夢の中の女性

あやこ

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久しぶりの道を歩くと、その頃が思い出される。気難しいオヤジがいるタバコ屋や、客が店にいる時を見た事がない理髪店、全てが昔のままだ。小百合は少しわくわくしながら施設に向かった。

建物は昔と変わらず古ぼけていたが、私にとってはそこが良い意味で懐かしかった。この施設が取り壊しになると思うと、ちょっと切ない。中に入ると満面の笑顔で施設長が迎えてくれた。

「ほんま、あんたもおばちゃんになったなぁ!そう言えば腕の傷も綺麗に治ってるやないの!」

捨てられた当時、私は怪我をしていた。見つけた人が直ぐに病院に連れて行き治療したので大事には至っていないが少し気になったので、成人してから傷が目立たないように再度手術したのだ。

富子は満面の笑みを私に向け、一つの箱を渡して伝えた。

「これなぁ、小百合ちゃんが置かれてた場所に一緒にあったみたいやねん。当時はあんたが捨てられてたとか、言いづらくて職員が渡せずにいたらしいわ。」

箱を開けると、置き去りにされてた当時の着ていた服や、おしゃぶりがあり、そして何故か丸い石ころが一緒に入っていた。

「なんだろう?これ?」

その石を手に取り眺めた。石には消えかかっていたが、油性ペンで顔を書いたような跡があった。

「私は両親にとって石みたいに捨てちゃう存在ってわけね。」

精一杯の皮肉を込めて小百合は呟いた。


施設を出ると外は日が暮れていて、そのまま急いで小百合は家路に着いた。今日は一日中外にいたせいか、疲れてそのまま眠りについた。

----------------------------------- - - - - - 


「どう言う事!あなた結婚していたの?私の事は遊びだったの!?」

「そうだよ!お前なんかと結婚する訳ないだろう!!子供は堕ろせ!産んだらその子供は殺すぞ!!」

小百合の目の前で男女が言い争っている。男は女に札束を投げると部屋を出て行った。

《な、何これ?もしかして夢?こんなはっきり見る夢は初めてかも。それにしても酷い男ね》

女性は項垂れながらまだ大きくないお腹を庇うように座り込んだ。

《かわいそうな女性・・・・・。私の人生と並ぶぐらい悲惨ね。でもなんで夢までこんな感じなの私って・・・。》


ジリリリリリリリリリリリリリリ

目覚ましの音が鳴り響き小百合は目を覚ました。

変な夢を見た・・・・・。そう呟きながら小百合は現実に戻っていった。
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