クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦

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続、青春×グラフィティ

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放課後になった。
それにしてもいやー、このウェブ小説ヤバいね。学校という名の社会的に瀕死状態のぼくを完全に抹殺するつもりだろうか、けしからん。
さっきからニヤニヤが止まんないんだけど。
さて、ケモミミのアイリスたんを愛でるのはこのくらいにして、そろそろ行くとしよう。
続きは家に帰ってからのお楽しみだよ、アイリスたん、でゅふふ。
立ち上がると、石神さんと目が合った。
でゅふふ顔、見られちゃったんですけどなにこれ神の苦行ですか?

石神さんは、珍しく加須浦さんと一緒ではなかった。
他のクラスのギャル二人が、石神さんを捕まえて離さないといった感じか。
「なあな石神ぃ。マジで良い男紹介してってば」
「そうだよサエー、恵まれないあたしらにおこぼれくれたって良くない?」
石神さんはどこか慌てた様子で、「おこぼれって、ウチはそんな、手当たり次第に男に手を出したりなんかしてないし!」と言った。
「はあー? なに言ってるわけ? 隣にこんな良い男がいるのに、手ぇ出さないとかありえなくね?」
ギャルAが持ち出したのは、ティーン向けファッション誌。あまりジロジロ見るのも失礼なので、チラと盗み見たけど、石神さんらしき女性がスラッと背の高い優男と並んで写っているのが見えた。

いや、なんかもう住む世界が違い過ぎて笑えるね。

家に石神さんが来てからというもの、妹の絵里加はこれまで以上に石神さんへの憧れを強く持つようになり、その影響でぼくも石神さんが写るファッション誌を目にする機会が増えた。
絵里加としては、再び彼女を家に招くように画策しているつもりなのだろうが、ぼくからしたら、より一層石神冴子というクラスメイトが遠い存在に感じられるようになった。
雑誌で普通にモデルやって、中高生から憧れの目を向けられるとか、ハイスペック過ぎる。
その上、男漁りなんてしてないって? 
どこの世捨て人だよそれ。
ぼくだったらモテキングとしてガールズをコレクションするのに。
ーーって、べ、別に羨ましいなんてちっとも思ってないけどな!

「ああー、羨ましい羨ましいっ。あやかりたいあやかりたい。わけて欲しいな、男紹介してほしいなぁ、サエばっかり周りに良い男居てずるいなー!」

清々しいほどゲス発言が目立つなギャルBは。

「ウチはそんな不純な動機で読モしてるわけじゃないのよ」

ふむ。そうか、石神さんは異性が目的でモデルをやっている訳ではないのか。
ということは、彼女の目当ては………はっ! 同性!?
やたらと加須浦さんと仲が良いと思ったけど、これ、そういうことか。
百合だけに百合の関係、みたいな?

「なんかキモい顔して見てるやついるんだけど、ぜったいあたしら見て変な妄想膨らませてっから」
「ヤバイって、聞こえるよ。ああいう根暗君はキレたら手がつけらんないっていうじゃん」

聞こえてるぞギャルAB。
ぼくは人畜無害な部類の根暗オタクだから、視線を外して聞こえない振りをする。もしぼくが、彼女たちの言うヤバいタイプのオタクだったら今頃大変なことになってるよ。寛大なぼくに感謝してほしいものだよ、まったく。
そんな風に頭の中で独り言でも考えていないと、この状況は乗り切れそうにない。本当はすぐにでも逃げ出したかったが、あんな話をされた直後に立ち去ったら、逃げ出したと思われてまた笑われそうで、動けなくなる。

お座敷犬くらい大人しくしているぼくを見て、良い気になったギャルAは、もはや声を絞ることもせず、「オタクマジキモい」と無遠慮に言った。
その言葉に同意しながら、つられて笑うギャルB。
慣れているとはいえ、流石に女子生徒からここまで辱しめを受けると、心が折れそうになる。
悔しさと恥ずかしさが入り交じった感情をおさえ込むみたいに、ジッと俯いていると、

「間久辺君はキモくなんてないよ。ね、冴子?」

声の方を見ると、そこには加須浦さんの姿があった。
さっきまでギャル仲間がぼくをバカにするのを見てみぬ振りしていた石神さんだったが、加須浦さんの諭すような言葉に曖昧に「うん」と頷いた。
仲間の手前、オタクのぼくを庇いたくなかったのだろうな。
それは別にいい。これまでぼくをバカにする筆頭だった石神さんが、近頃はやめてくれている。それだけでもこっちとしては嬉しい。
ただ、一緒に出掛けたり、家に招いたことで少しは彼女と距離が近づいたつもりになっていたことが恥ずかしい。石神さんにとっては、悪口を止めるほどの存在ではないのだろう、ぼくは。

その点、加須浦さんは違う。
ほとんど接点もないぼくのことをこうして庇ってくれるとか、マジ天使。

「加須浦ぁ。あんたいきなり現れてなに?」
ギャルAが口元だけ笑みを浮かべながら、その目は笑っていなかった。
加須浦さんはというと、その眼力に気圧される様子もなく、まっすぐにギャルの目を見た。
「なんでもないよ。ただ、悪いと思ったことを悪いって注意してるだけ」
「あっそう。わざわざありがとう。でも、余計なお世話なんだけど」
「そうだよ、あんたに関係ないじゃん」
ギャルたちの口調が荒々しいものに変わり、教室の空気はピリピリしだした。
しかし、助けを求めようにも、クラスメイトはほとんど帰ってしまったし、残っている生徒も明らかに我関せずといった風に遠巻きに様子をうかがっていた。
不思議だったのは、いつもなら加須浦さんの味方をしそうな石神さんが、黙って成り行きを見ていることだ。
彼女はなにをやっているんだ、いったい。
こうなったら仕方ない。ぼくは覚悟を決めて、立ち上がった。
ガタッという机の揺れる音で、周囲の注目がぼくに集まる。

「ぼくのために争うのはやめてっ!」

精一杯声を張ってそう言うと、教室内は一瞬にして時間が止まったように静まり返った。
おかしいな、ここ爆笑するところなのに、もしかしてこれやっちゃった?
そんな風に自己嫌悪で死にたくなっていると、追い討ちをかけるようにギャルAが「マッジ、キモいんだけど」と言って心底蔑んだような瞳を向けてくる。
追随するように、「バカじゃん?」とギャルBが言うと、いよいよもって心が砕け散りそうだ。この上ギャルC……じゃなかった、石神さんが参加したら割れ物注意なぼくの心はこなごなになってしまう。
だが、その心配は杞憂に終わったようだ。
「あーなんかシラけたわ、行こ」
そう言って、ギャル二人組は教室の出口に向かって行った。
扉を出る間際、「行くよ石神」と言って、彼女に呼び掛ける。
石神さんはぼくを見てから、次に加須浦さんと順番に視線を送ると、どこか後ろめたい思いでもあるかのように目を伏せた。
その足は、ゆっくりとギャル二人組の後に続いた。

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