1 / 4
1話 あいつは強い
しおりを挟む
彼のことを皆は最強と言う。僕にはその言葉はよく分からなかった。何故なら彼は弱いからだ。最強なんて言葉は似合わない程に弱く、脆く、儚い。そんな彼はまた栄誉あることを成し遂げてしまった。
街の人達はお祭り騒ぎで、彼を誉め称える。彼は困りながらも笑みを浮かべていた。僕は街の人も彼の笑みも気持ちが悪いもので仕方がなかった。依頼された仕事が終わり、帰る度にお祭り騒ぎだ。街の人達は彼が戦ってるところなんて、見たこともないのに…どうしてあそこまで騒げるのだろうか?疲れた彼は休みたいのに酒を呑まされ、自分達の娘を饒舌に紹介する。
僕はそんな街の人達が大嫌いだ。
次の日だ。急に街に魔物が襲ってきた。誰しもが安心している。最強の彼がいるからだ。誰も恐怖なんてしなかった。自分達は何もしないのにだ。
「逃げよう。僕達はあの魔物と戦うには弱すぎる」
「街の人達を先に逃がす。俺が時間を稼ぐから、お前は街の人を!!」
十分に休めてない彼に魔物は殺気を放ち、飛び込んできた。街の人達は僕の言葉を無視して応援をする。彼が勝つことを信じているのだろう。魔物の恐怖心よりも彼の信仰心の方が高いのか…逃げようと一切しない。
街の人達は知らない。逃げない君達が攻撃の邪魔になっていることを…彼の足枷になっていることを知らない。
「頑張れ!」「負けるな!」
戦闘中の彼に投げかけられる無責任な言葉にどちらが魔物なのか分からなくなる。避難誘導を諦めた僕は彼に回復の呪文を唱える。
戦闘が長引くにつれて、徐々に人が減っていった。信じた者ですら最後まで貫き通せないなんて、本当に身勝手な人達だ。なのに、彼はどうして、そんな大きな背を見せて護るのだろう。
_________________________
___________
__
彼は護り切った。そして、死んだ。相討ちである。僕がどんな魔術をかけても生き返ることはなかった。
彼が死ぬ程の価値はあったのだろうか。なぜ街のギルドの人間は誰一人現れなかったのだろうか。
「どうして…どうして、彼は弱いのに誰も助けてくれなかったんだっ!!!!」
戦闘で荒れた地で、僕は独り叫んだ。拳が血だらけになるまで地面を殴り続けた。大嫌いな奴らは助かって、彼は死んだ。そして、奴らは戦死した彼を弄ぶように英雄やら栄誉やらと騒ぐのだろう。彼を死なせた奴らを絶対に許さない。
街の人達を全員は覚えてない。だが、彼ら全てに共通することがある。人間と言うことだ。
僕の全てを懸けて殺してやる。彼が助ける価値もなかったその安い命を僕が殺してやる。そうだ。魔術で魔物を使役しよう。これで早く多く人間が殺せる。
「待っててね。すぐに終わらせてあげるさ」
安らかに眠る彼の頬を優しく撫でて、誓った。
街の人達はお祭り騒ぎで、彼を誉め称える。彼は困りながらも笑みを浮かべていた。僕は街の人も彼の笑みも気持ちが悪いもので仕方がなかった。依頼された仕事が終わり、帰る度にお祭り騒ぎだ。街の人達は彼が戦ってるところなんて、見たこともないのに…どうしてあそこまで騒げるのだろうか?疲れた彼は休みたいのに酒を呑まされ、自分達の娘を饒舌に紹介する。
僕はそんな街の人達が大嫌いだ。
次の日だ。急に街に魔物が襲ってきた。誰しもが安心している。最強の彼がいるからだ。誰も恐怖なんてしなかった。自分達は何もしないのにだ。
「逃げよう。僕達はあの魔物と戦うには弱すぎる」
「街の人達を先に逃がす。俺が時間を稼ぐから、お前は街の人を!!」
十分に休めてない彼に魔物は殺気を放ち、飛び込んできた。街の人達は僕の言葉を無視して応援をする。彼が勝つことを信じているのだろう。魔物の恐怖心よりも彼の信仰心の方が高いのか…逃げようと一切しない。
街の人達は知らない。逃げない君達が攻撃の邪魔になっていることを…彼の足枷になっていることを知らない。
「頑張れ!」「負けるな!」
戦闘中の彼に投げかけられる無責任な言葉にどちらが魔物なのか分からなくなる。避難誘導を諦めた僕は彼に回復の呪文を唱える。
戦闘が長引くにつれて、徐々に人が減っていった。信じた者ですら最後まで貫き通せないなんて、本当に身勝手な人達だ。なのに、彼はどうして、そんな大きな背を見せて護るのだろう。
_________________________
___________
__
彼は護り切った。そして、死んだ。相討ちである。僕がどんな魔術をかけても生き返ることはなかった。
彼が死ぬ程の価値はあったのだろうか。なぜ街のギルドの人間は誰一人現れなかったのだろうか。
「どうして…どうして、彼は弱いのに誰も助けてくれなかったんだっ!!!!」
戦闘で荒れた地で、僕は独り叫んだ。拳が血だらけになるまで地面を殴り続けた。大嫌いな奴らは助かって、彼は死んだ。そして、奴らは戦死した彼を弄ぶように英雄やら栄誉やらと騒ぐのだろう。彼を死なせた奴らを絶対に許さない。
街の人達を全員は覚えてない。だが、彼ら全てに共通することがある。人間と言うことだ。
僕の全てを懸けて殺してやる。彼が助ける価値もなかったその安い命を僕が殺してやる。そうだ。魔術で魔物を使役しよう。これで早く多く人間が殺せる。
「待っててね。すぐに終わらせてあげるさ」
安らかに眠る彼の頬を優しく撫でて、誓った。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。
あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる