折々再々

ハコニワ

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再々

第61話 痣

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 富美加が作ったものは冷やし麺と唐揚げだった。人数分作るのに手間取って辺りはほんのり薄暗い。小さな屍人が這っている。
「ごめんなさい。遅れて」
「美味しかったら許します!」
 四葉さんもパタパタと台所から品を持ってくる。皆手を合わせていただきます、と唱えた。
「お兄ちゃん、私たちが作ったから残さないでよ」  
「お兄ちゃんなぁ、朝からバイトで大変だったんだぞ。こんなの食える食える」
「うーん。人様の作る飯はうまいなぁ」
 伊礼がパクパク食べていく。
「料理好きなの?」
 琉巧が話しかける。
 優男のような優しい声。兄から危険人物だと言われてその人物から話しかけられてどう対処したらいいか戸惑う富美加にまず助け舟を出したのは横にいた四葉さんだ。
「困っているじゃない。やめなさい。困ったときはお義姉さん頼ってね」
「ははは、四葉お姉ちゃんありがとう」
 そのあと琉巧をしめたことは言うまでもない。


 ご飯を全部完食したら三人は帰っていった。屍人は暗い場所で多く這っているからここはより危険だ。だから懐中電灯を多めに持たせたが、伊礼以外の二人は持参してたから伊礼に三つ懐中電灯を持たせた。
「富美加、もう遅い。ここから実家まで帰るには夜道は危険べ。ここに泊まっていけ」
「端っからそのつまり。お泊り用バック持参してるから!」
 部屋の隅に見慣れない大きなバックがあった。泊まるき満々かよ。食べた皿はシンクで。作ってくれたのは富美加で後片付けは俺がやろう。富美加は風呂へ。
「お兄ちゃんあん人のことどう思ってる?」
 富美加が怪訝な声で訊いてきた。
 お風呂場でも声が通じる。壁が薄いからな。
「どうって誰の事べ」
「あの女じゃ。独りよがりに自分のことお義姉さんて言ってきた女!」
「あぁ四葉さんのことか。優しい人だったろ」
「どこか⁉ あの女、お兄ちゃんのこと厭らしい目で見とった! あのお兄さんより要注意人物じゃ」
 四葉さんそんな人じゃないけどな。富美加と接してたときは特に表情筋柔らかかったし。

 風呂から上がった富美加は下着一枚でこちらにやってきた。髪の毛からポタボタと水滴が落ちてきてるのにそのまま。
「こらっ! そんな薄着じゃ風邪を引く!」
 首に掲げていたタオルを取って頭をワシワシさせる。富美加は無抵抗でされるがまま。いっつもこうだからな。いっつも富美加は水滴垂らせながら歩く。そしてわざわざ俺のところまで来て濡れた髪の毛を拭かせる。全くいくつになっても子供なんだから。
 下着一枚から微かに見えた痣。

 富美加には生まれつき胸に痣があった。黒くて斑点模様の大きな痣。これは病気の一種で古来からあるらしい。古来では【蛇病】と呼ばれていたが現代では【日の手病】と呼ばれている。それはなぜか、古来からこの病に患った人は太陽の陽の光を一切浴びれない程徹底的に隔離されていた。施しようはない。だがこの病にようやく治療法が改善された。

 陽の光を浴びることだ。この病は暗い場所に行けばいるほど痣が体を侵食。古来の隔離方法では百%死亡する治療だった。この痣は太陽を嫌い、侵食しない。富美加は小さい頃から外で遊び田んぼも手伝っていたことが良好。痣の侵食は免れた。
「もうどこ見てるのお兄ちゃんのエッチ!」
 富美加の胸の痣を見過ぎてまだ発育していない胸を見ていると思われた。
「だいぶ小さくなったな、と思って」
「ふん! 言い訳がましい。どーせ私のおっぱいガン見してたんべ!」
「してないしてない」
 少し乱暴に頭を拭いた。富美加は「ぎゃー」と叫ぶ。

 我が家に布団は一枚しかない。そんなの知ってか知らすか富美加が実家の自分の布団まで用意してきた。用意周到だな。電気を消し、久しぶりに兄妹で寝る。俺は床で富美加は俺のベットを使っている。妹を床に寝かせるなんてさせないからな。
「お兄ちゃんの匂いずごい。かれー臭んだ」
「ぞがな臭いか? マクラ替えっか?」
 一度上体を起こすと富美加は勢い良く首を振った。「これがいい」とマクラを握った。痩せ我慢すんな、て言っても言うこと聞かないしな。



 一夜明けてあさが来た。
 朝起きると富美加がベットにいなくてかわりに台所に立ってパタパタと忙しそうに料理してた。なんだかその姿は小さいなかがらも一生懸命で健気だ。
 布団から出て台所へ向かう。
「富美加、おはよう。悪いな」
 髪の毛をポリポリかく。
「お兄ちゃん、おはよう! お兄ちゃんの妹なんべお兄ちゃんの栄養を管理するのが妹の務め!」
 富美加は自慢げに微笑む。愛くるしい。頭をポンポンすると富美加は「子供扱いすんな」とムスッと顔を膨れるが手を振り払わない。これはお兄ちゃんの特権かな。

 朝食はパンに目玉焼きが乗ったものとサラダ。おまけにヨーグルトまで。一人暮らしで食卓がここまで豪華になった姿は初めてだ。普段はコンビニの賞味期限切れのものをボソボソと食べて、食卓は物静かに何も置いていない。
「うまい」
「当たり前べ」
「今日帰れよ。お袋心配してるぞ」
「お兄ちゃんと常にいるから大丈夫べ」
「お兄ちゃんこれからバイトやぞ? 帰れ帰れ」
 富美加はムスッとした表情し睨みつける。睨みつかれてもバイトなのは変わらん。  
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