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二 名取美優
第50話 祭り
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寝る前、見てはいけないのを見つけてしまい、昨日もあんまり寝れなかった。おかげで起きていても勝手に寝ちゃいそう。
8月1日(水)
神社のほうでは祭りの準備が行われていた。大人だけじゃなく子どもも参加している。その中に、つーちゃんが。
つーちゃんは一から、この手で大きな行事に関わっていきたいそうな、流石、ピッキングで世界を目指す男。
私はそういう熱いのは苦手なので、家にずっといる。もう、八月。きっとクラスのみんなは海やらバカンスやら楽しんでらっしゃるのでしょうね。
暑さでのぼせそうな頭でそんなことを考えていると、突然、携帯がなった。手元に握ってた携帯がブブと振動する。
久し振りに聞いた着信メロディ。私が好きな歌手の人。でも、そのメロディは今聞くと急に体が縮こまった。
いつ振りか、電話の相手は男子と海満喫中の痴女っ子じゃない。
私は慣れた手つきで操作して、耳に押し当てた。途端、キーンと甲高い声が鼓膜に響いた。
『あ! 美優、久し振りっ!! 元気してる?』
「元気だよ。なんか用?」
『もう、なに怒ってんの!? ねぇ、あんたなにしんてんの? ちゃんと男紹介してよ~』
この痴女が。そんなのいたら苦労しないっての。というか、私より苦労しない環境で男漁りができるそっちがなに、求めてんだよ。
こっちは田舎だよ。コンビニエンスストアもない田舎だよ。期待すんなし。
「ちょっとあってね~今はすっごい忙しいの」
私は忙しい振りを声だけやった。
たとえば、大きな物音をたててごめんなさーいと。実際は机を叩いているんだけだ。
痴女っ子は突然、声が変わった。こっちのしている行動が分かっているような口調。
『は? あんた何言ってんの? 暑さでやられた? マジうけるんですけど』
アハハハと、とても上品とは言えない笑い声。微かに聞こえた、複数の話し声。こいつの後ろには、人がいる。クラスメイトだろうか。それとも、男。
いいや、女だ。受話器の向こうで私がどう反応するか気になっている。そして、笑い者にしている。
どうしてこうなったのか、経緯は分かる。が、負けるきはしなかった。
『ねぇねぇ、そっち退屈じゃん? 抜けてウチらと遊ぼうよ』
知ってる。この言葉で誘惑して、お金をまくしあげ、終いにはキモいオッサンらの箱庭に入れさせる。何度も見てきたよ。
「ごめん。今の嘘」
『やっぱり~! それじゃ――』
「でも、私そういうのやめたんだ」
受話器からは? と抜けた声が。私はさり気なく明るく喋った。
「男、男って一応あんたも小学生だよね? ちゃんと体大事にしないと。それと今さっきのは嘘であって半分はほんとだよ! 忙しかったよ。この夏、でも……」
私は電話を切った。
最後に聞こえたその子のおぞましい声。この夏が終わったら、きっと私は虐められるだろう。でも、負けるきはしない。
だって、間違ったこと言ってないんだから。自分に自信を持って。かつての私はきっと、こんなこと言わなかっただろう。虐められるのが怖くって本心を隠して。でも、今は違う。
いっぱい希望が湧いてくるの。きっと、この心は誰かさんに読まれていそう。
§
辺りはまだ明るいが、時刻は六時すぎ。お母さんに着付けを頼んで祭りに向かった。帯がキツイし、下駄だから走りぬくい。でも、絶対この姿勢は変えないぞ。
神社近くになるにつれ、道路には明るい色した提灯や旗が飾られている。村で一、ニを争うほど大行事ではないかと思うほど、大掛かりだ。
神社に向かって、たくさんの人たちが歩いていく。道中、ミンミンゼミが鳴った。その鳴き声を抑える太鼓の音と大音量の音楽。
小さな村だと、侮ってはいけない。再度確認した。神社の敷地をゴミのように埋め尽くす人。見渡す限り人だった。
この中であの二人を探すには少し、戸惑った。大勢の人を見て気怠さを感じつつ、赤い社を抜けた。
そのとき、背後から誰かにぶつかりよろけそうになった。いつも履きなれない下駄だからバランス感覚を失ってそのまま、地面にダイブしそうだ。だめだ。この浴衣まだ新品なのに汚しちゃう。
慌てて私は重点をそらした。でも、そらしすぎて、逆にえびぞりに。
「わっ! わわわっ!!」
周りの人を巻き込んで、どうにか正常に立ち上がろうと私一人騒動を起こした。
再び転びそうになった私を両腕を持って支えたのは修斗くんとつーちゃん。
「だ、大丈夫?」
と眉をハチの字にさせる修斗くん。
「何やってんの?」
と若干引きぎみのつーちゃん。
私はアハハと笑うしかない。穴があったら入りたいとはこのこと。顔が赤くなるのが分かった。
やっと二足で立ち上がった私は二人の手を握って、お店を駆け回った。たこ焼きに綿菓子。射撃も。これ、つーちゃんが得意そうだなと思ったけど意外。苦手でさ、修斗くんが凄かったの。私のほしいウサギのストラップを一発で仕留めてくれた。
つーちゃんは最後まで挑戦しても、狙い外れ。それから狙ってもいない商品をあてたり、全く違う場所に撃ったり。正直、後ろから見ている私たちは、太鼓の音に負けないぐらい笑った。つーちゃんは負けず嫌いで何百円お金をつきこんで私の欲しいクマのぬいぐるみを狙う。
すると、見飽きた店主がそこの彼氏くんに頼めば? と修斗くんを指差す。修斗くんもつーちゃんも顔を真っ赤にさせた。
「彼氏じゃない!」
二人で息揃ったのが初めてだ。
つーちゃんの財布がカラカラになるまで射撃に付き合わされ、結局、的は射ず、店主のいうとおり修斗くんが取った。
財布がカラカラになったつーちゃんは、このあと予定だった金魚すくいを断念し、賞金10万円がもらえる「のど自慢」に参加。
人が大勢いるので、遠くのほうでその会場ののど自慢大会を見送る。ヨボヨボのおじいちゃん、世間一般の主婦、犬連れのおばあちゃんまで参加している。
歌唱力は……上手い。テレビに映る歌手よりも上手いかも。はたしてこの競合たちを割いてつーちゃんは勝つことができるのか。
固唾を飲んで見守る私たち。
8月1日(水)
神社のほうでは祭りの準備が行われていた。大人だけじゃなく子どもも参加している。その中に、つーちゃんが。
つーちゃんは一から、この手で大きな行事に関わっていきたいそうな、流石、ピッキングで世界を目指す男。
私はそういう熱いのは苦手なので、家にずっといる。もう、八月。きっとクラスのみんなは海やらバカンスやら楽しんでらっしゃるのでしょうね。
暑さでのぼせそうな頭でそんなことを考えていると、突然、携帯がなった。手元に握ってた携帯がブブと振動する。
久し振りに聞いた着信メロディ。私が好きな歌手の人。でも、そのメロディは今聞くと急に体が縮こまった。
いつ振りか、電話の相手は男子と海満喫中の痴女っ子じゃない。
私は慣れた手つきで操作して、耳に押し当てた。途端、キーンと甲高い声が鼓膜に響いた。
『あ! 美優、久し振りっ!! 元気してる?』
「元気だよ。なんか用?」
『もう、なに怒ってんの!? ねぇ、あんたなにしんてんの? ちゃんと男紹介してよ~』
この痴女が。そんなのいたら苦労しないっての。というか、私より苦労しない環境で男漁りができるそっちがなに、求めてんだよ。
こっちは田舎だよ。コンビニエンスストアもない田舎だよ。期待すんなし。
「ちょっとあってね~今はすっごい忙しいの」
私は忙しい振りを声だけやった。
たとえば、大きな物音をたててごめんなさーいと。実際は机を叩いているんだけだ。
痴女っ子は突然、声が変わった。こっちのしている行動が分かっているような口調。
『は? あんた何言ってんの? 暑さでやられた? マジうけるんですけど』
アハハハと、とても上品とは言えない笑い声。微かに聞こえた、複数の話し声。こいつの後ろには、人がいる。クラスメイトだろうか。それとも、男。
いいや、女だ。受話器の向こうで私がどう反応するか気になっている。そして、笑い者にしている。
どうしてこうなったのか、経緯は分かる。が、負けるきはしなかった。
『ねぇねぇ、そっち退屈じゃん? 抜けてウチらと遊ぼうよ』
知ってる。この言葉で誘惑して、お金をまくしあげ、終いにはキモいオッサンらの箱庭に入れさせる。何度も見てきたよ。
「ごめん。今の嘘」
『やっぱり~! それじゃ――』
「でも、私そういうのやめたんだ」
受話器からは? と抜けた声が。私はさり気なく明るく喋った。
「男、男って一応あんたも小学生だよね? ちゃんと体大事にしないと。それと今さっきのは嘘であって半分はほんとだよ! 忙しかったよ。この夏、でも……」
私は電話を切った。
最後に聞こえたその子のおぞましい声。この夏が終わったら、きっと私は虐められるだろう。でも、負けるきはしない。
だって、間違ったこと言ってないんだから。自分に自信を持って。かつての私はきっと、こんなこと言わなかっただろう。虐められるのが怖くって本心を隠して。でも、今は違う。
いっぱい希望が湧いてくるの。きっと、この心は誰かさんに読まれていそう。
§
辺りはまだ明るいが、時刻は六時すぎ。お母さんに着付けを頼んで祭りに向かった。帯がキツイし、下駄だから走りぬくい。でも、絶対この姿勢は変えないぞ。
神社近くになるにつれ、道路には明るい色した提灯や旗が飾られている。村で一、ニを争うほど大行事ではないかと思うほど、大掛かりだ。
神社に向かって、たくさんの人たちが歩いていく。道中、ミンミンゼミが鳴った。その鳴き声を抑える太鼓の音と大音量の音楽。
小さな村だと、侮ってはいけない。再度確認した。神社の敷地をゴミのように埋め尽くす人。見渡す限り人だった。
この中であの二人を探すには少し、戸惑った。大勢の人を見て気怠さを感じつつ、赤い社を抜けた。
そのとき、背後から誰かにぶつかりよろけそうになった。いつも履きなれない下駄だからバランス感覚を失ってそのまま、地面にダイブしそうだ。だめだ。この浴衣まだ新品なのに汚しちゃう。
慌てて私は重点をそらした。でも、そらしすぎて、逆にえびぞりに。
「わっ! わわわっ!!」
周りの人を巻き込んで、どうにか正常に立ち上がろうと私一人騒動を起こした。
再び転びそうになった私を両腕を持って支えたのは修斗くんとつーちゃん。
「だ、大丈夫?」
と眉をハチの字にさせる修斗くん。
「何やってんの?」
と若干引きぎみのつーちゃん。
私はアハハと笑うしかない。穴があったら入りたいとはこのこと。顔が赤くなるのが分かった。
やっと二足で立ち上がった私は二人の手を握って、お店を駆け回った。たこ焼きに綿菓子。射撃も。これ、つーちゃんが得意そうだなと思ったけど意外。苦手でさ、修斗くんが凄かったの。私のほしいウサギのストラップを一発で仕留めてくれた。
つーちゃんは最後まで挑戦しても、狙い外れ。それから狙ってもいない商品をあてたり、全く違う場所に撃ったり。正直、後ろから見ている私たちは、太鼓の音に負けないぐらい笑った。つーちゃんは負けず嫌いで何百円お金をつきこんで私の欲しいクマのぬいぐるみを狙う。
すると、見飽きた店主がそこの彼氏くんに頼めば? と修斗くんを指差す。修斗くんもつーちゃんも顔を真っ赤にさせた。
「彼氏じゃない!」
二人で息揃ったのが初めてだ。
つーちゃんの財布がカラカラになるまで射撃に付き合わされ、結局、的は射ず、店主のいうとおり修斗くんが取った。
財布がカラカラになったつーちゃんは、このあと予定だった金魚すくいを断念し、賞金10万円がもらえる「のど自慢」に参加。
人が大勢いるので、遠くのほうでその会場ののど自慢大会を見送る。ヨボヨボのおじいちゃん、世間一般の主婦、犬連れのおばあちゃんまで参加している。
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