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一 大倉麻耶
第6話 裏山
しおりを挟むいつも見る景色はどれも色がなく、真っ暗闇に溶け込んでいた。なので、外に出た瞬間、わたし以外、みな好奇心と興奮で気持ちが高ぶっていたはず。
「うわぁ! 真っ暗!!」
目を輝かせ景子が言う。
いつも体を縮こませている少女がこの時だけは嬉しさの感情いっぱいになっていた。夜空に手を伸ばせ、クルクル回っている。景子は夜が好きだから仕方がない。
「あんま、はしゃぐと溝に落ちるわよ」
礼子が冷静に言う。
そんなこんなで5人は裏山の井戸に到着。
「うわ、やっぱ近くにくると臭うな」
洋介が鼻を摘み、井戸から離れる。凄い強烈な匂いなのだ。
「井戸に来て何がしたかったの? 亜希子」
わたしが問うと、亜希子は異臭がする井戸へと歩み寄る。
「ふふ、内緒。まず、みんな井戸を囲んで四人で手を繋ぐの」
言われた通り、亜希子以外は手と手を繋ぎ、井戸を囲んだ。生ごみと古臭い水の臭いが風によって運ばれてく。
わたしたちが手を繋いだのを確認した亜希子は一番後ろで離れた位置にいた。すると、服のポケットから何かを取り出す。
「私が言ったら、みんなも言ってね。五人いるから、五回ね。〝ヤミヨミサマ、聞いてください聞いてください。わたしたちはこの村を愛しています。〟」
わたし含む四人は亜希子と同じように言ってみせた。しかも、同じ言葉を五回も。この言葉に当時のわたしはなんの疑問も思わなかった。
手のぬくもりで、不安と緊張が肌から伝わってくる。また、亜希子が神妙な面持ちで言う。
「〝あなたが求める穢れの血はわたしたちが奪い取ってみせましょう〟」
また、わたしたちは五回も揃って言う。すると、亜希子が口を閉ざし、次にしてみせたのは内ポケットに手を入れていたことだった。
人型に切った一枚の紙。黒い封筒。それと、黒く染まった糸。黒い封筒に人型人形の紙を入れ、封筒ごとクルクルと巻物状にした。巻物状にすると、黒い糸で結ぶ。
4人は亜希子のしている行動を黙って見守るしかなかった。亜希子が取り出したのはなんなのか、この時、聞けば良かった。
糸をキュとキツく結び、亜希子が井戸に向かう。その時、冷静沈着な礼子が声をあげた。
わたしの左横で手を繋いでいたのが、突如離し、温もりが去っていく。
「それは呪詛よ! やめなさいっ!!」
わたし、洋介、景子が目を丸くして礼子を凝視した。礼子はいつも、冷静で物怖じしない顔つきが今や恐ろしいものでも見てるかのような青白い顔していた。それと、同様、亜希子の顔も蒼白だった。
「じ、呪詛…? なにそれ」
わたしが恐る恐る礼子に聞いてみる。こんなピリピリして緊迫した空気は今まで初めてだったので、内心ドキドキした。
礼子は数秒経ってから、わたしの質問に答えてくれた。それまで、沈黙の渦だったのだ。
「人を呪い殺す事ができる技よ」
「でたらめ言わないで!!」
亜希子が化物のような声をだした。その場はまた不安と緊迫の空気となる。真っ暗な視界の中、亜希子は明らかに礼子を睨んでいた。いつもの亜希子じゃない。そう、思った。
「呪詛? ばかばかしい。あたしは普通に肝試しを楽しんでいる所よ」
「じゃあ、その黒い封筒の中に入っている人型の紙切れ、見せてちょうだい」
そう言った途端、亜希子は明らかに巻物状を腰にまわし、隠した。言い逃れできないように礼子は亜希子に詰め寄る。
わたしは一体何がどうなっているのかさっぱりでした。仲が良い二人がこうなるなんて、見た事もないし、見たくもなかった。
「二人とも、やめて!」
わたしが二人の間に入った。これで、どうなるかはわからない。けど、あのまま誰も止めに入らなかったらもっと、二人の仲が悪くなる。そう、思って突発的に行動したのだ。
「あーもう! 肝試し終わり! 帰ろ!」
亜希子が落胆したふうに肩をすくめ、反対方向に歩いていった。その場に残ったみな、仰天で訳がわからず立ち尽くす。
亜希子が振り返らずどんどん帰る方向に足を進むにつれ、麻耶たちは黙ってそのあとを着いていくしかなかった。
亜希子、景子、洋介へと順々に裏山をでて、最後の列はわたしと礼子だった。二人は他のみんなから離れて歩く事にした。
「ねぇ、なんでわかったの? じゅそなんたらって事」
わたしが礼子に問いてみた。礼子はいつも持ち歩いている分厚い本を取り出し、わたしの前につきだした。
「本に書いてあるの。因みに、さっき亜希子がやった方法は一番強力でもっとも残酷なものなんだ」
自慢気に言う礼子は文学少女さながらにペラペラ喋りだした。わたしはあまり、本を読む事態も習慣もないので本についてあまり興味もないし、読まないのだ。しかし、目の前にいる文学少女は目を輝かせている。
「そうなんだ……なんでそんなのを亜希子が?」
「わかんない。けど……」
言葉を詰まらせた。
この日、無事集会場に帰って家にやっとの事で帰れた。亜希子と礼子の関係がこれからどうなるのか家に帰っても心配でした。夜も眠れない程。
もし、仲が悪くなったらわたしがいるから大丈夫だよね。うん、そうだ。明日、学校に行ってひとまずなんとかしてみせよう。
わたしは温かい布団の中、のうのうと思いました。
※本作でとりおこなった「呪詛」の方法はオリジナルです。
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