷竜が一角の爪先に掘り起こせし奈落へと通ずる虚無の深淵、もとい、バティスタの足元に開けた大穴は人ひとり優に埋められそうな寸法だった。
「っひ、ひぃいいっ!?」
 鶴嘴のひと掘りでなぜこんな大穴が開くのか。へたりと地面に尻餅を突いたガイオたちは、理解を超えた現象に対する混乱と恐怖とで悲鳴を上げることしかできない。
「おおう。やるな、オーリン。見事な体捌きだったぞ」
「ほ…ほんとう!?」
 イドリックに褒められたオリンドは嬉しくて誇らしくて、スフマカン鶴嘴を抱え直し頬を興奮に染めた。
「ええ。貴方の採掘技術は出会った時から素晴らしかったですけれど、これほど成長するとは。さすがです、リンド」
「えっ、…えへっ、…へへへへ…。稽古付けてもらったおかげだ」
 エウフェリオの言葉が体の芯まで甘く染み渡り、頑張って良かったとしみじみ思う。もちろんのことスフマカン鶴嘴にも感謝の思いを込めて滑らかな金属肌をたっぷりと撫でた。
「ふっふっふ。いやあ、いいね。素晴らしいね。君たちに護衛を頼んで正解だ。素敵な鶴嘴の筋…ハシスジとでも言おうかね。素敵な鶴嘴筋はしすじだったよオリンドくん。これは師匠がいいんだろうね師匠が」
「うへへっ。うんっ、師匠すごくすごい!」
 これほどの威力が出せたのはやはり指導が良いからだ。嬉しくて破顔すれば、何故だかアレグの顔が赤くなったような気がする。が、構わず感謝と感激と感動に何度も頷いた。
「やあん。いやあん、あたし惚れちゃいそうだわあ。惚れちゃうわあ。リンちゃんすごおい」
「へぅうぅう…ほめ、褒めすぎだよお…」
 惚れるだなんてそんなそんな。一気に顔が熱くなるのを感じたオリンドはウェンシェスランに向けてあわあわと両手を振った。
「いいえ、褒めすぎでは御座いませんオリンドさん。貴方の努力が端々に現れておりました。わたくし、尊敬いたします」
「そっ、そんな、そんな…」
 至極真面目に真っ直ぐ言うティツィアーナに、もうなんと言って返せば良いものやら。
「いやはや、同感ですな。探査スキルだけでなくこれほどの爪を隠しておられようとは」
「やっ、ま、まだまだっ。フェリとか、り、リックの、みんなの、足元にも及ばない、よ…!」
 カテナチオからも畳み掛けられたオリンドは真っ赤になってとうとう仲間に投げた。
 そんなオリンドの信頼されっぷり愛されっぷりを逃げ場もなく見せ付けられるバティスタの腑は煮え繰り返りそうだった。しかしながら目の前に穿たれた大穴と、これを平然と見慣れた威力扱いをする面々と、それにこの破壊力で足元にも及ばないという言葉を鑑みれば、歯を食いしばって暗い思いを飲み込むしかない。
 化け物どもが。このクソ客どもは現実を知らんとしても、いったいこいつらのランクはいくつだ。なんで中級ダンジョンなんかに来てやがる。上級だって案内できるんじゃねえのか。そっちに行ってりゃ良かったんだ。そうすりゃ今日、俺たちがこんな目に遭うことも無かったってのに。なんでだよ。くそ。…なんで、…いつの間に、オリンドは……っ!
 煮詰まる悔しさに内臓が溶け爛れそうな心地だ。それでも推定されるランク差に頭も上げられない憤りで全身が爆ぜそうだ。
「…それで、なんですって?誰かをどこかに返せ、などと、聞こえた気がするのですが」
 ぎくり。
 和やかな雰囲気から一転、地を這うようなエウフェリオの声と底冷えのする視線に掠められ、バティスタは標的ならずとも背が硬直した。どっと嫌な汗が吹き出す。
 問いただされたガイオたるや、と、隣を見れば彼は額に脂汗を滲ませて蒼白になっていた。
「……い、…いや…。あれは、その……」
 失敗した。
 オリンドの力がそれほどのものなら、地下洞窟だろうが迷宮だろうが、遺跡だって古城だって暴き放題だ。利用しない手はない。そう思って先走ってしまった。
 しどろもどろの見本のようにガイオは乾き切った口を開く。
「す、すまない。…言い方……そう、言い方が悪かったようだ。言い直す。言い直すから。…な、なあ、オリンド。俺が入るまで、バッツとマーシーとは四年もやれてたんだろう?それに、同郷だし、幼馴染じゃないか。生活は保証する。だから、戻ってこないか…?」
 うわあ。
 アレグもイドリックもウェンシェスランもエウフェリオもティツィアーナも、ぞっとした。脊髄を走り抜ける悪寒に身体中がきつく震える。
 なんだって?生活は保証する?なんだその一人で生きられない者に対するような物言いは。
 この地方における非戦闘職の扱いがそこに如実に現れていた。
「…ところ変わればと言いますが、これはまた……」
 だいたい、先の一撃を見てそれか。今この雰囲気を見てそれか。エウフェリオを始め言葉を失くす一同に、カテナチオは黙したまま恐縮の面持ちを見せた。
 この国の管轄担当に就いたのは何年か前だが、母国とのあまりの意識差に着任早々愕然としたものだった。長く過ごすにおいて、麻痺してはならない、鈍くなってはいけないと、自分を戒めていたはずなのに、先ほどガイオの発言にさして驚かなかった自分に驚いたところだ。
「言い方とかじゃ無いよガイオ」
 そしてオリンドはやはり当然のようにびくともせず受け答える。十六年ぶりに無意識の差別を投げつけられ、むしろこれが生まれ育った地域の価値観、これこそ故郷の空気だと郷愁すら感じていた。
 しかし異なる考え方を知った今は以前にも増して息苦しく生き辛い風土だ。
 そのように感じられるようになったのも、懐かしい古巣の姿が歪だと思えるようになったのも、ひとえに彼らのおかげだと、背中に感じる頼もしい気配に心が奮い立つ。
 改めて、感謝の念を深く噛み締めたオリンドは、初めて真っ直ぐガイオと視線を合わせた。
「俺、怖いからとか、痛い目に遭いたくないからとか、そんなんじゃなく役に立ちたいって、役に立てることが嬉しいって、心から思える人たちに出会ったんだ。だから、もう戻らない」
 そうして、とっくの以前から固めていた決意を、はっきりと言葉にすれば自身が鼓舞されますます背筋が伸びた。
「……っ!」
 仕方ないと諦めず自分を捨てることなく立つその姿に、不意にもたらされた嬉しい言葉に、胸打たれたエウフェリオは口元を覆った手で目頭を押さえる。イドリックも眉間に拳を当て感極まったし、アレグもウェンシェスランも涙を滲ませて打ち震えた。
 人目憚らず思い切り抱きしめたい衝動を堪えて歓喜を五臓六腑に染み渡らせる。足元から痺れて溶け出し、天にも昇る心地だ。
「…ギー。バッツ。もう、よそうよう」
 その暖かな光景をどことなく羨ましそうに見詰め、黙って成り行きを見守っていたダルマチェロがゆっくりと頭を振って二人を諌める。
「聞いたろ、今の。居場所を見つけたんだよオーリンは。もう、バッツが何言ったって堪えやしないし、ギーが何言ったって戻ってきやしないよう」
 おっとりと立ち上がった彼はガイオとバティスタの手を順に引いて立ち上がらせた。そうして諦めさせるように二人の肩に手を置き、引き寄せて首を垂れた。
 次の瞬間。
「一旦引くぞ!!」
 三人は一斉に洞窟の出口へ向けて突進した。
 どうやら逃げねば痛い目に遭う状況であることは理解していたらしい。
「はわあ!?」
 吹き飛ばされる勢いで横を擦り抜けられたオリンドがよろめき、エウフェリオの胸元に背中から倒れ込む。
「野郎!逃がすか…っうお!」
「すみませんリック!」
 即座に反応したイドリックは身を翻したが、進路上に立つ二人にぶつかりかけ、迂回することで遅れが生じてしまった。
 カテナチオとティツィアーナもガイオたちの行手を阻もうと手を伸ばしかける。しかし走りながらダルマチェロが力任せに振り回す星球を受けては一溜まりもない。あえなく回避行動を取り後ろ向きに踏鞴たたらを踏んだ。
「くっ…!不覚!」
「面目ない!」
「やあん、怪我してない!?あいつらは大丈夫よ、アドルフォ様が追ったわ!」
「任せたまえ!」
 頼みの綱は誰よりも早く反応していたアレグだ。なんなら数十秒遅れても追い付くと期待の籠ったウェンシェスランの声に応え、ぐんと速度を上げた彼だが、しかしすぐさま何か見つけたように、あ、と声を上げて急に速度を落とすと片手を横に挙げて後続に待つよう指示を出す。
 何事だ。
 不思議に思いながらも全員立ち止まった。
 その目の前で、ガイオたちが出入り口の方へ真っ直ぐ伸びる横穴を見つけ、嬉々として方向を転換した。
 ああ。
 皆一様に立ち尽くし眼前の光景を眺める。
「……フェリちゃんで、しばらく、だったわね?」
「ええ。そうですね」
「…叫び声も出せて無かったじゃねえか。失神してねえかよあれ」
「いえ、しませんよ」
「ならず者どもながら同情するね全く。…痙攣しっぱなしだけれど、本当に麻痺魔法なのかい?」
「ええ。間違いなく」
「だ、だ、だいじょぶ?死なない?」
「ふふ。大丈夫ですよ。死ねるような生易しい調整はしていません」
 しん。
 洞窟内のあらゆる音が消えた。
「さっ!回収して次に移りましょっか!」
 はいはい、無かった何も聞かなかった。高らかに手を打ったウェンシェスランは、周囲に人が居ないことを確認しつつエウフェリオの鞄に目をやる。
「…こいつら収納鞄に入れちゃっていいかしらね」
「いいんではないですか?サヂェットによれば家畜の仕入れなどにも使われていたということですし…」
「牛馬扱いかよ」
 はは。と、イドリックは乾いた笑いを漏らした。
「彼らと比べては牛馬がかわいそうと言うものだよ。…さておき、シェスカの言う通りさっさと回収して戻ろうじゃないか。……そろそろ素に戻りたいものだ」
「そうね、お疲れよねアドルフォ様ん。馬車で伸び伸びしてくださいな」
 暴れられずオリンドのピンチにも口を出せず我慢し通しで半べそをかきつつ、最後の一言は小声で呟いたアレグのためにも、一行はバティスタたちを気絶させ、彼らに倒されたオーガともども回収すると、直線通路の結界などを手早く解いてディッキアダンジョンの出入り口へ向かう。
 外に出るとちょうど太陽が真上に差し掛かる頃だった。今朝方ここに並んでいた冒険者たちの多くは洞窟の中程か奥に設けられた安全地帯で昼食を摂り、もうひと暴れの英気を養っていることだろう。
 折も折の時刻に、冒険体験とはいえやけに早く出てきたと訝しむ門番には、アドルフォに頼まれたオリンドが壁掘りの技を披露したところたまさか隠し通路を掘り当てたと告げる。その開口部に不法侵入防止の麻痺魔法付き結界を施したらば、存外強くかかりすぎてしまい若いパーティが今も痺れて転がっているとバツの悪そうに釈明してみせると、納得の苦笑を浮かべ、あとはこちらで対処しますと恩に着せる物言いで通された。
 しめしめと足早に洞窟を後にして、馬車に乗り込みお決まりの隠遁魔法を展開するや、アレグは座席に身を投げ出して天井を仰ぐ。
「……だっはー!疲れたー!フィロのやつ、よくもあんな態度貫けてるよな、尊敬するぞ俺!」
「お、お、お疲れ様…!」
 彼の性格でフィリッポの口調や態度を続けるのは至難の技だったことだろう。労いの言葉をかけると急に腕を取られ手を握り込まれた。
「いや、疲れたのはオーリンだろ!?色々思い出したりして辛かったろうに……。てか、よくもあんな奴らの傍に四年も居られたよ!頑張ったな!ちゃんと言い返せて、えらいぞ!」
「へあ…!そ、そんなこと…」
「ありますよ。きちんと自分を大切にできましたねリンド。お見事です」
 彼がカロジェロの執務室に初めて訪れたとき、カランコエ冒険者ギルドを訴えるかどうかと聞かれ、面倒臭いと答えた過日から思えば大層な進歩だ。
 エウフェリオは万感の思いを込め頭を大きく撫でた。
 擽ったく髪をかき混ぜられたオリンドはじゅわりと胸が温まり、なんだか言いようの無い照れ臭さが湧き上がる。
「ひゃう…あう、あ、…ううっ、でも、まだっ、ギルドが残ってる、からっ」
 駄目だ駄目だ、にやけてる場合じゃない。この後は組織を相手にしなきゃいけないんだ。
 照れ隠し紛れにも次の目標を口にした。
「おうっ!そうだな、蹴散らしてやろうなオーリン!」
「ふふ。そうですね。紫雷竜からは有力な言質も取れましたし、あとは評議会やキアが集めた証拠でもって息の根を止めてやりましょう!」
 アレグとエウフェリオの励ましにオリンドは大きく頷き、ウェンシェスランとイドリックも揃って各自拳を突き合わせると、大きく応と入魂の声を上げた。
「……いや、だから息の根を止めたりはするな。っての」
 それから、忘れず突っ込むイドリックだった。
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