金色と漆黒

雨後乃筍

文字の大きさ
2 / 6

波乱と退屈

しおりを挟む
 夏美は一瞬ためらった。

「あの、私…」

「いーじゃん。つまんなそうな顔してるし、今日は飲んで忘れよ。ほら、これ」

 冬香は、焼酎パックを掲げて笑った。爪のマニキュアは剥がれかけていた。

 その笑顔は、太陽の光のように眩しく光っていた。

 夏美は、普段なら絶対しないであろう行動をとった。

 少し座る位置をずらし、この女性のために、隣を空けたのだった。

 夏美の目の前に、見たことのない「自由」の扉を提示したように感じられた。

 夜風が少しだけ熱を冷ます。

 冬香は夏美の隣にドカッと座ると、紙パックの焼酎をぐーっと飲みだした。

「夜になってもまだまだ暑いねー、あ、私冬香って言うの、春夏秋冬の冬に、香りね」

 夏美は、自分も名乗ろうか躊躇した。

「あ、あの私は‥」

「あ、いーのよ、無理しなくて。こんな初対面の人に個人情報教えたくないもんね、だから、おねーさんって呼ぶね」

 夏美はなにも言えず、うなずいただけだった。

「おねーさんが、つまんなそうに公園のベンチで飲んでたからさ。ほら物騒じゃん?私もちょうど飲みたい気分だったし、ね?」

 冬香は、弾けるような笑顔で言ってきた。

 いいな、この人は。きっとつまらない悩みなんてなくて、人生楽しいんだろうな。

「私さ、今日、日本に帰ってきたとこ。だから帰国のお祝いしたくてさ。おねーさんがここにいてくれてラッキーだったってわけ。だって一人で祝杯なんてありえないでしょ?」

 冬香は軽く自分の持っていた焼酎パックを掲げてみせた。

 夏美はつい笑ってしまった。

「焼酎で祝杯って、ちょっと合わないですね?」

「そお?だって安かったし。度数も高いし」

 二人は笑いあった。

「どこか海外に行ってたんですか?」

「そ、18ぐらいの時からね。もう9年ぐらいになるかな」

 18歳で海外!夏美は驚いた。自分が大学に入学したころに、この人は海外に行っていたんだ。

「18歳から海外って、留学とかですか?」

「ぜーんぜん、私高校もまともに行ってないよ」

「え?」

「日本から逃げ出したのさ。身一つでね」

 夏美は、この金髪で輝いている女性の人生に興味を持った。

 一体どんな人生を送ってきたのだろう。

 夏美が夢見た波乱に満ちた人生を想像した。

 だが、冬香の送ってきた人生は夏美の想像を超えた波乱に満ちていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...