短き者達

雨彩 色時

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刻め

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 彼は死んだ。いや、殺された。
 みんな口を揃えて言う。

「あんなにいつも笑顔で明るかったのに」
「クラスでは、人気者でした」
「いつもみんなの中心にいました」


 僕は知ってる。彼はいつも明るい人を演じていた。人気者であると自覚していたから、人気者も演じていた。みんなが名前を出すから、彼が中心となっていた。

「なぁ、俺さ。明日死のうと思う」
「そっか。どうやって?」
「…っ」


 彼は僕の質問には答えず、クスッと笑う。

「お前だけだよ。そう言う風に返してくるの」
「そうなの?」
「他の人なら、何があったの?とか相談乗るよ?とかだろうね」
「聞いてないんじゃん。決めつけは、ダメだよ」


 僕がそう言うと彼は立ち上がって、背伸びをする。今日は天気がやけに良い。

「飛び降りかなー!やっぱり!!」
「じゃあ、高い場所で頭からいかなきゃね」
「確かに!俺、身体丈夫だからな」


 彼がの理由は他にもある。運動が得意で勉強も出来るからだ。
 彼と言う存在は、みんなにとって憧れなのだろう。

「お前なら、どうやって死ぬ?」
「んー、切腹かな」
「え、マジかよ…」
「楽に自殺したくないからね」
「何で?」
「これだけ苦しい死に方をするくらいには、人生がクソだって、メッセージ性を与えたいから」


 彼は「なるほど!」と納得する。引かないのは彼だからだろう。でも、これは昔から僕は決めていた。
 楽に死ぬなんて謎のままに人生終わらせたくない。死んでも尚、生きてる奴等に刻み込んでやるんだ。
 僕を傷付けたことを一生忘れない為にも。だから、今生きてるって事は、傷付いてないってことで気持ちがだいぶ楽になる。

「そうかぁ…なかなか気合いがいる死に方だな」


 次の日、彼は腹から臓物を垂れ流して死んだ。刺身包丁を使用。
 彼とは学校の屋上でしか話さなかった。
 彼の死に多くの人が泣いている。
 多くの人が、何故と死人に問いている。
 多くの人が、どうしてと唖然としている。

 僕はその何者でも無かった。誰が彼をこんなにも苦しめたのだろうと見渡したのだ。死に場所は屋上。
 屋上なのに飛び降りを選ばずに切腹なんて、彼らしい。第一発見者は僕だ。

 彼は死んでもなお、包丁を真っ赤な両手で握り締めていた。一人の人間から、こんなにも血が出るのかと驚いた。そして、表情は彼からは想像がつかないモノ。
 あの笑顔の時にもう彼と言う存在は死んでいたのだろう。ある意味、この死で彼はみんなの心に生き続ける。


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