二十歳の私たちは百合になる?

吉咲べに

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第1話 親友がめちゃくちゃ誘惑してくる

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 りっちゃんから突然のメッセージ。3分前。
『今から家行ってもいい?』
 今回は事前連絡ありか。予定もなかった気がするので、指を動かして偉そうなOKスタンプを送る。
『新幹線乗ってる? 今日は迎えにいく?』
 既読はすぐ付いた。

 19時。改札口にリュック1つ。もともと背が高いのに大きめのパーカーのせいか細く見える。
「みこちゃーん、やっと着いた」
「また急に来たね~」
 私は背伸びして、りっちゃんの髪をくしゃくしゃにした。かわいいボブの女の子。
「今日は華金よ。泊まってくよね?」
「華金って。死語じゃない? 知らんけど」
 ん、と差し出された手をつなぐとひんやりした。私の体温を移したいからぎゅっと握る。
「私も知らんけどー。コンビニとか寄る?」
「うん、パンツない」
 顔を盗み見て、感情を測る。今回も来た理由はよくわからない。あとで聞けたら聞くでちょうどいい。

 コンビニでパンツとアイスとお酒を買った。私たちはもう20歳になっていた。手をつないで空を見上げても、街の明かりばかりで何も見えない。夜でも明るいと思っていたのに、アパートの電気を付けるとやっぱり目がチカチカした。
「疲れたねー。お風呂先入る?」
「うんー」
 私は風呂にお湯を入れ始めた。
「私ご飯作るから、お湯たまったら入っちゃいな~」
 鍋に水を注いで、火にかける。今日はうどんにしよう。
「あー、みこちゃんと一緒に入る」
「え、一緒に…?」
「うん」
 一度火を止めて見つめあう。お風呂からじゃーとお湯のたまる様子が聞こえてくる。
「狭いよ…?」
「うんー」
 りっちゃん、ニコニコ。私もとりあえずニコニコ。
「入浴剤、入れる…? 洗濯機の横にあるのなんでも…」
 温泉には一緒に入ったことがある。女同士だし、りっちゃんはあまり気にしないタイプだとは思ってたけど、一緒に入りたいだなんて。普段はそういうこと言わないのに。私、脇毛生えっぱなしなのに。恋人いないのに剃るわけないし。りっちゃん来たの急だったし。りっちゃんのせい。
「あ! 洗濯してあるタオル1枚しかないわ」
「一緒に使えばモーマンタイ」
 はいはい。すべてりっちゃん様の言う通り。

 りっちゃんは痩せた感じがした。それから脇毛も生えていた。だけどそんなことは関係なしに、相変わらず体の線がきれいだった。指でなぞったらどんな心地だろう。痩せても太っても、りっちゃんにはその体がぴったり似合う。無意識に胸のふくらみに目をやって、意識的に目をそらした。友達を性的な目で見るんじゃない。
「みこちゃん、今おっぱい見てたでしょ」
「いや! 見てないし!」
「別に見てていいんだよ?」
 泡を流し終わったりっちゃんはわざわざ私の背中側にすべりこんだ。
「どうしたの、そこ狭いでしょ」
「寒いから」
 思わず体育座りをして小さくなった。後ろから抱きしめられるとさっきまで意識しないようにしていたふわりぺたりとしたものが当たった。どうしよう。
「どうしたのー、甘えん坊じゃん」
 りっちゃんがお腹をすりすりして、首筋に息を吹きかけてきた。ちょっと、エロすぎる…。私はいつも考えないようにしてるのに。
「私、みこちゃんとセックスしてみたいな」
 私はなぜかりっちゃんの手を腰から外して、ぎゅっと握った。
「つ、付き合ってないじゃん!!」
 まさか誘ってたの? いや、友達だし。てかまだ酒飲んでないよね?? 色々な感情が渦巻くけど、一口に言うと混乱している。
「じゃあ付き合お? みこちゃんは私のこと嫌い?」
「好きだけど、そういう好きかはわかんないかも…」
「私、みこちゃんのこと大好きだから付き合ってセックスしたい」
 りっちゃんは1番の友達で全部受け入れてくれる親友。漠然と幸せを願っていた。それが友情なのか愛情なのか、上手く線が引けなくて、だけど性欲をぶつけることはしたくなかった。りっちゃんが嫌な思いをしてしまわないように。
「へへ、恋人つなぎにしちゃうよお」
 りっちゃんのピンクのネイルがゆらめいて見えた。
「ねー、みこちゃん大好き。私の恋人になって」
 首筋にキスする音が狭い浴室に響く。
「んっ、ちょっと…」
「みこちゃん、鳥肌立ってるよ。ほんとかわい…え?」
「え、何?」
 鼻血だった。本物だ。本当に興奮すると鼻血が出るんだ。
「りっちゃんのバカ、さいあく! もうお風呂出る!」
「えーちょっとー、私わるくない…」
「わるい!!!」

 りっちゃんには罰として、夜ご飯を作らせた。ほとんど私が指示したけど。それから高級アイスもおごってもらうことにした。
「はい、あーん」
「うどんは絶対向いてないってば」
 鼻血でうやむやになったと思ったけど、りっちゃんは私を恋人にすることを諦めてないみたいだった。今もぴったり横にくっついて座っている。私が拒まないのをわかっているから。
「なんか恋人ぽいことしてみたいじゃんー、流されてよ」
「だから恋愛の好きかわからないんだもん」
「みこちゃん興奮して鼻血まで出しちゃったのに?」
「だってあんなにちゅーしたら、誰でもなるよ!」
 りっちゃんがいたずらっ子の顔になった。
「みこちゃんは誰でもいいんだ。誰でも鼻血出ちゃうんだ」
「うるさぁい」
 完全に相手のペースだ。エロから離れたい。目についたリモコンを手に取ってテレビをつける。
「今日は金曜ロードショーだから」
「はー、全年齢じゃん」
 全年齢で良い。エロから離れたい。なんでそんなに誘ってくるの。
「みこちゃん。私お酒飲みたい、買ったやつ」
「ヤケ酒だめです。今日は酒禁止」
「みこちゃん。なんか暑いから脱いでいい?」
「窓開けてあげるね」
 絶対防御。こぶし一つ分距離を開ける。
「みこちゃん」
「今度は何よ…」
 ゼロ距離のキス。
「やっぱりみこちゃん、かわいいね。ちなみにファーストキスだから」
「え?」
「私、恋人いたことないもん。みこちゃん一筋」
 ハグが温かくて、りっちゃんはいい匂いがした。
「下手な男より、私の方がみこちゃんを幸せにできる」
「元カレのこと?」
 私は数か月前まで男の人と付き合っていた。私はバイセクシャルで、男女関係なく好意を持つのが普通だった。だから彼の男友達にも嫉妬してしまった。私は、彼が男と浮気する可能性を捨てきれない。彼もバイセクシャルを隠してるかもしれない。受け入れてもらえなくても、気持ちを知ってほしくてカミングアウトした。キモいと、言われた。
「あれは、しょうがないよ…」
「しょうがなくない! あいつはみこちゃんのこと好きって言いながら、みこちゃんのことを大事にしなかった。わからなくても、突き放しちゃダメだった」
「なんでりっちゃんが怒るの…」
 りっちゃんの肩に鼻を埋めた。
「私が世界一幸せにする。みこちゃんと付き合えたら私も世界一幸せ。一緒に幸せになりたい」
 金曜ロードショーが始まったけど、見てる人はいなかった。今日は視聴率ゼロパーセント。心の中でワンコに謝る。もう何も考えられない。
「私も、幸せになりたい」
 頭を撫でられた。なんて優しい手なの。
「私の彼女超かわいい! 大好き!」
 くちびるとくちびるが触れ合った。りっちゃんのセカンドキスだった。
「窓閉めていいし、テレビも消していいよね?」
 私が黙ってうなずくと、りっちゃんはニコニコと立ち上がった。私はりっちゃんについていって、照れ隠しでりっちゃんのおしりを触った。ふわふわしていた。やばい、一滴も飲んでないのに酔ってるかも。幸せ酔い。
「みこちゃん、おしり派なの?」
「りっちゃんのおしりがかわいかったから…」
 本当はりっちゃんに触りたかっただけ。
「今日、えっちする…?」
「りっちゃん。顔真っ赤」
 私の顔も絶対に赤い。鼻血が出ませんように。りっちゃんを正面から抱きしめて、ぎりぎり肩に顎を乗せた。ふと気づく。
「爪、切ってない」
「爪?」
 爪を2週間近く切っていなかった。りっちゃんはずっと不思議そうにしている。
「爪が長いと、肌に傷つけちゃう。今日切って、えっちは明日にしよう?」
「そうなの? えっちしたことないから知らなかった」
 えっちしたことない。そうじゃん、りっちゃんは誰かと付き合うこと自体が初めてだったんだ。あんなに誘っといて。
「今日切って今日するのじゃだめなの?」
「それは…夜遅いし」
「まだ21時よ? しかも華金」
「ちゃんとしたいの、準備とか」
 正直すごく興奮しているし、性欲爆発しそう。自分からおあずけとか狂ってる。でも初めてならなおさら丁寧にした方がいい。私も女の子とは初めてだけど。私が男にやられて嫌だったことは絶対したくない。
「わかったよ」
 ちょっと不機嫌な顔。うーん、流されそう。
「りっちゃんのこと、大事にしたいの。ちゃんと準備して、りっちゃんの初めてが良い思い出になるようにしたい」
 とたんに顔がほころぶ。単純でかわいいかも。
「うれしい! みこちゃんの気持ちいいところいっぱい教えてね!」
「…ん? 私が受けなの?」
「受け…?」
 やっぱり今日はしなくて良かった。
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