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隣国
しおりを挟む追放された私は、馬車で1日かけて隣国へとやって来た。
実は隣国は初めてで緊張しているところだが、恐らく顔には出ていないので誰も気づかないだろう。
ナタリーがやって来てから十数年、私が悟りすぎて退化してしまった部分がある。
それは表情だ。
あの国で自分を守るために身につけた無表情という仮面、いつしか自然に笑うこともできないまでになってしまった。
これから隣国で笑ったり楽しんだり、今までできなかった人々に好かれるという経験を出きるだろうかという不安がよぎる。
新しい生活をスタートさせるのだから、人間関係の構築は大事だ。
当分の間生きていけるお金はあるが、宿にこもりきりでは人との交流もないだろう。
追放された私に舞い降りた人生の転機、しっかりものにしようじゃない。
──────
国境から少しのところにある町に着いた。
どこに住むかは分からないが、一旦ここで夜を明かそう。
馬車から降りて真っ先に向かったのは人々で賑わいのある市場。
先ほどまでは食欲が沸かなかった私だったが、馬車を降りると漂ってくる美味しそうな匂いに途端に食欲が戻ってくる。
銀行に行くのは後回しで今はお腹を満たしていこう。
「うま…」
「それは嬉しい、ほらおまけ!」
「ありがとうございます。」
美味しい焼きたて肉を買ったら優しいおじさんにさらにおまけしてもらえた。
お腹が空いてる私にとったらこんなのペロリ。
おまけを食べてもまだ入る余地がありそうなので他の屋台に…
「ちょっとそこの君…」
他の屋台に行こうとした矢先、突然誰かに呼び止められる。
「…はい?」
一体誰かしら。
「もしかして貴女は、公爵令嬢のアナ様ではないですか?」
私は目の前の端整な顔立ちの青年をじっと見る。
全く知らない人だわ。
それなのにどうして私のことを知っているの?
「そうですけど…」
「やっぱり!良かった。
実は私、貴女のことを探していたんです。」
「どういうことですか?」
なぜ私を探しているのかしら。
もしかして、私が国外追放になったことと関係しているのかしら。
「アナ様に会いたいという方がおります。
ぜひ、その方に会っていただけませんか?」
────────
町の中心から少し離れた所にある一軒の建物に連れてこられた私は、青年に促されるままに建物の扉を開けた。
すると扉の先には金髪碧眼の美青年がいた。
「…」
「…」
入ってきてすぐこの空間を沈黙が支配する。
話しかけようにも、何故か私の顔を凝視したまま動かない美青年。
「あの…」
堪えかねた私はその美青年に声をかけた。
「美しい…」
「…ん?」
「やはり貴女は美しい!」
一体、どういうこと?
私は困惑を隠せなかった。
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