月夜の狼と人の心

夕暮れ狼

文字の大きさ
3 / 7

第三章: 試練の始まり

しおりを挟む
第三章: 試練の始まり
アキラとリナは、狼の父が告げた「試練」を受けることに決めた。最初はその意味が分からなかったが、日が経つにつれて次第に明らかになっていった。試練は、二人の心と絆を試すためのものであり、ただの肉体的な試練ではなく、精神的、感情的な力が必要だということが分かった。
ある晩、再び満月が空に輝く頃、リナはアキラを森の入り口まで連れて行った。
「今夜がその時よ。」リナは静かに言った。「あの狼たちが見守る中で、私たちの試練が始まる。」
アキラは頷いた。「覚悟はできてる。何が待ち受けていようと、君を守るから。」
リナは少しだけ苦しげに微笑んだ。「でも、もしあなたが試練に耐えられなかったら、私もあなたと一緒にいられなくなる。あなたを傷つけたくないから。」
その言葉に、アキラは強く彼女を見つめた。「君を守るために、俺はこの試練を受けるんだ。どんなことがあっても、君を傷つけることはない。」
リナは深く息を吸い、頷いた。「それなら、行こう。」
二人は手を取り合い、森の中へ進んで行った。月光が木々の間を通り抜け、静かな夜の空気が二人を包み込む。しばらく歩いた後、森の中の広場にたどり着くと、そこには一匹、また一匹と狼たちが姿を現した。彼らは静かに二人を見守りながら、じっと動かない。
その時、大きな声でリナの父が告げた。
「アキラ、リナ、お前たちの試練は、愛と犠牲の選択だ。この月の下で、お前たちの心が試される。もしも愛が真実であれば、二人は生き抜くことができる。しかし、もし一方でもその愛が歪んだものであれば、どちらかが命を落とすことになる。」
アキラはその言葉に震えを感じた。試練の内容があまりにも過酷だったからだ。しかし、リナの手を強く握りしめ、彼女に視線を送る。リナは目を伏せ、ゆっくりと言った。
「私も覚悟を決めた。もしあなたが試練を乗り越えられなければ、私はあなたを守ることができない。でも…私もあなたを守りたい。」
「試練が終わるまで、二人は離れてはいけない。」狼の父の声が続く。「心が繋がっていれば、どんな困難も乗り越えられる。しかし、その絆が試される時が来る。」
その瞬間、狼たちが一斉に動き出した。最初に近づいてきたのは、リナの父だった。彼はアキラの前に立ち、その目でじっと彼を見つめる。
「お前が本当にリナを守る覚悟があるのか、試してやる。」リナの父は低い声で言った。
「どうすればいいんだ?」アキラは問いかけた。
リナの父は狼の姿に変わり、月光を浴びてその姿が一層神々しく輝いた。「お前の力を試す。だが、途中で引き返すことは許さない。リナを背負って、試練の道を進んで来い。途中、心が折れるような試練が待っているだろう。その時、二人の絆が試される。」
アキラはその言葉を受けて、しっかりとリナを抱きしめる。「どんな試練が待っていようと、俺たちは一緒だ。」
そして、二人は試練の道を歩み始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

処理中です...