「守りたい、君のすべてを」

第9章：信頼の種

第9章：信頼の種
翌日、ホテルの外は柔らかな春の日差しに包まれていた。
玲奈は窓辺で資料に目を通しながらも、頭の中は昨夜の会話でいっぱいだった。
その時、京介が静かに部屋に入ってきた。
「今日、外出許可が出ました。必要な買い物に付き添います」
玲奈は驚きつつも、微笑んだ。
「ありがとう。久しぶりに外の空気が吸いたいわ」
外に出ると、街は人で賑わっていた。
京介は無言で周囲を警戒しながら、玲奈のすぐそばを歩く。
歩きながら、玲奈がぽつりと言った。
「最近、あなたの仕事ぶりがもっと気になってきた。どうしてそんなに冷静でいられるの？」
京介は少しだけ微笑み、答えた。
「それは……過去に失ったものを取り戻すためです。守るべき人を守り続けるために」
玲奈はその言葉に胸を打たれた。
「私も、父の死の真相を知りたい。あなたと一緒なら、きっと乗り越えられる気がする」
京介はふと足を止め、玲奈の目を見つめる。
「その言葉を聞けて、嬉しいです」
二人の間に流れる空気が、以前よりもずっと柔らかくなっていた。
共に危険を乗り越え、信頼の種が静かに芽吹き始めていた。
ふたりの歩みはまだ始まったばかり。
しかし、確かな絆が彼らの背中を押していた。