ラジオの恋路-こいじ-

祝木田 吉可

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第5話:健吾の楽しみ

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それから1週間、男は、このFMラジオの夕方番組を通しで聞いてみることにした。そして、その中で男が気に入った月曜と金曜にメッセージを送ろうと決めた。

「ラジオネーム、何にしようかな」

(男は、ふと、自分のラジオネームを考える。すると、ある名前が思い浮かんだ。)

「ワイズマンか、良いかも。」

(男は、スマホのメモに自分のラジオネームを記した。)

「うん、なんか、しっくり来るかも。」

(男は、自分のラジオネームに納得して眠りについた。)


(翌日、三連休が終わり、またいつもの1週間が始まる。久しぶりに祝日休みを貰えた男は、三連休の使い方が分からず、どちらかといえば、悶々としていた。)

「やっと、平日だ。変に金を使わなくてすむから、やっぱり仕事あると助かる。」

(男は、意気揚々と職場に向かう。男の職場は、出雲の情報誌を編集している会社。職場に男が到着すると、その日の朝礼時に社長からの通達があった。)

「会社として、今後、7月から11月の間は、リモートを含めたフレックスタイムにしようと思う。今年の夏も災害級の暑さが予想されている。秋は台風の季節にもなる。そんな中、無理に出社させることは出来ないから。暑さが落ち着いたら、10時~15時の間、会社を開放するので、その時間で社内対応に充ててもらう。」

(社長からの報告に男以外の社員は拳握るほどに喜んでいた。)

「そんなにリモートが良いんだろうか?」

(男は、正直、リモートなくても良いと思っていた。在宅だと集中できないのを自覚していたから。)

「矢野くん、何をそんなにも困った顔してるの?リモート、嬉しくないの?」

(男が途方に暮れて突っ立っていると、声をかけたのが、大田サチ。男の指導係だった。)

「大田さん。僕、リモートって苦手で。家だと集中できる気がしなくて、どうしましょう。」

「矢野くん、リモートって、別に在宅って決まってるわけではないんだよ。」

「そうなんですか?」

「うん。ネットが繋がっていたら、どこでも出来る。図書館でも、カフェでも。もちろん、コワーキングスペースでも。」

「こ、こ、コワーキングスペース?」

「会社みたいだけど、そこに集まるのは、皆それぞれ違う会社の人、それぞれが自分の仕事に集中できる場所を提供している所のことだよ。ネットとセキュリティはもちろん、強力Wi-Fiとセキュリティで万全だし、電話や会議の出来る個室が用意されてたり、共有スペースあったり、自販機あったりして、会社の環境とあまり変わらないよ。」

「そんな施設があるんですね。」

(コワーキングスペースかぁ、そんな施設があるなんて、知らなかった。会社にいるみたいに仕事が出来るなんて、良いかも。)


その日から、リモートに向けての準備が始まった。

(サチと一緒に準備に取り掛かる。)

「週に1回は、会社に来て、持出禁止のタスクを会社でやることになってるんだ。」

「なるほど。」

「だから、スケジュール組む時に、最初にそのスケジュールから組むようにするの。矢野くんは、金曜日の11時~14時だね。」

「了解です。」

(男は、サチに言われたようにスケジュールに組み込んでいく。)

「それが組めたら、次は、これとこれを···」

「はい。」

(タスクとTODoリストを見える化しながらスケジュールに組んでいく。が、なんか、窮屈な気がしてならない。)

「これ、このスケジュール、大丈夫なんですか?」

「ん?なんで?」

「なんか、詰め詰めな気がしてならないような。」

「そうね。ちょっと多いかもね。取材とか、会議とかあるとを考えると、、、、。これだと、どうかな?」

「あ、これなら、大丈夫だと思います。」

「まぁ、逐一、私と情報の共有もするから、そのときにまた、スケジュールがきつかったら教えて。」

「はい、分かりました。」


16時。予定より早く業務が終わった男はデスクで帰る準備していた。そこに、社長の今岡史郎(いまおかしろう)が、やって来た。

「矢野くん、お疲れ様。今終わりかい。」

「今岡社長、お疲れ様です。はい、予定より早く終わりましたので、あとは、家に帰って、もう一度、整理しようかと思いまして。」

「そうか。あまり、無理するなよ。」

「お気遣い、ありがとうございます。」

「それで、矢野くんに、相談なんだが。」

「相談、ですか?」

「今度、2人が辞めることになって、1人は家業のため、もう一人は、独立なんだけど、この2人が持っている資格の人が、彼ら以外いなくてね、彼らの他に資格者がいるんだが、どうかな?」

「なんの、資格ですか?」

「衛生推進者と防災リーダーなんだ。どちらも講習で取得できるけど、どうかな?」

「私で良ければ、良いですよ。」

「ありがとう、助かるよ。これ、それぞれの講習の日にちだからね。講習日は出勤日にして良いからね。じゃあ、よろしく。」

「承知しました。」

(今岡社長は、男に、講習の案内を渡すと、社長室に戻って行った。)

(男は、講習の日程を確認した。)

「えっと、衛生推進者が、6月21日で、防災リーダーが6月28日と29日の2日間ね。」

(男は、予定を会社のスケジュールと自分のスケジュールに落とし込むと、自然とニヤけてしまった。)

「(21日と28日、どっちも金曜日だ。夕方のいずりんのラジオ、リアタイ出来るな。よしっ、せっかくリアタイ出来るなら、メッセージ送ってみようかな。)」

男の楽しみが一つ出来た。

-続く-

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