クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦

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続、青春×グラフィティ

1ー裏

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「ーーーねえ石神。この間雑誌であんたと並んでたメンズのモデル、あれ誰?」
「名前なんて知らない。つか知ってどうするのよ」
「えー? んなの紹介してもらうに決まってんじゃん。てゆーか合コンやろうよ合コン。石神メンズ揃えてよ」
「はぁ? やだし意味わかんない」
「じゃあじゃあ、紹介とかいいから合コンは参加してよ。こっちで男集めるからさ。サエが来るならハイレベルな男釣れるのよ」

石神の周りには、彼女を囲むようにいつも女子の輪ができている。
加須浦とセットのことが多い石神だが、今日は他クラスのギャル二人がいるためか、加須浦も遠慮して距離を置いているようだ。

「なあ江津、行かないのかよ?」
気が付くと、能田と木下が俺の席のすぐ側に並んで立っていた。
二人も合コンの話を聞いて、黙っていられなくなったのだろう。
確かに、いつもの俺だったら、「おいおい良い男ならここにいるぜ」とか言って乱入していただろうが、そう出来ない理由があった。
クラブ『モスキート』で石神が不良たちに連れ去られた一件で、俺は石神を見捨てた負い目を抱えていて、それ以来まともに話しかけられなくなってしまった。
幸い、石神は無事に学校に来たから事なきを得たのだと安心したが、同時に、俺は辛酸をなめる思いをするはめになった。

間久辺比佐志。
俺を含め、クラスみんなからオタクだとバカにされてたヤツが、あの日、石神を救うと言って、実際に行動を起こした。どうやって救いだしたのかは知らないが、登校してきたときのヤツの顔は、俺たち三人よりもひどく腫れ上がっていて、救出劇の過酷さを物語っていた。

あのオタクにできて、俺にはできなかった。その事実が悔しい。
そして石神を見ると、

「合コンとか、ウチは興味ないしパス」

そう言いながら、彼女の視線は真っ直ぐに間久辺に向いていた。
間久辺を見ると、あの野郎、なにをしてるんだか知らないが、教室の隅でスマホを見ながらときどき噴き出したり、ニヤニヤしてて気持ちワリィな。

「……ぶふっ、だ、駄目だ堪えろ自分っ。笑っちゃ駄目だ。こ、こんな場所で読んでいい小説じゃないよこれ」

ああもう聞こえてんだよキモオタが。
少しは周りの視線ってものを気にしろよ、周りからバカにされてるの気付かねえのか。

ーーーって、まあ気付かねえんだろうな。

さっきから石神があんなにチラチラ見てるのに、まるで気付く様子もないとか、どんだけ鈍感なんだ。

おもくそつまんねえ気分に、俺はため息がこぼれた。
その上、能田と木下は、
「なあ江津、最近どうしたんだよ。石神とぜんぜん絡んでなくね?」
「あ、やっぱり俺の勘違いじゃないんだ」
と無遠慮に言ってくる。
二人は俺の気持ちに気付いていて、石神との仲を応援してくれていた。
だから、最近俺が石神に話しかけないことに、違和感を覚えていたみたいだ。

「別に、なにもねえよ」

言えるかよ。俺が逃げ出したのに、バカにしてた間久辺が不良たちに立ち向かって、石神を救ったなんて。それで原因で、気まずくなってこっちから避けてるなんて、口が裂けても言えない。


ーーーーーーーーーーーー


「チクショウ! なんだって俺が、こんな目にあわないといけないんだ」
放課後になっても、くさくさした気持ちは消えなかった。

俺は校庭の隅、隠れるようにして野球部の練習を眺めていた。
野球部30年の伝統が示す薄汚れた『一球入魂』の旗が棚引くグラウンドで、白球を追いかける部員の姿がある。
グラウンドの脇では、下手くそが投球練習を始めた。そんなことをしても大会で使い物になるわけないと、あの無能な監督は、さっさと気付くべきなんだ。

二週間前、監督は俺を呼び出してこう言った。

『お前は当分練習に参加するな。わかったな江津』

反論の余地などなく、俺は無期限の部活動停止処分を受けることになった。
原因は、あのクラブ『モスキート』での騒動。
顔中アザだらけにして登校した俺を見た監督は、問題行動を起こして部に迷惑をかけた罰則として、練習に参加させないなんていう横暴に走りやがった。
俺がどれだけこの野球部に貢献してきたか、まるでわかってねえんだ。
あの日から、俺の人生ケチがついてばっかりだ。
クラブに行ってたことが両親にバレて、親父からこっぴどく説教くらった上に、学校では部活動停止処分されたことが広まって、遠巻きに俺を見る目が鬱陶しい。
木下と能田も、俺と一緒で部活に出られなくなっているが、たいして堪えていないのか、むしろ放課後の自由な時間を満喫していた。
今日も二人から、『ファミレス行こうぜ』と誘われたが、俺はそれを断って野球部の練習を盗み見ていた。
下手くその大友おおともが投球練習をしているのを見て、俺はおもいっきり鼻で笑ってやった。一年後輩とはいえ、俺は去年のこの頃には、二年の先輩を押さえて三年の先輩の控え投手としてベンチ入りしていた。
なんだよ大友そのフォーム。ガチガチで、そんな姿勢からのびる球なんて投げられるわけねえだろう。
ひとしきり笑ってやると、球を受けていたキャッチャーが、マスクを外した。
「固くなりすぎだ大友。だけど、素直に狙ったところに放る良い投球だぜ」
そう励ましの言葉をかけたのは、泉善治いずみぜんじ、俺とバッテリーを組んでいた三年の先輩だ。
「なんだよ、泉先輩のヤロウっ」
俺は思わず舌打ちしていた。
先輩とは高校に入ってからすぐにバッテリーを組まされた仲で、寡黙なあの人とは特別打ち解けたという実感がない。
だけど、だからってこんなにあっさり変わり身することないじゃねえか。
俺が部活動停止を言い渡されたとき、部員はほとんど全員その場にいて、泉先輩もその場面を見ていたはずだ。
なのに、誰一人として俺を庇う部員はいなかった。

ふざけんなっ!

誰のおかけで、前回の夏の大会で県ベスト4入りできたと思っていやがるんだ。
テメエらだけじゃ、どうせ二回戦敗退ってところだろう。そうなってから、俺の存在の大きさに気付いても遅えんだからな。

一頻り心の中で悪態をつくと、少しは溜飲も下がった。

俺はグラウンドに背中を向けると、校門に向かって歩いて行った。
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