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職探し
しおりを挟む衝動のままに屋敷を飛び出した私だったが、町にきてすぐあることに気づいた。
「お金がない…」
このままだと今夜の宿さえ泊まれない。
今身に付けていて売れそうなもの…
目に留まったのは、ブレスレットと首飾り。
これならきっと、高値がつくはず。
『ぜひ君に身につけてほしい。』
でもこれは…
結婚するときに夫シークからもらったものだった。
あの時は私も舞い上がって彼との結婚生活に夢を抱いていたっけ…
まぁ、実際は理想とはかけ離れたものだったけど。
そういえばこれ、夫から最初で最後にもらったプレゼントだったわ。
でももう離婚したんだから、私には必要ない。
…のはずなのに、どうしてこんなに躊躇してしまうの。
早く売ってお金にしないと、決意が揺らいでしまう。
私は未練を断ちきるように足早に質屋へと向かった。
────────
ブレスレットと首飾りは予想通り高く売れた。
これで当分は生活ができる。
私は早速今夜泊まる宿を探すことにした。
夫シークからのプレゼントを換金して、少し吹っ切れた。
すぐお金に換えることができる、そんなものに今まで固執していた自分に虚しさを覚えた。
私はモノよりも心が欲しかったんだ。
あー、もう。
ネガティブに過去のことを振り返ってたってなんにもならない。
これからは私、過去を振り返らずに強く生きなきゃ。
弱ってたって仕方ない。
当分のお金はあるけど、これからもここで生きるなら職を探さないと。
それに宿暮らしじゃなくて自分の家が持ちたいわ。
宿を探したあと、職を見つけにいこう。
うんと稼いで大きな家を建ててやるわ。
…
『娼婦募集中』
宿を見つけてから街中を散策するとそんなチラシを見つけた。
『高給、住み込み』
ここにしよう。
娼婦…体を売るのが仕事、それが不安なわけじゃない。
怖くないと言ったら嘘だ。
だけど、私だってまだ若い女だ。
この体をもて余すくらいなら誰かに捧げて紛らわしたい。
それでお金も稼げるんだから一石二鳥。
チラシ通りに道を歩く。
少し治安の悪い辺りの路地の一角にその娼館はあった。
「すいません。
ここで働きたいんですけど…」
その建物の扉を開けるとオーナーらしき女性がいた。
「ふーん…」
そう言うとその女性は私をまじまじと見つめる。
「顔が良いから雇うわ。
明日から来なさい。」
「わ、かりました。
ありがとうございます。」
余りにも自分の想像と違って拍子抜けしてしまった。
もっとなんというか、ちゃんと面接するものだと思っていた。
まぁ、でも良かった。
明日、ね。
職が見つかったことで嬉しい気持ち、そして娼婦としてうまく働けるのかという不安が混ざった気持ちになる。
綺麗な夕焼けが私を包む。
明日から頑張ろう、私はそんな空を仰ぎながら自らを鼓舞した。
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