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【シアナside①】
しおりを挟む私は公爵令嬢として生まれた。
幼い頃から皇太子ローレンスと結婚すると聞かされて育った。
私は嬉しかった。
けれどローレンスが私の好意を受け取ることは、ずっとなかった。
学園に入っても関係性は変わらなかった。
私は婚約者ではなかったが、この国の公爵令嬢はわたし一人だったので彼に釣り合う立場の令嬢は他にいなかった。
だから油断していた。
まさか、ローレンスが侯爵令嬢のエレーナを好きになるなんて…
学園でローレンスとエレーナの噂が立ち上った。
私を差し置いて、彼に愛されるエレーナを恨まないわけがなかった。
だけど私は将来、皇后になる。
迂闊な言動をするわけにはいかなかった。
だから本音を隠して、エレーナに好意的に接した。
わざわざ憎いエレーナに好意的に接したのにはもう一つ理由があった。
もしかしたらそんな寛容な私をローレンスが好いてくれるかもしれない、という淡い期待もあった。
けれどその期待はあっさり崩れた。
私の心が打ち砕かれたのは、ローレンスの父である国王が亡くなった日のことだった。
ローレンスは憔悴していた。
私は彼を慰めたくて、彼がいつもいる学園の庭に足を運んだ。
しかし、そこには既に先客がいた。
その人物はエレーナだった。
私がローレンスにしてあげたいと思っていたことを、彼女がやっていた。
ローレンスは彼女にもたれかかるような体勢で何かを話していた。
私はそれが気になって、気付かれないように身を潜めて聞き耳をたてた。
「エレーナ、君の恋人がルイなのは知ってる。だけどこれからは…僕の傍で僕のことを支えてくれないかな…」
ローレンスのそんな声が聞こえる。
私は動揺した。
「え…?」
エレーナの動揺した声も聞こえる。
私はそんな彼女の反応に嫌悪感を覚える。
白々しい。
分かってたでしょう?
ローレンスが貴女を好きなことぐらい…
「私、あなたのこと支えるわ。」
しばらくの沈黙の後、彼女は覚悟したようにそう言った。
それを聞いて私は心底彼女を憎んだ。
この女には、ルイという恋人がいたのに。
たぶらかしたローレンスを選ぶなんて…なんて最低なの。
それからエレーナの結婚はトントン拍子に進んでいた。
ローレンスが彼女を皇后として迎えたいという案が出たとき、私は焦った。
なんとかお父様に懇願して、その案を阻止した。
結果的に、私が皇后でエレーナは側妃となった。
私は安堵した。
正妻として、彼女と友好関係を築いた。
けれどローレンスは、あくまで皇后としての責務だといわんばかりで私を労ることはなかった。
私は子供を2人授かった。
ローレンスは子供を可愛がった。
けれど私を寵愛することはなかった。
反対に彼が寵愛するエレーナは子供を授かることができなかった。
そんなエレーナを慰めるように、ローレンスは彼女に貴妃の称号を授けた。
私は夫である陛下を恨んだ。
皇后の私を蔑ろにして、側室を寵愛するローレンスを憎いと思った。
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