短き者達

雨彩 色時

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 俺は料理が得意だ。幼い頃から興味があったし、母の手伝いをして楽しさを知る。母は手伝う行為に褒めるし、俺が手伝う料理は必ず美味しいと笑顔で褒める。
 その笑顔を絶やさない為にも学年が上がるにつれて、スーパーも一緒に行って、何を作るか母と喋るのが大好きだった。高校生にもなれば、母の代わりに料理をする日も多くなる。少しでも負担が減れば良いと思いの行動だ。


「今日の晩飯は俺が作るから」
「じゃあ、今日の仕事は頑張らなくちゃね」

 本物の笑顔を知ってる俺には仕事へ行く母の笑顔は、苦労が見受けられる。俺は母が大好きなカレーを作ることにした。しかし、母はいつもの時間に帰って来ない。
 一人で待つ。今日の隠し味で、より美味しくなった。母なら味の変化に気付いて喜ぶはずだ。何か仕事でトラブルでもあったのだろうか。そんな中、着信音が部屋を支配した。


「もしもし?」

 俺が声を発すると見知らぬ男性の声がする。あんまり何を言っているのか、理解は出来なかったし、したくなった。場所を指定されてた病院の一室に入る。誰だが分からないが白い布で顔を隠されている。

「ご確認下さい」


 布が捲られて、俺は顔を目視する。そして、即答した。

「知りません。家に帰ります。母が待っているので」


 違う。似てるだけで違う。カレーを二人分作ってるんだから、そろそろ帰らないといけない。ドアノブを手にかけると肩を掴まれる。振り向くと知らない奴だ。

「引き止めてすいません。本当に違いますか?」
「はい。違います。母が帰ってきたら、カレー温めないといけないので、そろそろ帰ります」
「そのカレー……。一人で食べても美味しくないですよ」


 人を初めて殴った。悪い事なのは知っている。それは母から教わった事だ。殴った後、涙が出てくる。まだ俺は母のを聞いてない。初めての隠し味で、自信作のカレーを独りで食べろだなんて……。隠し味? 作った俺が食べても、それは隠れてない。
 事後処理を済ませて、深夜に家へ帰る。カレーを温め直さないといけない。帰り道に女性が一人、夜道に座り込んでいた。

「あの……」
「何?」


 いつもなら見て見ぬ振りをして通り過ぎるはずだった。そんな俺が声を掛ける。

「カレー……作り過ぎちゃって。一緒に食べてくれると嬉しいです」
「美味しいの?」
「隠し味に自信があります」


 お互い真っ赤に目が腫れていた。そんな二人が笑顔でカレーを食べに歩く。知らない仲も、気付く味あり。
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