隷属の証

Hypnos

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1年1学期

入学式(3/18)

桜が咲き乱れる春の日、涼宮楓は高校の入学式へ向かっていた。長い間肩身が狭いと感じていた叔父の家庭から解放され、燦々と輝く太陽に照らされながら久方ぶりの軽やかな気持ちになっていた。

「ふう、これからは一人で頑張っていかないとな」

楓は小さな呟きをもらし、周りの入学生たちをチラリと見渡す。中学二年の時に両親が事故で亡くなって以来、ずっと叔父の家庭で世話になっていた。年が十そこそこしか離れていない叔父を幼少期から優しい兄のように慕ってきたが、一年前に結婚したばかりの新婚家庭に自分だけが馴染めなかった。叔父の結婚相手は優しくて世話焼きで、楓の面倒もよろこんでみていたけど、楓は自分が二人の邪魔であると感じずにはいられなかった。そのうち、子供もできるだろうし、自分の独り立ちの準備も兼ねて、郊外の全寮制の男子校に入学する事にしたのがつい数ヶ月前のはなし。かなりの進学校で、主に欧米の名門大学への留学を目的とした学生が多く、すべての授業が英語で執り行われる上に、学生の進路やレベルに合わせたカリキュラムが提供される点が決め手だった。そんなことを思い返していると、トンっと、右肩を押されて振り向く。

「おはよう!お前も新入生だよな?俺は樋口匠、これからよろしく!」

振り返った先には爽やかな笑顔をした、明るそうなやつだった。濃い茶髪が微風に揺れ、クリっとした目に少しかかる。すっと通った鼻筋に血色の良さそうな唇に、楓は同性なのに思わず少しドキドキした。

「おはよう。俺は涼宮楓、これからよろしくね」
「楓ちゃんはもうルームメート決まったか?実は早めに面子を揃えてワシントンハイツを選びたいんだよな」
「ワシントンハイツというと、あの4LDKみたいなマンションのやつか」
「そうそう、つい数ヶ月前にできた新築だぜ。まあ、早い者勝ちになるだろうから、早くメンバーを探さないとだけど。確か最低三人で申請できたはず」
「いいね、じゃあ俺も入れてよ」

無邪気に答える楓を見る匠の瞳に仄かな欲望の光が灯ったことには、この時の楓は知る由もなかった。

「今日の入学式はサボるだろうけど、腐れ縁の陽介も一緒でいいか?」
「もちろん!これで申請できるね。新築のマンションか~楽しみだな」

可愛く微笑む楓に欲が湧き上がることに気付いた匠は、どうにかその欲を理性で押し留める。これからはいくらでも時間があるのだと思うと、つい口角が上がってしまう。

その後も二人は雑談を交わしながら会場に向かい、特に何も起きないまま入学式は幕を閉じた。

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