隷属の証

Hypnos

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1年1学期

授業日2日目

陽介に優しく頭を撫でられて目を開けた楓は、陽介の手を目に入れた瞬間震え上がる。昨日殴られて内出血を起こしている箇所がじわじわ痛み、振るわれた暴力を物語っていた。

「っ!?」

反射的に後ずさろうとすると、背後から陽介に抱きしめられているようで、より陽介と密着してしまう。

「楓おはよう。今日も可愛いよ。昨日は殴ってごめん、我慢できなくてつい手を出しちゃった」
「やだ、離してよ!」
「悪かったって楓。気が済むまで俺を殴っていいから、逃げないでくれ」

陽介は力強く楓を抱くと、首元に顔を押し付ける。泣いているのか、楓の肩が少し濡れる。急に殊勝になる陽介の豹変ぶりが理解できず、楓は戸惑いながら腕の中で大人しくしていた。

「二人とも起きたか。いい機会だからちゃんと話そうぜ。朝食はできてるから準備してこいよ」

部屋に入ってきた匠はそう告げると去り、楓と陽介は身支度してからダイニングへ向かう。

「楓ちゃん、体は大丈夫?陽介のやつ力強いし加減しないからさ。傷見せて」
「っ!」
「結構派手に鬱血を起こして腫れているみたいだ。問題なく治るはずだけど、痛いだろうから湿布を包帯で巻いておくね」
「…本当にごめん、楓」

手際よく匠に手当てされた後、三人は静かに食事を始める。

「楓ちゃん、昨日何が起こったか話してくれない?」
「…授業で樹って子と会って、良さそうな人だったから寮に遊びに行こうとした。でも陽介に連れ帰られて、抵抗したら殴られた」
「そっかー。樹君とは初対面だよね。寮に行く時は陽介も連れて行くつもりだった?」
「陽介はなんか機嫌が悪そうだったし、樹のこともあんまり気に入らなかったみたいだから、樹のとこには一人で行こうと思ってたんだけど」
「それは危ないし心配だから絶対ダメだよ。よく知らない人と密室に籠ると何が起きるか、楓ちゃんはもう体で覚えてるでしょ?」
「!そんなことない!普通の人はこんなことしない!」
「でも初対面の人だとなんでもあり得るよね?だから今後もし誰かのとこに行く時とかは絶対に俺たちに声をかけて。友達を作るのはいいと思うし、遊んでもいいけどね」
「…うん」

束縛されて少し嫌な顔を楓はするが、友達すら作らせてもらえない状態よりはマシだろうと条件を飲み込む。

「はいはい、じゃあキスでもして仲直りして。辛気臭いの無理なんだよね~」

泣いて目元が少し腫れていた陽介は楓に顔を近づけると、少し震えながらチュッと軽いキスをする。理不尽な暴力を振るわれたのは自分なのに、なぜか罪悪感が湧いた楓は大人しく受け入れる。

「俺は今日二コマ入ってて、二人とは別行動になる。陽介は確か今日も楓とスケジュールが被ってたよな?」
「うん、四時から七時まで生物が入ってる」
「じゃあ楓のメンタルサポートは頼んだ。講師のところに寄ってくから先に出るわ。じゃあまた夜にね楓ちゃん」

二人で取り残されて気まずい楓はトイレに逃げる。排泄を済ませると、体が自分で風呂場に向かい、浣腸をする。楓は肉体も学習能力が高いようだ。風呂場から出ると陽介が待ち構えていた。

「嬉しいよ楓。今日も自分で準備してくれるなんて。早く行こう」

はにかみながら陽介は楓の手を引いて部屋に向かい、いつものようにアナルプラグを埋め込む。決して小さいものではないのだが、連日拡張されてきた楓の後孔は確かな柔軟性で難なく受け入れる。

「昼まであのドラマ見よう、ほら楓が先週の月曜日に話してた」
「…うん」

サラッと話しただけの自分の情報が覚えられていて楓は内心びっくりする。ソファに座るなり陽介が背後から腕を腰に回してくる。

「なんでいつもこの姿勢?」
「…ダメ?」
「…」

捨て犬のような目で見つめられて楓はたじろぐ。口元まで上りかかった拒否の言葉がなぜか霧散する。

スンスン、スースー、ハー

テレビを見ていた楓は陽介に強く抱きしめられながら長いこと匂いを嗅がれる。全身から伝わってくる陽介の体温が楓には心地よかった。いつのまにか興奮していた陽介の雄が背中に当たるが、陽介が何もしてこないので楓は安堵する。

「そろそろ昼だね。楓は何食べたい?」
「…パスタがいい」
「じゃあ出前だね。ゴミも溜まってきたし、ちょっと捨ててくる」

テキパキと注文を済ませた陽介はゴミ捨てに行く。

(!!!ついに機会が巡ってきた。匠は確かパソコンを持っていかなかった…早く試さないと、シュートまでそんなに距離ないし)

匠の部屋にダッシュして、デスクの上に置かれたパソコンに手を伸ばす。上に載っているペンをどけてパスワードを入力する。

(確か098923…妙にシンプルなパスワードだな?あっ!いけた!同期中デバイスを確認して…このパソコンと普段使われている携帯だけ!貞操具の鍵はナイトスタンドに入ってるはずだから…光が見えてきた)

目標を達成した楓はパソコンを閉じて素知らぬ顔でソファに戻る。一歩遅く戻ってきた陽介は異変に気づかず、手を洗うとまた楓を抱き寄せる。しばらくすると注文したランチが届き、二人は静かに食べ始める。楓は解放への道順を思索し、陽介はその背後に置かれたドッグフードの袋を注視していた。

食後の楓はリビングで微睡むと、陽介がまた抱きついてくるのを感じる。

(こいつ本当に犬っぽいなー)

朦朧とした意識で手を伸ばして顔をスリスリ撫でてやり、目の前が暗転する。お預けを食らった陽介は苦しそうにモゾモゾして楓にキスを落とした。

「楓、起きて。もう行かないと」
「うんー」

揺らされ起きた楓は陽介に肩を抱かれながら教室へ向かう。新しい建物の中にあった教室は立派なもので、Herman Millerのオフィスチェアが良い座り心地だ。同じ授業をとっている人が思いの外多く、大きめの教室を八割ほど埋める。五十人程度だろうか。気取った細身の教師が入るなり部屋は一瞬で静まる。

「Welcome to my class, fellow humans. Let’s make our time together fruitful and mentally-stimulating. Thought it would be a disaster to teach this large of a class but good thing you all are better mannered than I expected. You may call me Kevin, and we’ll start with structure and functions of cell organelles」

自己紹介も碌にせずにケビンと名乗った講師は授業を始め、その異常なペースに生徒達は集中を研ぎ澄ます。

「…so the mitochondria is basically the power house of cells by creating ATP, which stands for adenosine triphosphate…」
「…the smooth Golgi body mainly processes proteins and lipid molecules, most of which are intended to be exported from the cell…」
「…simply put, lysosome is just the cleaner of your cell with digestive enzyme inside…
「…and that is all for today. You are dismissed」

授業を終えた講師が教室を後にすると生徒達が賑やかさを取り戻す。

「結構面白い授業だったな」
「ペースが少し早かったけどね」

話していた陽介と楓に二人組が近づいてくる。

「よっ!授業どうだった?」
「講師の説明が上手くて面白かったよ」
「だよなー。俺は森田圭佑、んでこっちが虎之助だ」
「…陽介と楓だ」
「これからよろしくな!」

挨拶した陽介に楓は驚愕し、会話に参加できなかった。

「チーム作って課題やれって話だから組まないか」
「分かった」
「じゃあ連絡先交換してっと。夕食でも一緒に食べたいとこだけど、この後まだ授業があるんだよなー。夜7時から10時の授業とか絶対爆睡するやつがいるのに。んじゃ先に行くわ」

嵐のように圭佑と虎之助と名乗った二人は去り、処理落ちしている楓は陽介に肩を抱かれて家に帰った。先に家に着いた匠は部屋に入るなり妙な違和感を感じる。

(んー?何かが動かされているような。陽介か?パソコンの上のペンがどかされてる…これは楓だな。パソコンの上にペンを置く癖は陽介なら知っているはずだからな。ふふっ可愛い楓、あえて覚えやすいパスワードを見える位置で入力したのに気づいてないのかな。パソコンと携帯のパスワードを同じにする間抜けなんていないだろうに。てか陽介の携帯にも一枚洒落にならない写真があるはずだけど、媚薬で覚えてないか。お仕置きが楽しみだな)

「二人ともおかえり」
「ただいま」
「夕食できてるから食べよう」

三人はハンバーグ定食のような食事を口に入れる。

「おいしい…」
「拘った甲斐があったよ!和牛ステーキを挽肉にしたんだよね~」
「…」

楓は舌鼓を打ちながらも匠の非合理的な行動に閉口する。あっという間に平らげ、リビングで三人は寛ぐ。

「楓ちゃん明日は英語とCSだよね。俺とは英語が同じクラスだ。陽介は一つも被らないな。てか陽介明日授業ないよね、いーな」
「代わりにお前は明日一コマだけだろ。楓、午後のCSが終わったらそのまま家に真っ直ぐ帰ってこいよ。寄り道したら今後は毎日授業まで送迎するからな」
「分かったよもう」

彼氏面をする陽介に不快感を感じつつも楓は我慢する。

(後少しだ。匠が携帯とパソコンを残して二人とも注意していない機会がくれば!)

課題に取り組むといつのまにか夜が更けていき、就寝準備が済んでいる楓を陽介は抱えてベッドに連れて行く。

「自分で歩ける!」
「暴れると危ないって」

嫌がる楓をベッドに乗せて電気を切る。いつものように陽介は楓に体を寄せて密着する。

「抱き枕じゃないんだけど」
「それ以上だよ。ちょうど良いサイズで温くていい匂いで、何より可愛い」
「…当たってる…」
「ごめん、今日は我慢するつもりだったんだけど、楓が可愛すぎて無理」
「はぁー。俺は貞操具なんてつけられたままなのに」
「可愛いよ楓。ちんこを扱いてザーメンを飛ばすなんて楓には似合ってない」

性欲の強い陽介に強要される前に楓は自分から手を差し伸べる。大きな怒張を両手で扱いて、先走りで濡れ始めた巨大な亀頭を舌でペロペロ舐める。長大な逸物を根本から先端まで口で濡らして温め、口に入れる。少しずつ喉奥に迎え入れながら舌で裏筋を刺激すると、ビュルルっと喉に射精される。不本意ながらも楓は粘る白濁を飲み干した。

「っん!気持ちよかったよ、ありがとう楓。週末は頑張って拡張しようね。たくさん抱いて気持ちよくしてあげるから」
「…」

(木曜日は陽介は授業でいないし匠は買い物に行くだろう…であれば木曜日の午後がチャンスだな)

嬉しそうな楓をさらに嬉しそうな陽介が抱きしめる。別の部屋では匠がほくそ笑みながら何かを注文していた。
三者三様の思惑が張りめぐされ、夜は更けていく。
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