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第1章:転校生の彼女は、春の匂いがした
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第1章:転校生の彼女は、春の匂いがした
桜が風に舞っていた。高校2年の初日、篠原 陽翔はぼんやりと教室の窓を見つめていた。
そのとき、教室のドアが静かに開く。
「今日から皆さんと同じクラスになります、高坂 澪です。よろしくお願いします」
その声に振り向いた瞬間、陽翔は息をのんだ。
澪の笑顔は春の光に溶けるように柔らかくて、けれど、どこか寂しげだった。
担任の先生が読み上げた席順。澪の席は、陽翔の隣だった。
「ここ、春の匂いがするね」
席に着くなり、澪がそう呟いた。
唐突な言葉に戸惑いながらも、陽翔は「そうかもね」と返す。
ふと目をやると、澪の手首に小さな注射痕があった。
陽翔は何も聞かなかった。ただ、その手が少し震えていたことだけを覚えている。
「篠原くん、よろしくね」
「うん。こっちこそ、よろしく」
それだけの会話なのに、不思議と胸がざわついた。
まるで、彼女と過ごす春が、ただの春じゃないと告げられたような気がして——。
桜が風に舞っていた。高校2年の初日、篠原 陽翔はぼんやりと教室の窓を見つめていた。
そのとき、教室のドアが静かに開く。
「今日から皆さんと同じクラスになります、高坂 澪です。よろしくお願いします」
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澪の笑顔は春の光に溶けるように柔らかくて、けれど、どこか寂しげだった。
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「ここ、春の匂いがするね」
席に着くなり、澪がそう呟いた。
唐突な言葉に戸惑いながらも、陽翔は「そうかもね」と返す。
ふと目をやると、澪の手首に小さな注射痕があった。
陽翔は何も聞かなかった。ただ、その手が少し震えていたことだけを覚えている。
「篠原くん、よろしくね」
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