ラジオの恋路-こいじ-

祝木田 吉可

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第6話:ミカの想い

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「ありがとう、またね。ばいばい。」
(手を振りレジに向かう女に、男も手を振り返した。)
「やった!」
(女は、移動中、顔のニヤけが止まらなかった。顔のストレッチをしながら、それを誤魔化していた。)
「連絡先、交換してれば良かった。また、会えるかな。健吾くん。」
この日は、男と別れてからは、女は男のことを気にするようになった。

女は家に向かう道中、たまたま流れるカーラジオが気になった。
「時刻は17時を回りました。FMいずも夕方5時からの2時間は、ばんじましてインフォメーション、今日、月曜日は、私、TAMAKIが担当します。よろしくお願いします。」
(「これが、コミュニティFM。聴きやすいな。」)
そんなこと思いながら、ハンバーガーのドライブスルーに並んでいた。
「いらっしゃいませ、ご注文どうぞ。」
「チーズバーガー単品とホットコーヒー」
「お会計、560円です。前へどうぞ。」
(女は注文を終え、流れに乗って、会計を待つ。ラジオから流れてくるTAMAKIの声が、良い感じに渋くて、その渋さが包容力あって、優しさを感じる。)
「健吾くん、何してるんだろう。」
(女は、なぜだか、TAMAKIの声を聴くと男のこととリンクしてしまって、男のことで頭いっぱいになってしまっていた。)
「お会計、560円です。」
(ボーッとしてると、いつの間にか自分の順番になっていた。レジ店員の声かけで、ふと我に返る。)
「ごめんなさい、ICOCAで。」
「こちらにタッチお願いします。」
(「ピッ」とタッチ音を確認した店員がその場で商品を渡した。)
「こちら、商品になります。」
「ありがとうございます。」
(女は、商品を受け取ると窓を閉めて、走り出す。目的地、決めてないはずなのに、無意識に稲佐方面へ向かっていた。)
稲佐の浜に着いた女は、ラジオ聴きながらチーズバーガーを頬張った。食べ終わると、女は、不意に車から降りて、浜辺に降りた。誰もいない場所を探すと、海に向かって叫んだ。
「健吾くん、好きだ、バカー!」
無意識に叫んだ女は、叫び終わると急に恥ずかしくなり、その場から逃げるように車に戻った。
車に乗り込んで、辺りを見渡す。こんなの、誰かに見られるのは、恥ずかしくて堪らなくなった女は、急いで自宅に帰った。


翌日、女は職場で青山部長に呼ばれた。
「平野くん、ちょっといいかな?」
「はい。」
(女は「私、何かしたかな?」と疑心暗鬼になりながら、部長のデスクに向かった。)
「部長、なんでしょうか。」
「急に、呼び出してすまないな。」
「いえ。」
「平野くん、うちの会社の人数が増えたのは知っているかな。」
「はい。風の噂で聞いています。」
「うん。今年度、新入社員が中途も含めて5人増えたことで、衛生推進者と防災リーダーが一人いることになって、講習に行かなきゃいけないんだけど、平野くん、行ってくれない?」
「ちなみに、何で私ですか。」
「君、今、総務と会計を担当してるんでしょ。」
「はい。」
「本当は、防災安全担当を作らなきゃいけないんだけど、とりあえず、今のところは、総務担当している君にお願いしようと思ったんだよ。」
「分かりました。」
「助かるよ。これ、それぞれの案内だから、宜しくね。あと、講習の日は、出勤日扱いで良いからね。」
「はい。」
女は、予定を確認した。
「衛生推進者が6月21日、防災リーダーが6月28日と29日、と。」
女は案内に書かれてある日程を携帯のスケジュールにメモした。
-続く-
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