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第2章:時間がない人みたいだった
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第2章:時間がない人みたいだった
高坂澪と話すのは、思っていたよりも簡単だった。
昼休み、机をくっつけて一緒に弁当を食べた日。
「篠原くんは、好きな季節ある?」と澪は聞いてきた。
「うーん……秋かな。過ごしやすいし」
「私は春。……でも、早すぎてちょっと怖い」
そう言った彼女の目が、ほんの一瞬だけ遠くを見ていた。
澪は明るくて、誰にでも丁寧で、でも“いつも急いでいるように”見えた。
授業中にノートを取る手も早くて、体育は見学ばかりなのに、いつも笑っていた。
目立たないけれど、ふとした瞬間に心をつかまれる。
帰り道、校門のところで風が吹いた。澪の髪がふわっと揺れる。
「この道、桜がずっと続いててきれいだね。……来年も、見れるかな」
「え?」
「ううん、なんでもない」
そう言って笑った顔が、どこか“あきらめ”みたいな色をしていた。
言葉のひとつひとつに、何かを隠している。
でもそれに気づくたび、僕は見ないふりをしてしまう。
まるで、見てしまったら“終わり”が始まってしまう気がしたから。
高坂澪と話すのは、思っていたよりも簡単だった。
昼休み、机をくっつけて一緒に弁当を食べた日。
「篠原くんは、好きな季節ある?」と澪は聞いてきた。
「うーん……秋かな。過ごしやすいし」
「私は春。……でも、早すぎてちょっと怖い」
そう言った彼女の目が、ほんの一瞬だけ遠くを見ていた。
澪は明るくて、誰にでも丁寧で、でも“いつも急いでいるように”見えた。
授業中にノートを取る手も早くて、体育は見学ばかりなのに、いつも笑っていた。
目立たないけれど、ふとした瞬間に心をつかまれる。
帰り道、校門のところで風が吹いた。澪の髪がふわっと揺れる。
「この道、桜がずっと続いててきれいだね。……来年も、見れるかな」
「え?」
「ううん、なんでもない」
そう言って笑った顔が、どこか“あきらめ”みたいな色をしていた。
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