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【ミゲルside①】

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『ミゲル王子、わたし貴方ことが…好きです。』


先ほどのあの言葉。
あのあとすぐ意識がなくなったアナを病院へと連れていった。
治療中の彼女を待っている間、心配が勝ってスルーしていた先ほどの言葉がよみがえる。

途端に鼓動が早くなる。
やっと、両思いになれた。

きっかけは姉からの依頼だった。
まさか姉が探していた縫い物職人が、隣国の公爵令嬢だったのには驚きを隠せなかった。
それから彼女に興味をもって調べていくと色々なことが分かった。

彼女は、公爵令嬢でありながら苦労人だった。
両親にあまり可愛がられて育ったわけではなかった。
両親の愛情は養子である妹に全て注がれていた。

最初はそんな境遇に同情した。
それなら、もっと何か別の一面があるだろう。
僕はそう思っていた。

将来、隣国の皇后になる人物を知っておかなければいけない。
僕は彼女の身辺調査へと乗り出した。
しかし何一つボロが出なかった。

彼女の噂の一つに『出来の悪い皇太子の婚約者』というものがあった。
その噂の真意は、彼女が学問をできないというものからきていた。

しかしよく調べてみると、驚くべき事実が分かった。
テスト中の彼女の回答を偵察させた。
テスト結果はほぼ満点で、成績優秀だった。
しかし、学園で掲示される点数上位表に彼女の名前はなかった。

反対に彼女と同じ点数で、義理の妹ナタリーの名があった。

実は学園の教師がアナとナタリーの答案用紙を意図的にすり替えていた。
そしてその裏には、2人の両親が絡んでいた。

おそらく、アナもそのことに気付いていた。
だけどなにもしなかった。
まるで当たり前というような態度だった、そう偵察者から聞いたとき私は興味を持った。

どうして彼女はこんなにも強いのか。
こんな酷い境遇にいるのに、どうして無表情を貫くのか。
いや、彼女が無表情を貫くまでにどんな辛い日々を経験したのか…

調べれば調べるほど彼女が気になっていた。
そして次第にアナを守りたいと思うようになった。

でも彼女は隣国の次期皇后、諦めなくてはならない葛藤もあった。
そんな時、チャンスが舞い降りた。
どうやら次期国王である婚約者ハンクに追放されたらしい。

理由は、予想がついた。
きっとアナの義理の妹に絆されたんだろう、と。

私にとっては大チャンスだった。
追放された彼女が隣国に来た情報を聞き彼女のいる町に急いだ。

求婚は断られてしまったが、諦めるわけなかった。
それからは時間が開けばアナの元に出向いた。

最初は無表情に突き放していたアナも、次第に心を開いて笑顔を見せることが増えた。
私はそんな彼女の態度の変化に嬉しくなった。
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