「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬

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25 あ、あら…?

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 自分自身の手で、望む未来を切り開いてゆく。
 そのつもりだったのですけれども。

「アリアンヌ様……これは、一体……」
「わたくしも、何がどうなっているのかまったく存じませんわ……」

 なぜ……なぜこうなってしまったんですの~っ?!
  
 そう、あれは数日前のことでしたわ。

「ギーズ公爵令嬢とボワセロー侯爵令嬢は教員室に来てください」

 新年度早々ですし、わたくしたちが何らかの問題を起こしたというよりは、今後についてのお話での呼び出しでしょう。
 表面上はすまし顔で、心のなかでは鼻歌交じりに廊下をてくてくと。

「アリアンヌ様、何かあったのですか? 瞳が輝いておりますが……」

 ……マティルド様、いくらなんでも察しが良すぎますわ。

「ねぇ、ご覧になって。ギーズ公爵令嬢のお顔。とても嬉しそうではない?」
「眼福……ほんと、今日は運が良いわ……」

 あ、あら……?

「おい、いくらご機嫌な表情がかわいらしいからって、凝視するのはマナー違反だ」
「わざわざ言われなくてもわかってるって!」
「でもさ、王太子殿下とは最近……僕たちにもチャンスが無いわけではないんじゃ……?」
「ちょっ、いい加減黙れ! 王家の影にでも聞かれた日には……」

 お、おかしいですわね……?

「アリアンヌ様、周りの雑音など気にしないでください」
「ざ、雑音……?」
「えぇ、雑音です」
「わ、わかりましたわ……」

 何でしょう、こう、無理やり押し切られたかのような違和感が拭えませんわ……。

「そんなどうでもいいことは置いておくとして」
「ぇ……」
「何があったんですか? あんなに嬉しそうな顔をするだなんて、何かとても素晴らしいことがあったに違いありません!」

 あぁ……物静かなマティルド様のイメージが風化してさらさらと崩れ去ってゆきますわ……。
 ぐすん……。

「さあ、教えてくださいませ!」
「……ほ、本日の……」
「本日の?」
「本日の、食堂の特別メニューのデザートが……わたくしの大好物なんですの……」

  あぁ……マティルド様の気迫に押されて、つい言ってしまいましたわ……。

「大好物がデザートだから、アリアンヌ様はご機嫌なんですね?」
「えぇ、そうですわ」

 平静。
 動揺などぎゅうっと押し込めて平静を装わなければなりませんわ。
 わたくしは、名門ギーズ家の誇り高き令嬢ですもの。
 最高級の模範となる行動を心がけ、貴族のみならず王国全体を牽引する。
 そんな存在でなければならないはずですのに……よりにもよって食べ物で表情操作猫かぶりに失敗して醜態を晒すだなんて……。
 これでは、淑女としての嗜みを教えてくださったお母様に顔向けませんわ。

「さあ、マティルド様、早く教員室に行かなくてはなりませんわ。令嬢たるもの、約束しているのに人を待たせる等といった行為はご法度――そう、言語道断ですわ」
「はい。では、急ぎましょう」
  
 なかなか上手くうやむやにすることができたのではなくて?
 やはりわたくしは、やればできる子なのですわ。
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