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二 名取美優
第34話 これが本当の話し
しおりを挟む平和でのどかな国、日本。かつて、何千人と死者をだした戦争は遥か昔と言われ今は平和な国で、人々は甘い余韻に生きている。
与えられた平和な時代に若者はなにを思うか。会社、学校、行き来しながら私たち、若者はお金、愛情、と欲を欲する。
目の前にある〝大切なもの〟さえ見つけられない。大切なものとは一生かかっても応えなんて見つからないだろう。凡人であれば凡人であるほどね。
でも、それは私でも言える立場かも。
赤い茜色の陽が教室を赤く染める。窓から運動場の砂と夏に香る涼しい風が教室にいた私たちの髪をなびかせていた。
「んっ……あんトオルくん、そこ……イイッ」
誰もいない放課後、私の声が甘く教室内に響いていた。ヌチュヌチュ、と性器どうしがぶつかる卑猥な音がより一層興奮を高めてくれる。
「美優ちゃん、気持ちいい?」
正常位で私の上になっている男が問いかけてきた。目をギラつかせて口をパクパクさせている。夏だから仕方ないけど、あんたの脂汗でこっちはベトベトだっつうの。正直言って気持ち悪い。
どうして行為中にそんなこと聞いてくるのか私には疑問だわ。それに急に冷めて萎えてくる。
「え、どうしたの美優ちゃん」
私は男のアレを抜き取り、パンツとスカートを穿いて廊下に向かった。下半身がベトベトするからトイレで拭こう。
私は振り返り、さっきまで熱く抱き合った男を軽蔑した眼差しで見た。
「ごめんね。今日は家の事情があって帰らなきゃ、それじゃまた学校でね」
ニコッと笑って私は教室を出た。男は下を露出しながら呆然と突っ立っていた。
「それじゃまた学校……て夏休みじゃんか」
男がポツリと呟いたのは私は知らない。きっと、夏風でかき消されたんだ。
私の名前は名取 美優。こうみえても小学五年生である。私は昔から性について人一倍興味があり、誰よりも体験してきたと自分でも思う。
目覚めたのは保育園の時。私が寝たあと両親が性行為をやっているのを偶然目撃したため、習って自分でもやってみたらおかしなほど夢中になった。
でも、男とヤリだしたのは最近だよ。それまでは動画だったりオナニーだったり。
小五にして汚い体だなぁと、歪に思う。窓から見える運動場からけたましく女子生徒の掛け声が耳に轟いた。
気温三十六どを上回る炎天下、こんな真夏にどうしてあんな夢中になって体を動かしているのか、私は疑問に思って仕方がない。
「帰ろ……」
そう思ったのは本能だ。そして、素直な思考だ。
明日から楽しみの夏休み。みんな、海とか旅行とか笑いあっていたけど私の夏休みは一味違う。私の夏休みは、故郷帰りから始まる。母方の故郷の村に一週間滞在することはほぼ名取家のルールと化している。
私はこのまま学校に残りたいほど、強烈に嫌なのだ。明日を期待しないほど母方の故郷が嫌いなのだ。
しかも、一週間。夏休み始まる一日目からだよ。みんなは遊びまくっているのに私だけはコンビニエンスストアもない電子機器も知らない村で過ごすことなんて、死を宣告されたのと同じ。
あぁ、明日は憂鬱だ―……。
7月28日(土)
さんさんと熱く照らす太陽はアスファルトの道を陽炎が生まれてた。ゆらゆらと揺らめく陽炎はほんとに遠くの景色を惑わしている。
私は車の窓を全開に開け、涼しい風と一瞬だけむわんとする暑さを車内に入れた。途中でコンビニエンスストアで買った買い物袋がガサガサと大きく音をだし波打つ。
車が進むにつれて、窓から見える景色は変わっていく。高層階や建物が明らかに減って緑の景色が増えている。都会から離れたことに気づく。
「おい閉めないか」
ガサガサと大きな音の買い物袋に苛立ったお父さんが運転席から私に声をかけてきた。年相応にしわがれた声。
助手席に座っているお母さんが満面な笑みでお父さんを宥めた。
「いいじゃないの。暑いのだから」
お父さんはそれを聞いて、肩を落としため息をついた。
「お母さん、甘やかすんじゃない」
「いいじゃない」
お母さんはフフと笑った。お母さんがこんな満面な笑みを送っているのは理由がある。
母は故郷が好きなのだ。そんなに好きなら、村を出て都会に来なくてもと思うが両親が結婚するには村を出ることが最大の条件だったらしい。愛のため、母は故郷を捨て父とくっついた。
そんな母のため、父は申し訳ないと思ったらしく故郷帰りを提案した。そこから、名取家ルールが考案された。
私は後ろの席でお父さんとお母さんが仲睦まじく笑いあっているのを見て、目線を窓の景色にそらした。そうでもしないと私だけが小さくなる。
だんだんと、奥ゆかしい道になってきた。道も何年か前に舗道されたものらしくガタガタと揺れる。辺り一面、天に届きそうな木が生い茂る林。昼間でしかも真夏なのに暗い。ヒンヤリとした冷気が肌に伝った。私は全開に開けた窓をしめ、早く着かないかと願った。
林を抜け、グニャグニャと折れ曲がった下り道を何度も何度も通る。
その反動で体があっちいったりこっちいったり、バックがあっちこっちに転がる。荷物に体があたって痛い。揺れに対しても吐き気がきそう。死ぬほど味わったグニャグニャ道を抜けたあと、村の名前が書かれた小さな看板を見つけた。
赤い血文字を連想できる不気味な文字。
「もうすぐだな」
「えぇ、もうすぐね」
まだ、あるのか。早く着いてほしい。朝起きて既に五時間が経過している。山奥にも程があるでしょ。
いきなり、カッと照らしだした太陽。林から顔をだした太陽はこれまでに明るくギラギラだ。見渡す限り田んぼ、田んぼ、田んぼ、あとついでに疎らに民家。自然が生きているて言葉はこの村の言葉だな。
車がいきなり止まった。辺り田んぼしかない一軒家。古臭いのは見た目からも香る。木造住宅だ。外にいらなくなった何重ものの畳が置いてあった。それだけで昔ながらのお家だって気づく。
お母さんがドンドンと扉を叩いた。呼び鈴はないらしい。まさしく古風。私の母の旧姓は〝田村〟だ。
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