短き者達

雨彩 色時

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生死

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「そんな顔してると家族と再会した時、嫌われるぜ?」
「今日…今日は何人殺した?」
「8人だ。俺はしっかり覚えている。8人を俺はこの手で殺した。俺の意思で殺したよ」


 僕の顔色がひどかったせいか声をかけられた。そんな彼に僕は問うと即答する。僕は3人しか殺していない。たったの数時間で3人である。僕らは国の為になんて大義名分を得て、何とか持ち堪えているはずだった。
 月日が経つにつれて自害する者も出てきている。僕も明日するんじゃないかと思う。そんな時はいつも家族の写真を目に焼き付けるのだ。


「やれやれ。仲間がこんなんじゃこの先が不安だな」
「言葉を選べよ。お前みたいに命を軽くみている奴とは違うんだ」
「私が? 貴方達こそ命を軽くみている。殺さなければ殺される。私達が死ねば国が仲間が家族が殺されるんだ。私達は殺人鬼か? 違う。軍人である。殺す度に心が蝕むのなら、自害をすることを」
「もういい黙れっ!!」

 言い終わる前に胸倉を掴まれる。二人はお互いに睨み合う。周りの皆は自身の手を見つめていた。しかし、言っていることは正しいのかも知れない。僕はいつも銃口を向ける度に…殺す度に…意味を探している。その一瞬の迷いで何度も死にかけた。


「命令をすれば少しはその安い気持ちも和らぐか? なら、私が毎日何人か命令してやろう。貴様が殺した分も私が背負ってやる。貴様はせいぜい無責任に人殺しでもしてろ!!」
「テメェ…ふざけんなよ!!」
「はっ! 何とか言ってみろっ!! 私を責めること殴ることも他人任せか!?」

 殴られた頬を赤くして、口内が切れて血を流しながら僕に叫んだ。


「私達は命をイタズラに奪ってはいない! そうだろ!? 自身の快楽で殺す為に戦場に来たのなら私が撃ち殺してやる!! でも、そうじゃない。そうじゃないだろ!?」

 いつも余裕の笑みを浮かべる彼が自身の…他者の生死に一番飲み込まれそうになっていたのかも知れない。


「守る為じゃないか…。私達の全てを守る為に殺すしか方法が見つからなかったんだ。人間は無力だから仕方ないんだよ…」
「…すまなかった」

 胸倉を掴んだ手はゆっくりと離れた。もう一人はそれと同時に力が抜けたように膝を地に着ける。そこに笑みは一切見えない。彼もこんな表情をするのだと僕は思った。何度も同じ戦地で生き抜いたのに知らなかったのだ。


「1人は降参した。だが、私は殺した。1人は泣きながら命乞いをした。だが、私は殺した。1人はまだ幼い少年兵だった。だが…だが、私はっ!!!」

 後は泣き声混じりで言葉になってなかった。僕はそんな彼を見て、身に付けている拳銃とナイフが一気に重く感じた。彼はこんな精神状態を日々感じていたのだろうか。


 翌日、彼はまたいつもの様に笑みを作っていた。誰とも話さずに戦地へ向かう背中は表情とは裏腹にとても哀しいモノだった。
 僕らは今日…何人殺すのだろう。
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