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Ⅴ 救済の魔女
第86話 魔女裁判
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こんなところで、冷静になれるわけがない。わたしも心の中では、声をあげて騷ぎたい。
隙間から地上の光が届かない、真っ黒な場所。窓もないから、地上の光が恋しい。冷たくて、寂しい場所。こんなとこ、ずっといたら頭が狂いそう。
怖いし、臭いし、汚いし、足元で何かが這いつくばった。虫だ。足がいっぱいある虫。わたしはびっくりして思わず叫んだ。
「きゃ!」
その悲鳴は、甲高く響いた。すぐに反応したのはリュウ。
「大丈夫か!? 何かあったか?」
「だ、大丈夫……ただの虫」
そう言うと、安堵の息がこぼれた。蟻はみたことあるけど、こんな虫みたことない。虫に詳しくないから、この奇妙な生物がこの世に存在していたなんて。
すると、光の筋が走った。向こうの扉から何者かが入って来る。ちょっと隙間が開いただけなのに、神々しい光が照らされた。
何者かが、ランプをつけた。
途端、暗かった牢の中が光に包まれた。ずっと暗闇の中にいたせいで、光を浴びると目がパチパチする。
目を開けると、暗かった牢内に色が宿っている。眩しい。こんなに眩しかったけ。牢にやってきたのは、ハルトだった。
「良かった。みんな、拷問されてない」
ほっとした様子で駆け寄ってきた。
シルクハットで黒を強調した服装だったのに、今は全身白を強調したもので、金が入っている。何処ぞの偉い人ですか。
ハルトがやってきたから、ナズナ先輩たちは、ギャン泣きした。
「うわーん! 助けにきたぁ! 良かったぁ!」
ポロポロ涙を流して、檻から手を伸ばしている。
「どうしてここに? その格好……」
シノが問いだした。牢に入っても、冷静なのは変わらない。ハルトはさっと顔を俯いた。
「格好のことはどうでもいい。それより、助けにきた」
懐から何かを取り出した。鍵だ。この牢の鍵。ハルトは順番にそれをさして、みんなを解放した。ナズナ先輩マナミ先輩は、お互い抱きしめあっていた。
シノも若干ホッとした様子で、息をしていた。
「みんな、早くここから出ないと」
ハルトが小声で叫んだ。
「魔女裁判ですね」
マドカ先輩が静かに言った。わたしたちは、一斉に固まった。裁判だと聞いて、理不尽なことを言われそうなのが、全員の頭に巡った。ハルトは否定しなかった。
「裁判て何すんの?」
恐る恐る訊く。ハルトは不快な表情をしていた。
「魔女を裁判にかけて、殺すことだ」
ざわついた。
みんな、暗い表情でだんまり。それぞれ予想した嫌な予感が的中した。裁判をかけるけど、結局殺されるのは間違いない。裁判という名の死刑宣告。
「罪状は!?」
ダイキが真剣な表情で、訊いた。
「王様に楯突いた事、宮殿に侵入したこと、その罪。魔女及び、魔女協会の人も裁判にかけられる」
どうして魔女協会の人たちまで。
魔女は組織で言うなら、幹部。で、その上のトップにいるのが魔女協会。魔女協会が呼ばれるのも、おかしくない。
「すみません」
ぼそりとマドカ先輩が呟いた。
「どうして謝んるのですか?」
不思議に訊く。マドカ先輩は、肩を落としてしょんぼりしていた。
「それは、私がこの案を企画したからに、関係のない魔女協会やあなたたちまで、巻き込んで……すみません」
マドカ先輩は落ち込んでて、せっかく可愛くお化粧した顔が、だんだん暗くなっていく。わたしは慌てて手を握った。マドカ先輩がこれ以上、闇に染まらないように。
マドカ先輩はびっくりして、小さな悲鳴をあげる。
「わたしが先です! 王様を説得しようと考えたのは、わたしが先です!」
「でも、乗り込むと言ったのは私で――」
「いいえ、わたしが先です!」
「え、え? あの、えっと」
マドカ先輩は、困惑気味。押しに弱いタイプだな。マドカ先輩はそのまま押されていった。これでよし。これについて、マドカ先輩のせいじゃない。
全ては、わたしから始まったことだ。
「長話はあと! もうすぐ、やつらがやってくる」
ハルトが慌てて踵を返した。扉を少し開いて、外の廊下をキョロキョロとうかがう。魔女裁判にかけられる前に、逃げないと。
王様を説得することも、クーデターの件に関して、何も変わっていない。むしろ、悪化した。王様が〝あんな〟だったなんて。
ハルトが外の廊下をうかがいながら、こちらに話しかけた。
「廊下は護衛だらけ。何処も隙がない」
「思い出して。あなたはどうやってここまで来たの。来た道を辿れば帰れる」
シノがハルトに向けて、語りかけた。ハルトは、うわ言のように来た道の話をした。護衛の人たちに王様が呼んでいると嘘をついて、厳重な監視を簡単に通り抜けた。
その方法じゃ、こっから出られない。
一か八か、わたしは外に向かって、髪飾りを投げた。向こうの壁まで飛ばされただろう。カランカランと乾いた音が反響し、護衛が慌てた様子で駆け寄っていく。
よし、今だ。
わたしたちは、大勢の監視の目をすり抜け、牢から出た。その矢先――。
「出られなくて、結構」
わたしたちの知らない声。この場の誰でもないひとの声。喉をつぶしたように声が低くて、重みがある。
わたしたちは一斉に固まった。声がした方向を恐る恐る振り向く。わたしたちの背後に、ご老体の紳士が立っていた。
そう見えるけど、執事服から微かに盛り上げた筋肉が垣間見えて、この人、只者ではないと悟る。
ハルトは一気に青白い顔に。
「みんな、俺が合図送ったら全速力で逃げて。やつは、俺が食い止める」
かっこいいこと言ってるけどハルトには無理だよ。そんな細腕だし、何より声がうわずっている。
「ハルトを残して逃げることはできない」
一同その想いは一緒だった。
結局、また捕まることに。
おじいちゃんなのに、その拳はまるで鉄球。しかもその鉄球は、問答無用に振りかざしてくる。ナズナ先輩もマドカ先輩もシノも、みんなやられて、わたしも、気絶させられた。
次に目が覚めたとき。目の前に広がっていた光景は、薄暗い牢の中……ではなく、大勢の人たちに囲まられていた。
ほんのり薄暗い。頭上から夥しいほどの、視線が注いでくる。どの方角からも、好気や侮辱の視線。痛いほどささってくる。
恐る恐る隣を確認した。みんないる。わたしみたいに、後ろに手を縛られている。ここは――
「これより、魔女裁判を始める」
威厳に満ちた声。
そして、パッと照明がついた。瞬間、ここが何処で、今から何をするのか理解した。ここは裁判所。頭から降り注いでくる大勢の野次馬の視線。中央には、弁護士もついてもらっていない、わたしたち。
そして、その前にいるのは王様。
野次馬たちと同じ視線だった。
「この者たちは、ハルト皇子を誘拐し、宮殿に侵入し、王様に楯突いた。これは重罪だ。私刑ほど生ぬるい刑には処せん。拷問に至る」
待って待って。話が飛躍しすぎてる。
残りの二つは分かるけど、ハルトのことを誘拐したって、そんなのデタラメよ。
「これは裁判じゃないの? 話を三段飛ばしで、もう刑が処せられてる。横暴だわ。裁判の意味、わかってんの?」
シノが冷たく、声に向かって批判してくる。
野次馬たちから「残忍な拷問で殺せ」「私ね」など、人間性の欠片もない怒声が浴びせられる。終いには、上からゴミが投げつけられてくる。
一番先に口を開いたシノの頭に卵が投げつけられた。月光のような白い髪の毛が、卵白でぬるりとテカテカしている。
「あいつら!」
「平気」
ダイキがカッと怒った。それを抑制したシノ。シノは頭を振って卵白や、カラを振り落とした。
鉄槌が五~六回鳴った。
「静粛に!」
全員が静かになるまで、鉄槌は落とされていく。騒いでいた室内が一気にしぃんと静かになった。キィィンとまだ反響している。静かになり、暫くしてから威厳のある方が話を続けた。
「被告人の言うとおり。裁判なのに、先に刑を処した。裁判を始めよう。今度こそ」
王様は疲れたと、ため息をこぼす姿がみえた。退屈そうな表情。ハルトと親子なんだけど、全然似ていない。
ハルトのほうが、全然好印象だよ。
魔女裁判が始まった。
最初は、魔女協会の人たち。集会では、頭まで深く帽をかぶっていたせいで、はっきりと顔は見えなかった。
帽を外してようやく、お顔が確認できる。わたしたちより年下の少年少女たちだった。まだ十五か十七辺りの。
こんな子供たちが魔女協会の一員だったなんて。はっきり言えば、務まらなきゃいけない理由があったんだ。今まで築き上げた先代たちは捕まり、残ったのは子供のみ。
少年少女たちは、わたしたちよりも覚悟を決めた表情で台の上に立っていた。物怖じしてない。真っ直ぐ、王様の顔を見ていた。
裁判の始めはこうだった。
アリス様をどうして神界に返したか。アリス様をもっと労ってやらなかったのか。アリス様に関しての罪だった。そんなの、先代の話で後継者の子供には、よく分からない事なのに。でも、少年ははっきりと弁明した。
「アリス様は、お前たちの欲が嫌いになったから神界に逃げた。お前たちがこうして暴れていることも、全部あの方にとって涙を流すことしかできないだろう」
隙間から地上の光が届かない、真っ黒な場所。窓もないから、地上の光が恋しい。冷たくて、寂しい場所。こんなとこ、ずっといたら頭が狂いそう。
怖いし、臭いし、汚いし、足元で何かが這いつくばった。虫だ。足がいっぱいある虫。わたしはびっくりして思わず叫んだ。
「きゃ!」
その悲鳴は、甲高く響いた。すぐに反応したのはリュウ。
「大丈夫か!? 何かあったか?」
「だ、大丈夫……ただの虫」
そう言うと、安堵の息がこぼれた。蟻はみたことあるけど、こんな虫みたことない。虫に詳しくないから、この奇妙な生物がこの世に存在していたなんて。
すると、光の筋が走った。向こうの扉から何者かが入って来る。ちょっと隙間が開いただけなのに、神々しい光が照らされた。
何者かが、ランプをつけた。
途端、暗かった牢の中が光に包まれた。ずっと暗闇の中にいたせいで、光を浴びると目がパチパチする。
目を開けると、暗かった牢内に色が宿っている。眩しい。こんなに眩しかったけ。牢にやってきたのは、ハルトだった。
「良かった。みんな、拷問されてない」
ほっとした様子で駆け寄ってきた。
シルクハットで黒を強調した服装だったのに、今は全身白を強調したもので、金が入っている。何処ぞの偉い人ですか。
ハルトがやってきたから、ナズナ先輩たちは、ギャン泣きした。
「うわーん! 助けにきたぁ! 良かったぁ!」
ポロポロ涙を流して、檻から手を伸ばしている。
「どうしてここに? その格好……」
シノが問いだした。牢に入っても、冷静なのは変わらない。ハルトはさっと顔を俯いた。
「格好のことはどうでもいい。それより、助けにきた」
懐から何かを取り出した。鍵だ。この牢の鍵。ハルトは順番にそれをさして、みんなを解放した。ナズナ先輩マナミ先輩は、お互い抱きしめあっていた。
シノも若干ホッとした様子で、息をしていた。
「みんな、早くここから出ないと」
ハルトが小声で叫んだ。
「魔女裁判ですね」
マドカ先輩が静かに言った。わたしたちは、一斉に固まった。裁判だと聞いて、理不尽なことを言われそうなのが、全員の頭に巡った。ハルトは否定しなかった。
「裁判て何すんの?」
恐る恐る訊く。ハルトは不快な表情をしていた。
「魔女を裁判にかけて、殺すことだ」
ざわついた。
みんな、暗い表情でだんまり。それぞれ予想した嫌な予感が的中した。裁判をかけるけど、結局殺されるのは間違いない。裁判という名の死刑宣告。
「罪状は!?」
ダイキが真剣な表情で、訊いた。
「王様に楯突いた事、宮殿に侵入したこと、その罪。魔女及び、魔女協会の人も裁判にかけられる」
どうして魔女協会の人たちまで。
魔女は組織で言うなら、幹部。で、その上のトップにいるのが魔女協会。魔女協会が呼ばれるのも、おかしくない。
「すみません」
ぼそりとマドカ先輩が呟いた。
「どうして謝んるのですか?」
不思議に訊く。マドカ先輩は、肩を落としてしょんぼりしていた。
「それは、私がこの案を企画したからに、関係のない魔女協会やあなたたちまで、巻き込んで……すみません」
マドカ先輩は落ち込んでて、せっかく可愛くお化粧した顔が、だんだん暗くなっていく。わたしは慌てて手を握った。マドカ先輩がこれ以上、闇に染まらないように。
マドカ先輩はびっくりして、小さな悲鳴をあげる。
「わたしが先です! 王様を説得しようと考えたのは、わたしが先です!」
「でも、乗り込むと言ったのは私で――」
「いいえ、わたしが先です!」
「え、え? あの、えっと」
マドカ先輩は、困惑気味。押しに弱いタイプだな。マドカ先輩はそのまま押されていった。これでよし。これについて、マドカ先輩のせいじゃない。
全ては、わたしから始まったことだ。
「長話はあと! もうすぐ、やつらがやってくる」
ハルトが慌てて踵を返した。扉を少し開いて、外の廊下をキョロキョロとうかがう。魔女裁判にかけられる前に、逃げないと。
王様を説得することも、クーデターの件に関して、何も変わっていない。むしろ、悪化した。王様が〝あんな〟だったなんて。
ハルトが外の廊下をうかがいながら、こちらに話しかけた。
「廊下は護衛だらけ。何処も隙がない」
「思い出して。あなたはどうやってここまで来たの。来た道を辿れば帰れる」
シノがハルトに向けて、語りかけた。ハルトは、うわ言のように来た道の話をした。護衛の人たちに王様が呼んでいると嘘をついて、厳重な監視を簡単に通り抜けた。
その方法じゃ、こっから出られない。
一か八か、わたしは外に向かって、髪飾りを投げた。向こうの壁まで飛ばされただろう。カランカランと乾いた音が反響し、護衛が慌てた様子で駆け寄っていく。
よし、今だ。
わたしたちは、大勢の監視の目をすり抜け、牢から出た。その矢先――。
「出られなくて、結構」
わたしたちの知らない声。この場の誰でもないひとの声。喉をつぶしたように声が低くて、重みがある。
わたしたちは一斉に固まった。声がした方向を恐る恐る振り向く。わたしたちの背後に、ご老体の紳士が立っていた。
そう見えるけど、執事服から微かに盛り上げた筋肉が垣間見えて、この人、只者ではないと悟る。
ハルトは一気に青白い顔に。
「みんな、俺が合図送ったら全速力で逃げて。やつは、俺が食い止める」
かっこいいこと言ってるけどハルトには無理だよ。そんな細腕だし、何より声がうわずっている。
「ハルトを残して逃げることはできない」
一同その想いは一緒だった。
結局、また捕まることに。
おじいちゃんなのに、その拳はまるで鉄球。しかもその鉄球は、問答無用に振りかざしてくる。ナズナ先輩もマドカ先輩もシノも、みんなやられて、わたしも、気絶させられた。
次に目が覚めたとき。目の前に広がっていた光景は、薄暗い牢の中……ではなく、大勢の人たちに囲まられていた。
ほんのり薄暗い。頭上から夥しいほどの、視線が注いでくる。どの方角からも、好気や侮辱の視線。痛いほどささってくる。
恐る恐る隣を確認した。みんないる。わたしみたいに、後ろに手を縛られている。ここは――
「これより、魔女裁判を始める」
威厳に満ちた声。
そして、パッと照明がついた。瞬間、ここが何処で、今から何をするのか理解した。ここは裁判所。頭から降り注いでくる大勢の野次馬の視線。中央には、弁護士もついてもらっていない、わたしたち。
そして、その前にいるのは王様。
野次馬たちと同じ視線だった。
「この者たちは、ハルト皇子を誘拐し、宮殿に侵入し、王様に楯突いた。これは重罪だ。私刑ほど生ぬるい刑には処せん。拷問に至る」
待って待って。話が飛躍しすぎてる。
残りの二つは分かるけど、ハルトのことを誘拐したって、そんなのデタラメよ。
「これは裁判じゃないの? 話を三段飛ばしで、もう刑が処せられてる。横暴だわ。裁判の意味、わかってんの?」
シノが冷たく、声に向かって批判してくる。
野次馬たちから「残忍な拷問で殺せ」「私ね」など、人間性の欠片もない怒声が浴びせられる。終いには、上からゴミが投げつけられてくる。
一番先に口を開いたシノの頭に卵が投げつけられた。月光のような白い髪の毛が、卵白でぬるりとテカテカしている。
「あいつら!」
「平気」
ダイキがカッと怒った。それを抑制したシノ。シノは頭を振って卵白や、カラを振り落とした。
鉄槌が五~六回鳴った。
「静粛に!」
全員が静かになるまで、鉄槌は落とされていく。騒いでいた室内が一気にしぃんと静かになった。キィィンとまだ反響している。静かになり、暫くしてから威厳のある方が話を続けた。
「被告人の言うとおり。裁判なのに、先に刑を処した。裁判を始めよう。今度こそ」
王様は疲れたと、ため息をこぼす姿がみえた。退屈そうな表情。ハルトと親子なんだけど、全然似ていない。
ハルトのほうが、全然好印象だよ。
魔女裁判が始まった。
最初は、魔女協会の人たち。集会では、頭まで深く帽をかぶっていたせいで、はっきりと顔は見えなかった。
帽を外してようやく、お顔が確認できる。わたしたちより年下の少年少女たちだった。まだ十五か十七辺りの。
こんな子供たちが魔女協会の一員だったなんて。はっきり言えば、務まらなきゃいけない理由があったんだ。今まで築き上げた先代たちは捕まり、残ったのは子供のみ。
少年少女たちは、わたしたちよりも覚悟を決めた表情で台の上に立っていた。物怖じしてない。真っ直ぐ、王様の顔を見ていた。
裁判の始めはこうだった。
アリス様をどうして神界に返したか。アリス様をもっと労ってやらなかったのか。アリス様に関しての罪だった。そんなの、先代の話で後継者の子供には、よく分からない事なのに。でも、少年ははっきりと弁明した。
「アリス様は、お前たちの欲が嫌いになったから神界に逃げた。お前たちがこうして暴れていることも、全部あの方にとって涙を流すことしかできないだろう」
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