トイの青空

宝楓カチカ🌹

文字の大きさ
200 / 202
トイの青空

201.

しおりを挟む


 最後にソンリェンと身体を重ねたのは、あの水辺でだ。


 しかもいつものように無理矢理で、薬を使われて、死にたくなるほどの苦痛と快楽に壊れそうになった。
 だが今はどうだろうか、薬も使われていない。綺麗なベッドの上でもない。むしろ動く度に細かい埃が舞って、しかもギシギシと軋む古いベッドは今にも壊れそうで多少不安だ。
 しかも真昼間で、たぶんだけど侵入してきたクモやらなんやらの虫だってどこかしらにもいる。


 それなのに、今までで一番気持ちがいい。 




 どうしよう。どうしよう。
 ソンリェンが優しい。





 ぽたりと汗が散ってきて、唇にかかったので舐めとる。
 ソンリェンがそんなトイを見下ろして、またキスをしてきた。もう何回したかは数えていない。ただ無心でねっとりと唾液で満ちる舌を絡めて、また離して、また重ねる。律動の合間にそれをただ繰り返していた。
 場所が場所なので服を全て脱ぐことはなかったが、いつのまにかトイの方はかなりはだけてしまった。けれどもトイが一人だけは嫌だと言ったらソンリェンも前を閉じていたボタンを外して肌を見せてくれた。
 きゅっと近づく度に、ソンリェンの細いけれど均整の取れた筋肉がぺたりと肌に吸い付いてきて、擦れて、身体いっぱいにソンリェンの熱を感じる。


 それはもう、しつこいくらいに。


「ぁ、あん……ァ」


 じっくり時間をかけて入って来たソンリェンの熱に、落ちる感覚がした。
 どこへかはわからない。ただ沈んでいく。じんと痺れるような快楽には果てがなくて、トイは快楽に溺れるという言葉を身をもって味わった。
 不思議だ。重くて、深くて、圧迫感はあるのに痛みはない。違う、多少の痛みはあるものの以前のような引き千切られるような切なさや痛みを感じないのだ。
 心が痛くないから。
 挿入した時、素直にちょっと痛いと訴えればソンリェンはトイの中がなじむまで待ってくれた。
 そのおかげでソンリェンの肉はぴったりとトイの内壁に吸い付き、トイの腹の形に合わせて膨らんだ。引き抜かれても挿れられても、隙間なくトイの奥を満たしてくれる。
 圧迫感さえ離れがたくて、自然と脚が広がりソンリェンの腰に絡めてしまった。
 そうするとソンリェンは一瞬だけ息を飲み、トイを抱きしめて深い所を擦ってくれる。瞼の裏がちかちかと光って、また落ちてしまいそうな感覚にソンリェンの肩に縋りつく。
 ずっと、それを繰り返していた。


「っ……ん、ぁァ……ふぁ」


 トイの身体のあちこちが濡れているのはソンリェンに舐められたからだ。丁寧に首筋を、鎖骨を、胸先を、濡れた入り口を弄られた。
 今だって、熱塊に貫かれながら尖った胸の膨らみをこりこりと刺激され、吸われ、波紋のように広がるむず痒い快感に目眩が止まらない。
 時折切羽詰まったようにソンリェンの動きも激しくなるけれど、いやじゃない。圧迫感と苦しさに息が詰まる瞬間はあるけれど、その度に顔を覗かれ額にキスを落とされるから怖くもない。
 それになにより、トイの濡れそぼった幼い男性器を律動に合わせて優しく擦られるから嬉しかった。

 そう、嬉しいのだ。

 快感を高めるためだけにめちゃくちゃに擦られるのでもなく、トイの反応が面白いからでもなく。
 トイの震えてしとどに蜜を零すそれが愛おしいのだと、ソンリェンの気持ちが彼の手を介して伝わってくるから。熱のこもった愛撫に心が満たされていくから嬉しいのだ。
 嬉しくて嬉しくて、ソンリェンにキスを強請ればまた唇を奪ってくれる。口内になだれ込んでくるソンリェンの舌と荒い息に、肺の奥までもに心地よさが浸透してきそうだった。


「トイ」
 かわいい。
「あ、そんりぇ、ん」
「トイ」
 かわいい。
「っ──ふ、ぁ」


 名前を呼ばれる度に、ソンリェンにかわいいと言われている気がする。そしてそれは勘違いではないと思う。だってずっとソンリェンと目が合う。
 キスをしてても、少し身体が離れてても激しい律動を受け入れている時であってもソンリェンと視線が絡む。
 お前しか見えないと、思わず笑ってしまうようなことを言われたがどうやら本当のようだ。だから、トイも早々にソンリェンしか見えなくなった。
 ここがどこだかもわからなくなる。埃も、塵も、光の届かぬ部屋の隅も視界には入ってこない。ただ目の前に、トイを抱くソンリェンがいる。
 それだけが今のトイの全てになった。
 ソンリェンはトイに侮辱的なことを囁いたりはしなかった。性的欲求を煽るような言葉も。ただ、トイの名を呼んだ。だからトイも、トイを求めてくる青年の名を呼んだ。
 始まる前はもっと色々なことを喋った気がするけれど、もう喘ぎ声と、互いの名しか口に出来ない。
 それ以外の言葉は今はいらないのだ、きっと。
「そんりぇん」
 揺れるソンリェンの白い首に、うっとりとする。ソンリェンの首は細い。けれども硬くて男らしい。彼の喉仏に歯を立てたいと思った。
 トイがそう思うくらいなのだからソンリェンも同じことを思っているのかもしれない。
 誘うように喉を曝け出すとごくりと唾を飲み込んだソンリェンの綺麗な顔が下りて来て、舌を這わされてから歯を立てられた。
 窺うような仕草だったので、もっととソンリェンの首にしがみ付くと少し力を加えられて噛みつかれる。
 じんと響く痛みが瞬時に悦楽に変わり、トイは喘いだ。喘いで、ソンリェンの耳たぶに歯を立てた。


「ア……ぁ……ひぁ……あ、ン」



 ソンリェンと、セックスしてる。

 今トイは、ソンリェンとセックスしてる。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...