娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)

文字の大きさ
1 / 8

逃げ出す

しおりを挟む


「…」



「…」



目の前にいる寡黙な夫と、無言の朝食。
なんてつまらないのかしら。

この国で一番名門と言われるアンダー公爵家に嫁いできたアリスは、いつものように心のなかで嘆いた。

名門公爵家の跡継ぎシーク子息から求婚された時、私の実家エイマー伯爵家はてんやわんやだった。


「どこで出会ったの?」など子息との馴れ初めを両親に聞かれるも、全く見に覚えがなかった。
そもそも面識自体がないはずなのだ。
私は周囲におだてられるままに結婚をした。

結婚後に聞こうと思ったが、シーク子息はかなり寡黙な人だった。
そんなことを気軽に話すのも気が引けて、結局なにも聞けなかった。

だから今でもなぜ私が妻に選ばれたのか謎のままだ。

嫁いですぐに、シーク子息は公爵を継いだ。
義父母は離れの屋敷に隠居していった。
なので私は、夫が執務中に義父母が住む離れに出向いて2人と親交を深めようとしていた。

しかしすぐに無理だと悟った。
私が紅茶を出しても無視、挨拶しても無視、まるで伯爵家の出の私とは会話なんかできません、と言われてるようだった。

そんな空気に耐えることなどできるはずもなく、次第に私が離れに出向く回数も減っていった。
その事について夫から咎められることもなかったので、それからは義父母との関係も疎遠になってしまった。

義父母とも交流しないなんて妻失格だと自分を責めるも、離れに行く気にはなれなかった。
そしてその悩みを夫に相談することもできぬまま数ヶ月が過ぎた。


「…」


「…」


いつもと変わらず無言の朝食時間を過ごす。
数ヶ月がたち、寡黙な夫との夫婦関係はあまり良好とは言えなくなっていた。
最初の頃はそこそこ夜の営みもあった。
しかし最近はめっきりなくなってしまった。

寝室は共にしているが、このままずっとご無沙汰ならそれも必要なくなるだろうなと思っていた。


正直言って、この生活に嫌気がさしていた。
義父母との関係も上手くいかない、ましてや夫との夜の営みさえない妻…
この家に私がいる必要性ってあるのか?
そんな疑問がここ最近、私の頭を駆け巡る。

もうこの生活に耐えられそうになかった。
実家に帰りたいとホームシックになっているこの機会を逃せば、一生つまらない人生を過ごすかもしれない。

今なら間に合う。
それに疎遠の義父母からしても早く出ていってほしいだろうし、夫だってこの結婚に失敗したと後悔しているかもしれない。

そう思ったらこの家にいることがとてもバカらしく思えた。
だから私は、衝動のままに離縁状を机に置き、嫁ぎ先から逃げ出した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果

京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。 ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

処理中です...