強者がただ強いだけとは限らない

あるみな

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色欲も良いことばかりでは無い

《二十四之罪》選抜戦の終結

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決勝戦の特殊ルールは、先に相手に一太刀浴びせた方が勝ちである。
と言うのも、お互いに今は体力や精神的に全力が出せず、お互い納得した上で取り決めたものだ。

王の掛け声とともに両者は飛び出し、一閃。

王室内に、一瞬の静寂が訪れた。
お互い背を向けたまま、一瞬の時が経つ。

そしてその一瞬は、観客の歓声と共に消え去る。
勝負の終わりを最初に告げたのは、背後から聞こえる、リフレの持つ片手剣が砕ける音だった。

そしてそれに呼応するように、王自らが法螺を吹く。
私は接続コネクトを使って光の空間に刀をしまい、リフレは剣先が欠けた剣を背中に納刀し、両者握手を交わし、拳を重ねた。

「いや、お前さんの強さは、本物だ。」

「そ、そうかな。いつか機会があれば今度こそ全力でお前と戦いたいところだ。」

「あぁ、その時こそ、俺が勝つ時だがなっ」

2人が感想を述べあっていると、王が二人の近くに顔を出す。

「二人とも、見事である。我はこの刹那の試合、楽しませて貰ったぞ。其方らは後日、改めて討滅戦の会議に呼ばせて貰おう。」

王がその身体に似合わない笑顔を浮かべながら告げると、それを止めたのはリフレだった。

「俺は遠慮しておきますよ、王。俺の洗脳がまだ残ってるって言うんなら、俺は此処に居ちゃいけないと思ったので。取り敢えず王都は出ていこうかな、と。」

「ぬ。討滅戦には出ないと言うか...。」

それを聞いて王は少し悩んだように見えたが、すぐに納得したらしい。
私もリフレの発言の予想はしていたので、黙って話を聞く。

「主の意見を尊重しよう。確かに、城から出た途端に市民を襲われては敵わぬからな...。」

「はい。迷惑をかける訳にも、行かないですから。」

「さて、我はこれより其方を王都の外まで送ろう。我の力は、王都の端にまで届かないからな。」

「はい、ありがとうございます。」

「では其方、今日はゆるりと休まれよ。」

そう言うとリフレは、王に連れられて王室を出た。数名の兵士も王を護衛するように展開し、共に部屋を出た。
仕方あるまい。私も疲れているし、早く帰ろう。

「やったな、ブラーズ。」

王が部屋から出ると、残った兵士が観客の誘導を始めた。
と、ルシフとエーシュが観客の塊の中から出てきて私に寄ってきた。

「ああ。まあ、全力で戦えなかったのがちょっと、残念だけどな」

「また何処かで会えるだろうさ。私たちだって、放浪者なんだから。」

「そうだな。さて、私たちも帰るか。」

私が手を招くと、エーシュがそっと近付いて、私の左手をぎゅっと両手で握ってきた。
迷彩ミラージュをかけ、試合が終わると同時に周囲からちらほらと集まって来ていたエーシュへの視線が無くなったことを確認すると、私たちは兵士の誘導に身を任せて城を後にした。
 


※※※※※



宿に戻る頃には日は落ちかけ、空はオレンジ色から黒に変わっていくところだった。
私は部屋に戻るなり早々に布団に突っ伏して、

寝た。


......。


「おい、起きろ」

...頭を叩かれた。
ルシフめ、また私の眠りを...

...と思ったところで、私の考えは微妙に違っていたことに気付く。
確かにルシフはさっきから私の頭を叩いている。
しかしそれとは別に文字数一つ、私の胸をそっと揺する手があった。
ルシフの手よりもずっと小さく、正体は直ぐに分かったので、私は片目だけを開いて気配のする方を見る。


「...おはよう、エーシュ...。」


...深夜もいいとこである。


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