強者がただ強いだけとは限らない

あるみな

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色欲も良いことばかりでは無い

《十三之罪》座して勝利を待つ

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観客室にて、私とエーシュは目の前の巨大な、映像を投写する魔法器を見ていた。
そこには闘技場で開始を今か今かと
待っている剣士たちがいた。
その闘志と迫力は、映像を通してこちらにまで届いた。

「...これは?」
「ん、会場の映像を映し出す魔法器だ。」

エーシュが目を大きくして魔法器を見つめている。
私はそれを見て小さく苦笑。

周囲にはそんな二人をちらちらと見ている人が沢山いる。
注目は止んでいない。
だが、その程度気にするなという、何とも無理やりな結論に至ったのだ。

私はエーシュに小さな声で、選抜戦に関する事を教えて、彼女はそれをうんうん、と頷いて聞いていた。

...と、その時、映像の中がどよめき出した。
それと同時に周囲の観客たちは映像を凝視し始め、私たちへの注目は消えた。


選抜戦予選、開始である。




※※※※※




闘技場でうたた寝していた私は、予選開始の法螺の音で目を覚ます。

「あぁ、やっとか...」

あたりに居た剣士達がぞろぞろと中央の丸い平地へと集まる。

 少しすると橋の向こうから一人の兵士がやってきた。
兵士は剣士たちの前に立つと、諸注意やらルール説明やら、話し始めた。

概要を纏めるとこうなる。
この予選はバトルロイヤル形式であり、死ぬ、降参する、外堀の水へ身体の一部が触れると失格となる。
武器、魔法の使用は自由であり、倒した数はカウントされない。

さらに要約すれば、最終的にこよ平地に立って残っていれば良い、という事だ。

ルール説明が終わると周囲は一時解散し、五分間の準備期間が設けられた。

因みに私は、予選で戦うつもりは一切無い。
手の内を知られたくないのも事実だが、私はこの形式が正直苦手だからだ。
私は橋を渡ると城内へ急ぎ、自身に迷彩ミラージュにかけ、再び戻ってきた。

そう、私はこの予選を、『やり過ごす』つもりだ。

そのあとの残り時間は特にする事も無く、遂に予選が始まった。

法螺の音と共に剣士達が集まり、橋の向こうにいた剣士達も中央へ集まる。

橋が畳まれるともう一度法螺の音が鳴り、それを合図に全員が一斉に雄叫びを上げて剣を振り上げ、走り始めた。

平地の至る所で闘いが始まった。
巨大な両手剣で圧倒する者、怖くなったのかただ走り回っている者、様々な闘いが繰り広げられている。

私はというと、開始直後から平地の隅に立ち、男達の闘いをただ傍観しているのみだった。

「あれだな、四十人もいると、最早戦争みたいな光景だな...っと...」

途中で魔力で作られた火の塊が飛んできて、それをギリギリで交わす。
気付かれた気配は無い。恐らくは流れ弾だろう。

......

予選も終盤に差し掛かると、平地に残っている人の数は既に残り少なくなっていた。
そして闘いは、長髪の男性が足をすべらせ、水に転落した事によって終了となった。
私は結局、気付かれずにやり過ごしたのだった。

適当な所で迷彩ミラージュを解除すると、一人の男が私に気付き、絡んできた。
目にかかるくらいの茶髪が風に揺れ、、ちゃらちゃらしてるがそこまで適当ではない、不思議な男だ。


「おっ、お兄ちゃん、見なかった顔だけど、ずっと消えてたのかい?」
「あー、うん、まあな。バトルロイヤルは苦手なんだよ。」
「はっはっはっ、俺ぁ魔法が使えんから羨ましいぜっ   本戦、頑張ろうな!」

男が肩をぽんぽんと叩く。
初対面から軽い態度の人間は正直苦手だ。その人を嫌悪する訳では無い。
ああ言う話が好きな人は、話が苦手な私と相性が悪いのだ。

私は半眼で男を睨みつける。
男は視線を無視して踵を返した。

よく見るとその男の身体、いや、服にさえ、傷や泥の跡すら残っていなかった...。





兎にも角にも予選は終了。
明日が本番だ。
今日も早く帰って、早く寝よう。








大広間へ戻った時、二人から「何処にいたの?」と聞かれたり卑怯だとか罵られたのはまた、別のお話。

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