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第33話 ドラゴンスレイヤー
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2階のフロアに置かれている商品はその展示方法に少し違いがあった。置かれている商品の傍に名前が書かれていた。
「この名前は何ですか?」
「それは製作者さんの名前になります。この棚にあるのは炎熱の魔女と言われるフレイアさんが作った服になります。耐熱機能が優れていてドラゴンのブレスを浴びても燃えることがない一品になっています。いまなら全身セットで金貨25枚で販売していますね」
1階との価格差が段違いである。金貨1枚が大体100万円くらいの価値があることを考えれば、実に2500万円の価格になってしまう。ドラゴンのブレスに耐えられる機能なんてものは普段の生活では全く役に立つことはないだろう。一般の人にはお勧めできない理由が垣間見えた気がする。
「これが売れるって事はドラゴンを狩ればかなりのお金になるんですか?」
「そうですね。狩り取った状態にもよりますけど、普通のドラゴンでも綺麗な状態なら白金貨20枚くらいにはなると言われていますよ。詳しくは冒険者ギルドへ行けば分かると思います」
魔物素材の相場を分かっていないが、白金貨20枚はとてつもない金額である。白金貨1枚1億円くらいだから、ドラゴン1匹で20億ということになる。そんなに儲かるなら冒険者という職業はかなり美味しいといえるのではないだろうか。
「白金貨20枚ですか………それは凄いですね」
「そうですね。でも個体数が少ない上に、装備や備品や旅費等を考えると安定して利益を出せる冒険者は少ないですからね。こちらの商品は火山で取れるレアメタルの採掘者なんかが買っていくことの方が多いですね」
「そういうものですか」
この服以外にも防具や武器、それに回復アイテム等を購入すると一人あたり1億くらいかかると考えると大規模で狩っても1匹だけじゃあ赤字になるということか。失敗したら死んでしまうかもしれないということを考えれば白金貨20枚も妥当な値段ということか。しかし、何匹も狩る事ができればお金に困ることもない、ゲームでよくある終盤の99999……のカンスト状態になることができるな。
俺がそんな試算を頭の中でしていると、冒険者2人を案内して2階にあがっていった店員さんが俺達の方に近づいてきた。
「ちょっと、アンナ」
俺を案内していた少女を手招きして、呼び寄せた。
「はい」という返事とともにそちらの方へと近づいていく。
小声で話をしているが、耳をこらせば何を話しているのかが丸聞こえであった。
「あなた、あんな子供を2階に連れてきちゃあ駄目じゃない」
「で、でもお客様が見たいっておっしゃてたので……」
「ここの商品の価格は知ってるでしょう。最低でも金貨1枚はするのよ。なかには変に扱えば機能が損なってしまうものもあるの。相手は子供なんだから、ちゃんと説明して、ここにあがって来ないようにしなきゃ駄目じゃじゃない」
「す、すいません………でも最近噂のドラゴンスレイヤーも子供のころから活躍していたって話を聞きましたし」
「馬鹿!! そのドラゴンスレイヤーは都市伝説よ。本当はいるかどうかも怪しい話なの。それにあの子が冒険者に見えるの? 見えないでしょ。冒険者じゃなきゃ、ここに置いてある商品はあまり意味のない商品なの。早く1階に帰してきなさい」
「わ、わかりました」
アンナは俺の方に戻ってくると申し訳なさそうに切り出した。
「本当に申し訳ありません。まだここのフロアは私には案内してはいけませんでしたので、下に戻ってもらってもいいですか?」
その理論だと他の人に案内を頼めば、このフロアを見て回れるということになるが、先ほどの二人の話し合いが聞こえていたので、そこをついてもなんだかんだで断られそうである。たぶん、俺を1階に戻す理由が即座には思いつかなかったためにそんな事を言っているのだろう。ここで素直に従って1階に戻ってしまってもいいが、そうすると大きくなるまで2度とここに足を踏み入れなくなってしまいそうである。せっかく面白そうな衣服があるのだから是非見てまわりたい。
俺は鞄に手を入れて、闇魔法【ブラックホール】を発動した。そして、金貨10枚ほど掴むと、あたかも鞄から取り出したようにそれらをアンナの前に出す。子供だから購入しないと思われているのなら、その認識を変えればいいのだ。
「お金ならあるし、いい商品があれば購入するけど」
「えっ!!………あっ………」
アンナは言葉に詰まって、何度も首を縦に振った。OKということだろう。俺は鞄に金貨をしまう。アンナは先ほどの店員が去っていった方とは逆の方へと歩いて案内を始めた。
「こちらは先ほどの姉妹の方で氷雪の魔女ブリーディアの作品になります。耐寒性能に非常にすぐれており、これを着ていればドラゴンの【アイスブレス】の中でも温度が下がらないというものになります。そして、こちらが……」
いろいろなステータス異常を未然に防ぐ性能が付与された衣服は聞いているだけでワクワクしてくるものがある。といっても、今のところ冒険者になるつもりはないので、買ってもよいと思われるようなものはない。今買ってもサイズが合わなくなったら、無駄になってしまうからな。俺はその後も店内を案内してもらう。
「それでこちらは、ナターシャという方が特殊な黒糸を使って編んだもので、見た目に反してかなりの重量となる代物になります。このシャツの重量はなんと25キロもするんです。軽そうに見えるけどすごく重くなってます」
「持ってみてもいいですか?」
「いいですよ」
「重っ!!」
片手でつまみ上げようとしたが、持ち上げることができない。
「これって防御力も高かったりするんですか?」
「いえ、こちらはただ重いだけですね。それなのに特殊な素材らしく結構なお値段がするんですよ。なのであまり人気がない商品になっています」
確かに商品が積みあがっているが、俺は説明を聞いてピーンとくるものがあった。これは面白い。
「ちなみに、これと同じ見た目の商品って1回にあるんですか?」
「そうですね。見た目は黒いシャツなので、よく似たものはありますよ」
俺は同じ人の作品である靴やリストバンドについてもいろいろ質問する。その時またさっきの店員が声をかけてくる。
「ちょっとあなた」
「は、はい、先輩」
「何でまだ案内しているの? 駄目じゃない。僕、その商品は金貨3枚もするのよ。汚れたりしたら買い取ってもらう事になってしまうから、置いて下に行きましょうね」
俺の手に持っているリストバンドを取り上げようとする。
「あっ、これ購入します。あとこの靴とシャツと、あとさっき言ってた似ているもので下の階にあるものもこ購入します」
「えっ!!」
「あっ、ありがとうございます」
取り上げようとした店員は驚いた顔をして、アンナはお辞儀した
「僕、これは金貨3枚で、他のも合わせると、金貨20枚はするのよ。銀貨じゃあないわよ」
「大丈夫ですよ」
俺は鞄の中から20枚の金貨を取り出す。
「えっ!!」
「おいおい、なんでこんなガキがこんな大金を持ち歩いてるんだ?」
店員の近くにいた冒険者の一人が声をあげた。
「待て待て。そう凄むな」
もう一人の冒険者がそれを止める。
「いや、子供一人っぽいし。こんな大金を持って出歩いているなんて危なくないか?」
「まあな。しかし、どこぞのお偉い貴族様なのかもしれないな。君は一体何者か聞いてもいいかい?」
すごく興味を持たれている様子であるが、俺はお忍びでここに来ているのだ。本当のことを言うわけにはいかない。
「グリフィスです。はい」
俺は咄嗟に嘘をついた………
「この名前は何ですか?」
「それは製作者さんの名前になります。この棚にあるのは炎熱の魔女と言われるフレイアさんが作った服になります。耐熱機能が優れていてドラゴンのブレスを浴びても燃えることがない一品になっています。いまなら全身セットで金貨25枚で販売していますね」
1階との価格差が段違いである。金貨1枚が大体100万円くらいの価値があることを考えれば、実に2500万円の価格になってしまう。ドラゴンのブレスに耐えられる機能なんてものは普段の生活では全く役に立つことはないだろう。一般の人にはお勧めできない理由が垣間見えた気がする。
「これが売れるって事はドラゴンを狩ればかなりのお金になるんですか?」
「そうですね。狩り取った状態にもよりますけど、普通のドラゴンでも綺麗な状態なら白金貨20枚くらいにはなると言われていますよ。詳しくは冒険者ギルドへ行けば分かると思います」
魔物素材の相場を分かっていないが、白金貨20枚はとてつもない金額である。白金貨1枚1億円くらいだから、ドラゴン1匹で20億ということになる。そんなに儲かるなら冒険者という職業はかなり美味しいといえるのではないだろうか。
「白金貨20枚ですか………それは凄いですね」
「そうですね。でも個体数が少ない上に、装備や備品や旅費等を考えると安定して利益を出せる冒険者は少ないですからね。こちらの商品は火山で取れるレアメタルの採掘者なんかが買っていくことの方が多いですね」
「そういうものですか」
この服以外にも防具や武器、それに回復アイテム等を購入すると一人あたり1億くらいかかると考えると大規模で狩っても1匹だけじゃあ赤字になるということか。失敗したら死んでしまうかもしれないということを考えれば白金貨20枚も妥当な値段ということか。しかし、何匹も狩る事ができればお金に困ることもない、ゲームでよくある終盤の99999……のカンスト状態になることができるな。
俺がそんな試算を頭の中でしていると、冒険者2人を案内して2階にあがっていった店員さんが俺達の方に近づいてきた。
「ちょっと、アンナ」
俺を案内していた少女を手招きして、呼び寄せた。
「はい」という返事とともにそちらの方へと近づいていく。
小声で話をしているが、耳をこらせば何を話しているのかが丸聞こえであった。
「あなた、あんな子供を2階に連れてきちゃあ駄目じゃない」
「で、でもお客様が見たいっておっしゃてたので……」
「ここの商品の価格は知ってるでしょう。最低でも金貨1枚はするのよ。なかには変に扱えば機能が損なってしまうものもあるの。相手は子供なんだから、ちゃんと説明して、ここにあがって来ないようにしなきゃ駄目じゃじゃない」
「す、すいません………でも最近噂のドラゴンスレイヤーも子供のころから活躍していたって話を聞きましたし」
「馬鹿!! そのドラゴンスレイヤーは都市伝説よ。本当はいるかどうかも怪しい話なの。それにあの子が冒険者に見えるの? 見えないでしょ。冒険者じゃなきゃ、ここに置いてある商品はあまり意味のない商品なの。早く1階に帰してきなさい」
「わ、わかりました」
アンナは俺の方に戻ってくると申し訳なさそうに切り出した。
「本当に申し訳ありません。まだここのフロアは私には案内してはいけませんでしたので、下に戻ってもらってもいいですか?」
その理論だと他の人に案内を頼めば、このフロアを見て回れるということになるが、先ほどの二人の話し合いが聞こえていたので、そこをついてもなんだかんだで断られそうである。たぶん、俺を1階に戻す理由が即座には思いつかなかったためにそんな事を言っているのだろう。ここで素直に従って1階に戻ってしまってもいいが、そうすると大きくなるまで2度とここに足を踏み入れなくなってしまいそうである。せっかく面白そうな衣服があるのだから是非見てまわりたい。
俺は鞄に手を入れて、闇魔法【ブラックホール】を発動した。そして、金貨10枚ほど掴むと、あたかも鞄から取り出したようにそれらをアンナの前に出す。子供だから購入しないと思われているのなら、その認識を変えればいいのだ。
「お金ならあるし、いい商品があれば購入するけど」
「えっ!!………あっ………」
アンナは言葉に詰まって、何度も首を縦に振った。OKということだろう。俺は鞄に金貨をしまう。アンナは先ほどの店員が去っていった方とは逆の方へと歩いて案内を始めた。
「こちらは先ほどの姉妹の方で氷雪の魔女ブリーディアの作品になります。耐寒性能に非常にすぐれており、これを着ていればドラゴンの【アイスブレス】の中でも温度が下がらないというものになります。そして、こちらが……」
いろいろなステータス異常を未然に防ぐ性能が付与された衣服は聞いているだけでワクワクしてくるものがある。といっても、今のところ冒険者になるつもりはないので、買ってもよいと思われるようなものはない。今買ってもサイズが合わなくなったら、無駄になってしまうからな。俺はその後も店内を案内してもらう。
「それでこちらは、ナターシャという方が特殊な黒糸を使って編んだもので、見た目に反してかなりの重量となる代物になります。このシャツの重量はなんと25キロもするんです。軽そうに見えるけどすごく重くなってます」
「持ってみてもいいですか?」
「いいですよ」
「重っ!!」
片手でつまみ上げようとしたが、持ち上げることができない。
「これって防御力も高かったりするんですか?」
「いえ、こちらはただ重いだけですね。それなのに特殊な素材らしく結構なお値段がするんですよ。なのであまり人気がない商品になっています」
確かに商品が積みあがっているが、俺は説明を聞いてピーンとくるものがあった。これは面白い。
「ちなみに、これと同じ見た目の商品って1回にあるんですか?」
「そうですね。見た目は黒いシャツなので、よく似たものはありますよ」
俺は同じ人の作品である靴やリストバンドについてもいろいろ質問する。その時またさっきの店員が声をかけてくる。
「ちょっとあなた」
「は、はい、先輩」
「何でまだ案内しているの? 駄目じゃない。僕、その商品は金貨3枚もするのよ。汚れたりしたら買い取ってもらう事になってしまうから、置いて下に行きましょうね」
俺の手に持っているリストバンドを取り上げようとする。
「あっ、これ購入します。あとこの靴とシャツと、あとさっき言ってた似ているもので下の階にあるものもこ購入します」
「えっ!!」
「あっ、ありがとうございます」
取り上げようとした店員は驚いた顔をして、アンナはお辞儀した
「僕、これは金貨3枚で、他のも合わせると、金貨20枚はするのよ。銀貨じゃあないわよ」
「大丈夫ですよ」
俺は鞄の中から20枚の金貨を取り出す。
「えっ!!」
「おいおい、なんでこんなガキがこんな大金を持ち歩いてるんだ?」
店員の近くにいた冒険者の一人が声をあげた。
「待て待て。そう凄むな」
もう一人の冒険者がそれを止める。
「いや、子供一人っぽいし。こんな大金を持って出歩いているなんて危なくないか?」
「まあな。しかし、どこぞのお偉い貴族様なのかもしれないな。君は一体何者か聞いてもいいかい?」
すごく興味を持たれている様子であるが、俺はお忍びでここに来ているのだ。本当のことを言うわけにはいかない。
「グリフィスです。はい」
俺は咄嗟に嘘をついた………
応援ありがとうございます!
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