娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)

文字の大きさ
2 / 8

職探し

しおりを挟む


衝動のままに屋敷を飛び出した私だったが、町にきてすぐあることに気づいた。


「お金がない…」


このままだと今夜の宿さえ泊まれない。
今身に付けていて売れそうなもの…
目に留まったのは、ブレスレットと首飾り。
これならきっと、高値がつくはず。


『ぜひ君に身につけてほしい。』


でもこれは…
結婚するときに夫シークからもらったものだった。
あの時は私も舞い上がって彼との結婚生活に夢を抱いていたっけ…

まぁ、実際は理想とはかけ離れたものだったけど。
そういえばこれ、夫から最初で最後にもらったプレゼントだったわ。

でももう離婚したんだから、私には必要ない。

…のはずなのに、どうしてこんなに躊躇してしまうの。
早く売ってお金にしないと、決意が揺らいでしまう。

私は未練を断ちきるように足早に質屋へと向かった。


────────


ブレスレットと首飾りは予想通り高く売れた。
これで当分は生活ができる。

私は早速今夜泊まる宿を探すことにした。
夫シークからのプレゼントを換金して、少し吹っ切れた。
すぐお金に換えることができる、そんなものに今まで固執していた自分に虚しさを覚えた。
私はモノよりも心が欲しかったんだ。

あー、もう。
ネガティブに過去のことを振り返ってたってなんにもならない。

これからは私、過去を振り返らずに強く生きなきゃ。
弱ってたって仕方ない。
当分のお金はあるけど、これからもここで生きるなら職を探さないと。
それに宿暮らしじゃなくて自分の家が持ちたいわ。

宿を探したあと、職を見つけにいこう。
うんと稼いで大きな家を建ててやるわ。





『娼婦募集中』


宿を見つけてから街中を散策するとそんなチラシを見つけた。


『高給、住み込み』


ここにしよう。

娼婦…体を売るのが仕事、それが不安なわけじゃない。
怖くないと言ったら嘘だ。
だけど、私だってまだ若い女だ。
この体をもて余すくらいなら誰かに捧げて紛らわしたい。

それでお金も稼げるんだから一石二鳥。

チラシ通りに道を歩く。
少し治安の悪い辺りの路地の一角にその娼館はあった。


「すいません。
ここで働きたいんですけど…」


その建物の扉を開けるとオーナーらしき女性がいた。


「ふーん…」


そう言うとその女性は私をまじまじと見つめる。


「顔が良いから雇うわ。
明日から来なさい。」


「わ、かりました。
ありがとうございます。」


余りにも自分の想像と違って拍子抜けしてしまった。
もっとなんというか、ちゃんと面接するものだと思っていた。
まぁ、でも良かった。

明日、ね。
職が見つかったことで嬉しい気持ち、そして娼婦としてうまく働けるのかという不安が混ざった気持ちになる。

綺麗な夕焼けが私を包む。

明日から頑張ろう、私はそんな空を仰ぎながら自らを鼓舞した。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

白い結婚はそちらが言い出したことですわ

来住野つかさ
恋愛
サリーは怒っていた。今日は幼馴染で喧嘩ばかりのスコットとの結婚式だったが、あろうことかパーティでスコットの友人たちが「白い結婚にするって言ってたよな?」「奥さんのこと色気ないとかさ」と騒ぎながら話している。スコットがその気なら喧嘩買うわよ! 白い結婚上等よ! 許せん! これから舌戦だ!!

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

処理中です...