異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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三 坂井ミリはまだ知らない

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「あれ見てみろ。あの中にいる」
「どれ?」
「そこまでは知らん」
 ナユさんが足を止めたのは大型ショッピング施設の前だった。なんとなく近くのビルの影に身を隠して様子を伺う。
 今日に限って何かイベントでもしているのか、入り口に列ができている。
「さっきあんだけ派手に人死んでんだから今からでも避難指示とか出せないのかな」
「こうなったら無理だろ。もう見分けがつかない」
 ナユさんは眩しそうに目を細めてショッピング施設の入り口に伸びる列を見た。十代向けのファッションブランドが多く入った施設で、特に今日のその列に並んでるのは小学生とか中学生くらいの年代とその保護者らしき人々だ。
 今から起きるであろう事象を考えると、ロケーションとしてはかなり最悪だ。
 裏側の異世界人は食事として人類の血を吸うし寄生もする。目の前でそれをし始めるのを見たことがある。
 大抵それはうまく行かないんだけど、稀に成功することもあるらしい。身体の相性があるんだろう。上手に寄生されてしまうと、人類とほとんど見分けがつかなくなる。
 そうなると退治するのはとても厄介だ。見た目じゃわからないわけだから。それでも人類側としてはどうにかして見つけ出して殺さないといけない。そういう役目を押し付けられている。
 探す方法は二つしかない。裏側の異世界人は、人類への寄生が成功しても、言語を持たない。だから何があっても声を発しない。でも喋らない人間だって元々この世界には居る。
 もう一つの方法は、血液に移植されたナノマシンの中にある機能を使うこと。裏側の異世界人の気配を追うためのセンサーが存在するのだ。ただしナユさんのように血液の適合率が高い人間しかその機能を起動することはできない。要するに同じ改造を受けたとしても、活動には向き不向きがある。
 どちらにしても地道な仕事だ。このエリアを守るために配属されているけど、華々しいヒーローのようにはいかない。こっちとあっちの世界を繋ぐ次元の歪みを偶然観測できたときは別として、大抵の場合はさっきの死体のように、誰かが死んでからやっと、それを手がかりにして追いかけることになる。
「裏側の異世界人の気配ってどんなふうにわかんの?」
「……なんとなくだよ。お前、人間を見かけて『あれは人間だ』と感じるの理由が説明できるか? 見た目も動きも完璧に似せたロボットが隣に置いてあるとして」
「そもそも完璧に似てたら見分けつかないんじゃないかな、多分」
「そうだな。私も正直自分が間違っている可能性が怖い。だってこれ、生まれつき持ってた能力じゃないんだぜ」
「一人一人話しかけて確かめる?」
「ぶん殴って回った方が速いし確実だ」
「それは駄目」
「じゃあちょっと手を出せ」
「ん」
 ナユさんが逆光の中振り返っておれの方に手を伸ばした。
 要求された通り、おれも彼女に向かって手を伸ばす。
 と、そのとき肘から先で、骨と肉がねじ切れる音がした。
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