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繋がれた手
174.
しおりを挟むトイはいつだって望んでいなかった。
犯されることも、傷をつけられることも、快楽を与えられることも。それを責められるなんて理不尽だ。
孤児として生活していたころもままならない目には合っていた。
けれどもソンリェンたちに監禁されてから、トイの世界はもっと理不尽になった。
「ソンリェンと、両想いになりたいって? はは、ソンリェンはエミーのこと……これっぽっちも好きじゃねえよ」
ぐっと差し込んでくる力が増した。あと少しで下着が裂けてしまう。
「エミーの片想いだ……可哀想に、相手にもされてないんじゃないの」
「あのさあ、何いい気になってんの、ちょっとソンリェンに気に入られたからって」
「なってねえよ……どうでもいい」
エミーに殴られた際に内頬が切れていたらしく、口の中に血の味が溜まっていく。
「ソンリェンがオレを気に入ったかなんて、どうでもいい。オレは、絶対ソンリェンを好きにはならない」
文字通りシーツに血反吐を吐き捨てながら、トイは勢いをつけて振り向いた。
案の定、怒りに目を見開いているエミーと視線が合った。
「這いつくばって頭下げられたってごめんだね。アンタのアイジンにだって、なってたまるか!」
「……お前、玩具の分際で!」
「そっちこそ、エミーの分際で……ふざけんなよ!!」
勢いをつけて脚を後ろから振り上げてエミーの急所を蹴り飛ばす。うまく入らなかったが掠めはしたようだ。
エミーが低く唸って腰を曲げた。
即座に飛びのいて、緩んだ手のひらからナイフを奪ってベッドから転がり落ちる。扉とは反対側の方だった。
「いっ、て」
まだ足もふらつき本調子ではないとは言え、だてに監禁される前までスラムで生活していたわけじゃないのだ。
ばっと急いで扉の外へ向かおうとしたが、直ぐに起き上がったエミーが爛々とした笑みを湛えながらズボンの脇から何かを取り出し、それをトイに向けてきたのでたたらを踏む。
がちんと響く音。黒光りするそれは、紛れもなく銃だった。
通りでエミーが焦りを見せなかったわけだ。死に物狂いで奪ったナイフで応戦しようとしていたトイの反撃はそこで止まってしまった。
だが、次にどうするかの判断も早かった。
扉へ向かえば撃たれる。ならば後ろへ向かうしかない。どうせそこへ逃げ込んでもどうすることもできやしないとエミーは思ってるだろうから。
背を向け、窓の鍵を開けてバルコニーに飛び込む。
「くるな!」
振り向いてナイフを翳す。降りかかる雨粒のせいで視界が濁る。
エミーがせせら笑う代わりに銃をくいと振った。
「エミーの分際ね、ほんと言うようになった……ほら戻っておいで、ナイフと銃じゃ結果も見えてる。それぐらいはわかるだろ? 穴風情でもさ」
エミーが舌なめずりをした。
トイを捕まえたあとどう鬱憤を晴らすか想像でもしているのだろう。
「しょーがないね、ここで書かせるのは諦めた。はやく俺の屋敷に行くよ。ほらおいで」
片手に持っている契約書をエミーがぺらりと振った。このまま捕まったら強制的に連れて行かれる。そしてたぶん、ソンリェンが助けにきてくれない限り二度と日の目は拝めない。エミーに連れていかれたら最後、契約書に無理矢理サインさせられ、トイは玩具以下のサンドバッグにされる。
そうなったとしても、ソンリェンは助けに来るだろうか。
いや流石にエミーには逆らわないだろう、しかも契約書なんてものを作られたら特に。
彼らの中には見えない階級がある。ロイズ、エミー、ソンリェン、レオの順番だ。あの屋敷でも好き勝手していたのは主に上位の2人だった。
「オレに近づいたら、ここから飛び降りる」
「この高さだと普通に死んじゃうよ? 結構高いからね」
「アンタに……また誰かに玩具にされるぐらいだったらそれでいい」
「そんなこと言って1年以上もしぶとく自殺しなかったじゃん。大丈夫殺しはしないから」
口先だけだ、エミーの所有物になった時点でトイの死は確定する。
近づいてくるエミーから離れるようにバルコニーの取手を掴み壁に足をかけた。
そこまで高くはない。簡単に壁の上に登れる。
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