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本音
しおりを挟む「どうしてですか…!」
帰りの馬車の中で私はお父様に強く訴えた。
「レジーナも分かっているだろう。
あそこで反論して陛下の怒りでも買ったら今度は娘まで理不尽な目に遭ってしまう。
そんなのもっと耐えられない。」
お父様の悲しそうな表情に私は何も言えなかった。
ーーーーーーーーーー
「レジーナ!」
屋敷へ戻ると何故かエリック皇太子がいた。
「…」
私は疑問を言う気力もなく無視することにした。
「レジーナ!」
「君、今は娘も私も話す気力がないんだ。
帰ってくれ。」
私の代わりにお父様が言った。
「嫌です。
僕がレジーナを支えます。
お義父様、僕に娘さんを任せて頂けませんか?」
なに言ってるのこの皇太子。
「無理に決まってるだろう。
なんで見ず知らずの君に 娘を預けなくてはいけない!」
お父様が感情的になって怒鳴る。
お父様の怒鳴る姿を初めて見た私は動揺した。
「申し遅れました。
僕はラザール皇国の皇太子で、つい先日 娘さんに求婚させて頂いた者です。」
なんなのよ この人。
この人も空気が読めないわけ?
「君があの…
そうか、分かった。
その熱意に応じて娘を預ける。
今は僕も娘を守ってやる精神状態ではない。
父親の代わりに娘を頼む。」
お父様はそう言って許可をする。
なんでそうなるの?
そんなことを思う私の手を強引に引きながら皇太子は庭の方へと歩く。
私はもう抵抗する力もなくズルズルとついていった。
ーーーーーーーーー
「レジーナ、話を聞かせて。」
エリック皇太子にそう聞かれ私は首を横に振った。
「何故 貴方に話さなければならないのですか。
もう放っておいてください。
貴方に構ってる余裕が私にはありません。」
そして私はそうハッキリ断った。
「構わなくていいよ。
君のありのままが見たい。
取り繕わなくていいから僕に話してくれないか。」
取り繕わなくていい?
レジーナは自分の理性が崩れる音がした。
「じゃあ言いますけど。
陛下は最低です。
私の婚約者も最低です。
親子揃ってクズ。
浮気相手もクズ。
私は今まで婚約者が浮気しようが構いませんでした。
だってそれは当然のことだから。
だけど…!
まさかそのせいで私のお母様が死ぬなんて思いもしなかった…!
もう私…この世界が嫌いです。
私のせいで…」
レジーナは皇太子に堪えていた本音をぶつける。
これで幻滅されてもいい。
そんな思いで話していると突然 皇太子に抱き締められる。
「は…?」
何がなんだか分からなくなる。
今 私、皇太子に抱き締められてる?
戸惑う様子のレジーナに皇太子はこう言った。
「嬉しい。
もっと僕に本音を話してよ。
君の弱いところを僕が守ってあげる。」
そう言われたレジーナの目に涙が浮かんだ。
…いいの?
幻滅しない?
守ってくれる?
レジーナの張り詰めていた気が緩まる。
するとレジーナの目からどんどん涙が溢れてくる。
それからレジーナは皇太子の胸の中で涙が枯れるまで泣いた。
こんなに泣いたのは初めてだった。
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