全力を出すと全裸になる男の学園生活(仮)

きんぺー

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去る者②

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 帝立ヤサカニ学園。国内でも随一の生徒数を誇るこの学園は、その生徒数に比例して敷地も広大だ。
なにせこれまた国内でも一、二を争うような大きさの山ひとつをまるまる使って学園を形成している言うのだから、どのくらい広いか簡単に想像でき……ないな。
とにかく、初めてその外観を見た者は皆、否応なく圧倒されること間違いなし。それくらい広い。
……さっきから広い広いと俺が何を言いたいかと言うとだ。
「遠いわあァ!」
 山ひとつとかふざけんじゃねえよ! 広すぎるわバカ!
 設計者はそこで生活送る奴のこと少しは考えろよ!
 校舎間の移動だけでどんだけかかると思ってんだ!
「間に合わねえ。ぜってえ間に合わねえ。でも退学は嫌だあァァ!」
「大声出しながら走ると苦しくないか?」
 叫んでいるさなか急に話しかけられる俺。しかも真横から。
聞き覚えのある声だ。チラリとそちらに視線を向けると、やっぱり知っている奴だった。
 そいつは不思議そうな顔をしながら俺の横をバイクで併走している。バイクで。
「哲也、その俺を見て「鴨がネギしょって来やがったぜ!」みたいな顔するの止めてくんないかな。なんか怖いんだけど」
「鴨がネギしょって来やがったぜ!」
「言った!?」
「ありがとう京士郎、俺のために快くバイクに乗せてくれるだなんて!」
「言ってないよ! 俺そんなこと一言も言ってないよ!」
 文句を言う鴨、もとい京士郎。このままではらちが明かないので俺は半ば強引にバイクの後ろへと乗り込んだ。
 京士郎は不満そうな顔をするが、そんなものは関係ない。こちとら退学するかしないかの瀬戸際なのだ。
「あんまり無茶はやめてくれよ、これ借りものなんだからさ。それに重いよ哲也。自分が何キロあると思ってんの?」
「ざっと十万グラムってとこか。良いからさっさとスピード出せ!」
「グラムで誤魔化そうとしてもダメだぞ。キロに直したら千キロにもなっちゃうじゃないか!」
 我が友人の頭の出来に少し悲しくなる俺。
「あ。でも千キロもあったら一トンてことに……体重増えすぎだろ!」
「どんだけバカなんだテメエは!?」
 時間も無いのにああだこうだする。しかし流石にそこはバイク、自分で走るより幾分も速い。
 この調子なら間に合いそうだと心に余裕が生まれる――

ファンファンファンファン

――かと思われたのもつかの間。どこからか聞き慣れた嫌なサイレン音。
というか俺たちの後方からだ。
『こちら風紀委員ス。そこのバイクの二人乗り止まりなさいッス』
「げえ!?」
 後ろを振り返るとそこには黒と白のモノトーンで塗られた一台の車。その車体にはでかでかと『風』の文字。
違ってほしかったがあれは間違いなく風紀委員。
 この急いでる時に厄介な奴らがきやがった!
すると一気に風紀委員との距離が縮まっていく。速度を上げてきた? いや違う。俺たちの方がどんどん減速しているのだ。
「おい京士郎! 何やってんだ。このままだと追いつかれちまうぞ!」
 だが京士郎は速度を上げようとはせず、さらに減速する。そしてポツリとこう呟いた。
「ごめん哲也。でも俺、お前と違って風紀委員のお世話になるの慣れてないんだ」
「俺が慣れてるみたいな言い方はやめろォ!」
 週に二、三回くらいだっての!
『良いッスよ、そのまま脇に止め――』
 風紀委員が誘導しようとしたその時
『パァン!!』
 突如、乾いた音と共にヒュッと俺の耳のすぐ近くを通り過ぎる何か。いや、何かは分かる。分かっているから青ざめる俺。そして京士郎。
『ちょ! 先輩いきなり何やってんスか!? いや待って、こっちに銃口向けないでくださいッス! ああ!? そのボタンは押しちゃダメッスよ!』
 物騒な話がスピーカー越しから聞こえてくる。やっぱり奴か、奴も乗っているのか!
 ビュゥン! とさっきまで止まる勢いだったバイクが一気に加速する。京士郎もどうやら俺と同じ考えに至ったらしい。そうだ、それで良い。もっとだ。もっと奴から距離をとるんだ!

だが遅かった。

 俺は加速する最中もずっと風紀委員の車を観察していた。いつでも脱出できるように。
そして見た。ボンネットがパカーと開き、そこからやけにメカメカしい砲台が出てくるのを。
そして出てきてからから一瞬、ほんの一瞬で、俺は、いや俺たちは光の奔流に呑みこまれた。
……つまりふっ飛ばされたのだ。バイクごと俺と京士郎が。その砲台から発射された魔力によって。
「ぐわあああああ!!」
 絶叫と共にヒューンと体が宙を舞っている感覚を味わいながら俺は思った。

ああ、これで最後なのかよ。と。
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