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出会い

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「えっと…どういうことですか?」


私は思わず、目の前の美青年に疑問をなげかける。


「王子!
興奮なさっている場合ではございませんよ。
アナ様が困惑されております。」


王子?
先ほどの青年の言葉に私はますます混乱した。


「そういえば自己紹介がまだでしたね。
アナ令嬢、僕はミゲルと申します。」


ミゲルって誰…?


「アナ様、この方はこの国の第一王子です。」


付け足すように言った青年の言葉に私は驚愕した。
この国の、王子?
えっと…


「私が、何か悪いことでもしたのでしょうか?」


私は皇太子の婚約者だったけれど、社交界に出ることは全くなかった。
何故なら彼と一緒に社交界に出席していたのは妹のナタリーだったから。

だからこの王子とも面識などあるはずなかった。
隣国の王子が私に用事?

もしかして私、知らぬまに何か犯罪を?


「それは誤解させてしまいました。
そうではなく、僕は貴女に好意を抱いています。
貴女が追放されてこの国にやってくるという情報を聞き、いてもたってもいられず参りました。」


「失礼ですけど、私はミゲル様と面識がございましたか?」


そんな好意を抱かれるほどの面識に心当たりがない。



「残念ながらありません。
僕が一方的に貴女を存じておりました。」


やはり面識はなかった。
でも…


「私のことをどこで知ったんですか?」


「…編み物をされていますよね?」


編み物、は確かにしている。
いつでも一人で生きていけるように、編み物を売ってお金を貯蓄していたから。


「実は私の姉が貴女の編み物の大ファンでして…それがきっかけなんです。」


ミゲル王子の御姉様が私の編み物の大ファン?
この国の王女様が…?
私の編み物はこの国では販売してないはずなのだけど…


「姉がお忍びでそちらの国に行ったときに市場で貴女の編み物を見つけたらしく…」


なるほど。
でも…


「そんな、おそれ多いですわ。
まさか王女様が私の編み物を購入されていたなんて。
でもそれ本当に私の編み物ですか?
人違いでは…」


「人違いではありません。
姉から、僕に制作者を探してほしいと頼まれまして秘密裏に探させたんです。
そしたらその制作者が貴女だと分かりました。
今度は逆に僕が、編み物を販売している公爵令嬢に興味を持って貴女を調べていくうちに好きになっていたのです。」


私のことを好き?
私は頬に血が集まるのを感じた。

こんな風に告白された経験は今までになかった。
最初は人違いだと思って平常心でいられたけれど、王子の真剣な眼差しにこの話が嘘ではないと思った。


「ありがとうございます、そんな風に思って頂けて…でも私は追放された身でしてミゲル様の気持ちに応えることはできません。」


万が一この国の王族に嫁ぐとなった際に私が追放されたという過去は問題になるだろう。
第一王子だから国王になる可能性が高い。
そうなれば私の元婚約者やナタリーと社交界で顔を会わせる機会がないとも限らない。

私はもうあの人達と会いたいと思わない。
だから王子の気持ちに応えるわけにはいかない。
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