短き者達

雨彩 色時

文字の大きさ
57 / 58

愛の気霜

しおりを挟む
 僕には大好きな人がいる。多分、これは一目惚れなんだと思う。まだ接したことのない人に魅了されたのは初めてだ。
 あの人と離れている時間は息が浅くて、切なくて、会える時間が1秒でも多く欲しいと感じる。それが退屈な学校でも行きたいと思わせる程に。

「なんだー? お前ずっとあの子見てんじゃん」
「あれだよ。えーっと…一目惚れってヤツだよ」
「なるほどなぁ。でも、そんな見過ぎると実るモノも実らないぞ」


 しかし、目で彼女を追ってしまう。どうしようもないくらいに。取り憑かれたかの様に。
 それなのに彼女とは目が合わない。当たり前だろう。彼女にとって僕は背景に過ぎない。僕が一方的に好きな人として見ているだけだ。そんな一度も名前を呼んだことない人物に僕は縛られている。

「ほら、そろそろ授業始まるぞ! 早く食って教室戻らないと」


 見惚れているとあっという間に時間が経っていた。友人はもう食べ終えており、僕を急かす。彼女とは別々の教室だが、また学校のどこかで会えるだろう。

_____________
______
_


 僕は明日が来ることが狂う程に嬉しくて、明日が来ることが恐ろしい程に怖い。
 彼女との関係が時を経つと変化してしまう。そんな事を思いながら就寝することが、異常で日常になっている。しかし、この胸が苦しいことすらが尊いと感じてしまうのだ。
 そして、ついにが訪れる。

「あららー、あの子。彼氏が出来ちゃったな」
「…そう、だな」
「っま、元気出せって! 今日は食堂で俺が奢ってやるよ」


 男性と手を絡めて繋ぐ彼女。登校の道すら、あの2人にとっては思い出となる。2人が繋ぐあの手はきっと温かいのだろう。僕は冷えた両手を気霜きじもに当てて、温かくした。
 しかし、僕の心は冷え切っている。

 そこからはよく覚えてない。いつの間にか夜が来て、いつの間にか彼女を殺していた。
 僕は彼女の死体をを見つめながら自分自身の行いを思い出す。

_____________
______
_


「くっ…! くる…しい! や…め」


 馬乗りになって僕は彼女の首を両手で絞めている。初めて僕の顔を彼女はちゃんと見てくれた。僕の冷たい手は彼女の首から体温と命を削っていく。手が暖かく、心が満たされるのを感じる。

 嗚呼、彼女は苦しく荒く息をする。
 嗚呼、僕は力強く激しく息をする。

 お互いの気霜が混ざり合う。そして、この両手で全てを奪った後、彼女はパタリと動かなくなった。彼女の首元には、手形の痣を残す。

「今日は寒いな」


 あたたまった手でつめたい彼女に触れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...