君に咲くはずだった春

夕暮れ狼

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第5章:5年後の再会

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第5章:5年後の再会
それから5年の月日が流れた。
僕は大学に進学し、忙しい毎日を送っていた。
澪のことは、すっかり忘れたわけではないけれど、どこかで無理に忘れようとしていたのかもしれない。
ある日、病院の待合室で、目の前の扉が開いた。
「すみません、こちらの椅子、空いてますか?」
振り向くと、そこに立っていたのは——澪だった。
思わず目を見開く。
澪の顔には、あの頃の面影が残っている。だけど、どこかが違った。
目が少しぼんやりしていて、まるで僕のことを覚えていないような、そんな表情をしていた。
「……澪?」
「えっと、すみません、どちら様ですか?」
その言葉に、胸がぎゅっと締め付けられた。
彼女は、僕を覚えていなかった。
「ごめんなさい、変なこと聞いて」
僕がしどろもどろになっていると、澪は小さく首をかしげた。
「でも、なんだかあなたの声、すごく懐かしい気がするんです」
その瞬間、何かがこみ上げてきた。
あの頃の澪、そのままの澪が目の前にいるような気がして。
でも、彼女は覚えていない。
僕が彼女の手を握りしめたあの日、言葉を交わしたあの日、すべて忘れられてしまった。
それでも、今、僕は澪をもう一度好きになりたくなっていた。
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