「絶望の川を越えて」

第6章：絆の形成

第6章：絆の形成
サバイバルの日々が続く中、菜月と悠斗は、どんどんお互いに依存するようになっていた。最初は互いに無関心だった二人も、今ではお互いの存在が不可欠になっていた。生活の中で共有する時間が増え、会話も自然と増えていく。
ある日、菜月が不意に質問した。「悠斗、何か好きな食べ物はある？」
悠斗は少し考えた後、静かに答えた。「好きなもの…か。昔は、母の作った煮物が好きだった。でも、今は…そういうことを考える余裕はないな。」
菜月はその言葉に、どこか寂しさを感じた。悠斗にはまだ癒されていない痛みがあるのだろう。菜月もまた、自分の過去を語ることはなかった。ただ、この過酷な状況の中で、お互いに支え合い、心を通わせることができるだけで十分だった。
その後、二人はさらに協力して生活を続けていく。魚を捕り、野草を摘み、火を焚き続ける。無駄にエネルギーを使わないよう、効率よく生きる方法を見つけるたびに、二人の絆は強くなっていった。
菜月は、悠斗と一緒にいることで、自分もまた強くなっていることを実感する。二人が過酷な状況を乗り越えて生き延びるためには、信頼し合い、協力し合わなければならない。そのことを、二人は心から理解していた。