「守りたい、君のすべてを」

第10章：裏切りの影

第10章：裏切りの影
春の陽気も束の間、氷川玲奈の周囲に再び暗い影が忍び寄っていた。
社内での情報漏洩。
そして、彼女の警護チーム内部にも不穏な動きがあった。
ある日、京介が玲奈のもとに重要な報告を持ってきた。
「社内に内通者がいる可能性があります。情報が外部に漏れている」
玲奈の顔が険しくなる。
「まさか、私の身近に……」
「警護チームにも疑わしい人物がいます。監視を強化しました」
信頼していた人間の裏切り。
その事実が、玲奈の心に鋭い痛みを刺した。
「京介さん、どうすればいいの？」
京介は決然と答えた。
「私が必ず真相を突き止めます。あなたを守るためなら、誰も疑いません」
玲奈はその言葉に背中を押されるように、決意を新たにした。
だが、その裏には、京介の過去と深く結びつく“裏切り”の記憶があった。
誰もが信用できない中で、ふたりの絆だけが唯一の頼り。
しかし、その絆さえも、試される時が近づいていた——。