一目惚れしました。

月夜 雪姫

文字の大きさ
上 下
7 / 10
一目惚れ

一目惚れ・⑦

しおりを挟む
 今日は紫乃と二人でデート。
デートと言ってもそう思っているのは私だけだと思う。
なぜなら、彼女には好きな人がいるからだ。
 昨日メールで恋愛相談された。紫乃には、

「結衣、恋愛経験豊富そうだし、彼氏いるし、いろいろわかるのかなって思って。」

いつもの淡々とした口調だったが、顔はすこし赤かった。
紫乃もこんな顔するんだなと思った。
やっぱり可愛い。

 話を戻すが、私は恋愛経験なんて全く豊富じゃない。
何度か告白されたこともあるし、付き合ったこともあるが、それは全部本命じゃない。
流れで付き合ったみたいなものだ。

だから、本当の恋愛なんて分からない。
また、私の紫乃に対するこの気持ちも“恋”と言えるのかも曖昧だ。

「私、あんまり恋愛とかしたことなくてさ~!」

と誤魔化しておいた。
すると、紫乃は驚いたように、

「そうなんだ、意外。結衣可愛いからてっきりそうなのかと。」

といつもの口調で言った。
最後の言葉はずるいよ、、。
やっぱり私は紫乃が好きだ。
流れで告白してみよう。
そして、本気にされなかったら諦めよう。
紫乃とは友達のままでいることにしよう。
そう決意して、勇気を振り絞り口を開く。

「そんなことないよ~!それに、可愛いのは紫乃の方だよ!!私、そんな紫乃が好き。」

言ってしまった。
紫乃の反応を伺う。
すこし驚いたような表情を浮かべていたが、すぐに無表情になった。そして、今まで見たことないような笑顔で、

「ありがと、結衣。私も好きだよ、紫乃のこと。」

と微笑んだ。

これはこれでいいかな、と思った。
友達だから、こんな他愛ない言葉を交わせるのだと自分に暗示をかけた。

 ほんとに、紫乃の友達にになれてよかった。

 私の想いは、心の中に閉じ込めることにしよう。

 今の紫乃との関係を壊さないためにも。



結衣’s Story→The end.








一目惚れ・⑧に続く。
しおりを挟む

処理中です...